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今まで、宇宙についての話題を中心に展開してきましたが、今後は科学全般及び精神世界や歴史についても書き込んでいきます。

ひもに隠れた「カラビ=ヤウ多様体」とは?

2013年02月22日 | 素粒子

 数学者の考え出した、「美しい数学的な解」=「カラビ=ヤウ多様体」は現代物理学者にとって、なぜ必要であったのだろうか。
今回は、この「カラビ=ヤウ多様体」が物理学者にとって便利な数学的道具であったということを書きます。
内容が難解なため、岩波書店より出版されている、「見えざる宇宙のかたち(ひも理論に秘められた次元の幾何学)」より、抜粋します。
今回だけでの記述では、到底この書籍の概要を説明することが不可能なので、数回に分けて記述します。

 カラビ=ヤウ多様体は、制限のきついSU(n)ホロノミー群、すなわち複素n次元の特殊ユニタリ群に属する。
また、最先端物理学のひも理論(超ひも理論)においては一番興味がもたれている。
そして、このカラビ=ヤウ多様体は、三つの複素次元をもっており、SU(3)ホロノミー群に属する。
カラビ=ヤウ多様体は球面よりはるかに複雑で、ベクトルを同じ方向へ向けながら曲面上を進んでいくところは同じだが、SU(3)のホロノミーは先ほどのベクトル回転の例よりはるかに込み入っている。
 
 さらに、カラビ=ヤウ多様体は(球面と違い)大域的対称性をもっていないため、多様体を回転させても変化しないような軸は存在しない。
しかし前に述べたように、もっと限定された種類の対称性はもっており、それはホロノミーと超対称性の両方に関係している。
超対称性をもつ多様体は、「共形定量スピノル」と呼ばれるものをもっていなければならない。
スピノルとは、説明するのは難しいが、接ベクトルに似ている。
ケーラー多様体上では、任意の閉ループに沿った平行移動について不変であるスピノルが一つ存在する。
カラビ=ヤウ多様体、およびそれが属するSU(3)群では、多様体上の任意の閉ループにおける平行移動について不変であるスピノルがもう一つ存在する。

 それらのスピノルが存在することにより、カラビ=ヤウ多様体の超対称性が保証される。
そこでストロミンガーとカンデラスは、その適切な種類の超対称性が必要であるという理由により、はじめからSU(3)ホロノミーに着目した。
このSU(3)というホロノミー群は、消滅する第一チヤーン類とゼロのリッチ曲率をもつコンパクトなケーラー多様体に関連づけられる。
要するに、SU(3)ホロノミーはカラビ=ヤウ多様体を意味する。

言い換えると、アインシュタイン方程式と超対称性の方程式を満たしたいなら - そして余剰次元を隠したまま観測可能な世界の超対称性を保ちたいなら - カラビ=ヤウ多様体が唯一の解である。

 物理学者の、ストロミンガーは次のように説明している。
「当時はあまり数学を知らなかったが、多様体を特徴づけるホロノミー群を通じてカラビ=ヤウ多様体との関係性を築いた。図書館でヤウの論文を見つけ、あまり理解できなかったけれど、わずかに理解した内容から、カラビ=ヤウ多様体はまさに望みどおりのものだとわかった」。
そうして、八年間待った末にようやく、物理学がカラビ=ヤウ多様体を発見したことを知った。

 プリンストン大学の物理学者フアン・マルダセナは
「超対称性は、計算を簡単にしてくれるだけでなく、計算を可能にしてくれる。なぜか? 坂をふらついて転がるフットボールの複雑な運動よりも、転がり落ちる球の運動の方が記述しやすいからだ」。
どんな種類の問題でも、対称性が存在すると解くのが簡単になる。

超対称性も、内部に閉じ込められた六つの次元がとりうる幾何学的形状に制約条件を課すことで、変数の数を減らし、解きたい問題の大半を単純化してくれる。
そうした単純化への要求が「あなたにカラビ=ヤウ多様体を与えるのだ」。
もちろん、計算を簡単にしてくれるというだけの理由で、この宇宙に超対称性が存在すると主張することはできない。
超対称性理論の利点の一つは、一般相対論の基底状態である真空を自動的に安定化し、私たちの宇宙がどんどん低エネルギーの深みに落ちていくのを防いでくれることだ。

 しかし、ほとんどの物理学者が超対称性に興味をもっている理由は他にあり、それがこの概念のそもそもの由来である。
物理学者にとってその考え方の最も重要な特徴は、「フェルミオン」と呼ばれる、クォークや電子など物質を構成する素粒子と、「ボゾン」と呼ばれる、光子やグルーオンなど力を媒介する粒子とを結びつける対称性にある。
超対称性は、力と物質、そしてこれら二種類の粒子のあいだに親戚関係、つまりある種の数学的等価性を築く。
超対称性によれば、フェルミオンごとに「スーパーパートナー」と呼ばれるボゾンの相棒が存在し、ボゾンごとにもフェルミオンのスーパーパートナーが存在する。
それによってこの理論は、既知の相棒より重く、「スピン」が相棒と整数の半分だけ異なる新たな種類の粒子 - スクォーク、セレクトロン、フォティーノ、グルイーノといったおかしな名前で呼ばれている ー の存在を予測する。
それらのスーパーパートナーはまだ見つかっていないが、研究者はこの瞬間にも、世界最高エネルギーの粒子加速器のなかで探しつづけている。

 物理学者が「低エネルギー」と特徴づける、私たちが住んでいるこの世界は、明らかに超対称的ではない。
現在の考え方によれば、超対称性はもっと高エネルギーにおいて現れ、その領域では粒子とスーパーパートナーはまったく同じに見える。
しかし、あるエネルギースケール以下では超対称性が「破れ」、私たちが住んでいるのは、粒子とスーパーパートナーが質量などの性質において異なる、破れた超対称性の領域だ(破れた対称性は完全には消えず、隠されるにすぎない)。



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