仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

20101229 あはや遭難か?

2010-12-30 01:24:00 | 寫眞日記



あはや遭難か?
大袈裟かもしれないが、そんなことさへ思つた。


中山山頂からダイレクトに南に伸びてゐる尾根を下らうと思つて家を出た。
登るルートは、 22日に下つて來た尾根
1ヵ所イヤなところがあつたが、下りより登りのはうが安全だらう。

9時37分に家を出て、バス通り沿ひに坂道を登り、山に一番近いマンションの駐車場脇から山登りを開始したのが10時2分。
アプローチが25分といふことになる。
下りで危なかつた部分は、登りではさほどのこともなく、支尾根を經由して主稜線に出たのが10時18分。
高速道路のやうに整備された主稜線を辿つて、中山の山頂に着いたのが10時30分。
自宅から山頂まで53分で着いてしまつた。
やはり、このルートが一番速いやうだ。

頂上を10時37分に後にして、すぐに南の尾根に入る。
かなり明瞭な道になつてゐるので、これなら大丈夫だらう。
素直にこの道を下つて入れば問題はなかつたと思ふのだが・・・






頂上直下の寫眞。
右へ行くと主稜線傳ひに中山寺方面へ下る。
左へ行くと、登つて來た方向へ主稜線を辿る。
中央右奧が中山頂上からダイレクトに南に伸びてゐる尾根の方向。
この道を下る。




このやうに、かなりはつきりとした道がついてゐる。
このぶんなら、なんの不安もない。




5分ほど下つたところで、左手(東方向)にフェンスの切れ目を發見。
おそらく下から登つてくる道があり、登りついたところでフェンスが邪魔で切り取つたのだらう。
といふことは、ここを下る道がある筈だ。
家に下るには、出來るだけ東に出たはうが速い。
よし、ここを下つてみよう。
・・・さう考へたのが、失敗だつた。





最初のうちは、こんな感じでしつかりとした踏み跡がついてゐた。
ただし、踏み跡とは云つても人間の胸より上は灌木が覆ひ被さつてゐて、けもの道の可能性もある。
案の定、徐々に踏み跡は不明瞭になり、けものの糞が落ちてゐるやうになつた。





途中、何度かしやがみ込んで踏み跡を搜したのだが、やがて踏み跡は消えてしまつた。
歩きやすいところを選んで進んでいくと、澤の源流らしき地形に出てしまつた。
寫眞ではわかりづらいが、傾斜はかなり急で、しかも足元は腐つた落ち葉でずるずる滑る。





灌木につかまりながら少しづつ下つていつたのだが、だんだん不安が増してくる。
寫眞は下つて來たところを下から見上げたもの。
コケの生えた石が多かつたので、基本的にはこれらの石を足掛りにしたのだが、見た目はしつかりしてゐるやうに見えるが、浮き石が多い。
油斷してゐると足を捻りさうになる。
しつこいやうだが、傾斜はかなり急で、木に掴まつてゐないと滑り落ちさうな状態である。
このあたりで後悔し始めた。
フェンスの切れ目なんか無視して、あのまま尾根傳ひに下つておけば良かつた。
ここで足を捻つて歩けなくなつたらどうしよう。
家から1時間ほどのところで遭難なんてしたら、高校山岳部OBとしては死んでも死にきれない。
いままで山で死んだOBは、ジャヌーだつたり冬の知床だつたり瑞牆山の岩場からの墜落死だつたり、なるほどと思へる山だつた。
イヤだイヤだ、こんなところで遭難なんてしたくない!
澤沿ひに下ることのリスクを考へた。
瀧が現れる、堰堤が現れる、浮き石に足をとられて捻挫する・・・
基本に立ち歸らう。
澤を下るべからず。
もとの場所まで引き返さう。





澤に出る前の場所まで登り返した。
そこでもう一度けもの道を搜す。
なんとかそれらしいかすかな踏み跡を見つけて、尾根を下る。
しかし、それでも踏み跡はすぐになくなつた。
傾斜は澤傳ひと同じか、それ以上に急になつた。
ありがたいのは浮き石がなくなつたことだが、軟弱な滑りやすい足元は澤以上になつた。
灌木にぶら下がるやうにして、少しづつ下つて行くと、木々の隙間から下のはうに堰堤が見えて來た。
あと少しでこのイヤらしい斜面から解放される。
さう思つたら、少し餘裕が出たのか、足元にこんなキノコがあるのに氣づいた。
木につかまりながら、愼重にザックからカメラを取り出して寫眞を撮つた。
眞ん中の球形の部分は直徑2~3cmほどで、周りの星形の部分を含めると7~8cmほど。
後から調べたところ、どうやら ツチグリ といふキノコらしい。
子供の頃に圖鑑で見た記憶があるが、實物を見たのはこれが初めて。





こんなところを下つて來た。
左に寫つてゐる木の幹につかまりながら撮つた。
しつこいけれども、寫眞ではわからないが傾斜はとても急なのである。





フェンスが見えた。
やれやれ、やつと下りきつた。





フェンスまで下つて、上流を見たら、堰堤があつた。
この堰堤が先刻ちらりと見えた堰堤なのだらう。
あれからどれだけ時間がかかつたことか。
ちなみに、頂上を出たのが10時37分で、ここに着いたのが12時10分。
わづか標高差150mほどを下るのに、1時間半もかかつて下つて來たことになる。
登山道があれば20分もかからないだらうに・・・





50歳。
單獨行。
道のないルート。
澤。
「昔取つた杵柄」といふ言葉のマジック。
いまの自分の體力への過大評價・・・
中高年の遭難にありがちなパターンではないか!
家から往復3時間足らずといふこと、標高500m足らずの山だといふこと、天氣晴朗であるといふこと。
油斷する全ての條件が揃つてゐる。
ハッキリ云つて、私は里山を舐めきつてゐる。
しかし、けふのことで少し考へを改めよう。
里山といへども山は山。
足を挫いただけで遭難することだつてあるのだ。
道のないところを下る時は、澤に出るのはやめよう。
こんな基本的なことを忘れてゐるなんて、どうかしてゐる。

12時40分、いつものスーパーに到着。
ビールを買つた。
遭難するかもしれない状況を切拔けた自分へのご襃美に、ちよつと贅澤なビールを。
中山の頂上は畫面左手、街燈の右下に見えてゐるピーク。
今度は頂上からダイレクトに伸びてゐる尾根を下つてみよう。
でも、下まで踏み後がついてゐるかどうか・・・







<使用カメラ:Canon PowerShot G11>






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