誕生日に思ふ

日付が變はつて、すでにけふは誕生日。
風呂から上がつたばかりで、汗だくになりながら、これを書いてゐる。

三島由紀夫は４５歳で亡くなり、私の父は５３歳で亡くなつてゐる。
４５歳までは三島を里程標として生きて來た。
しかし、三島の年齡を越えてしまつてから、私は里程標を見失つてしまつた。

先日、父の命日に思つた。
いつの間にやら、あと數年で父の亡くなつた年齡になるといふことに、あらためて氣付いたのであつた。
自分の誕生日に、亡くなつた人の年齡を數へるといふのも變な話だ。
「死んだ子の歳を數へる」といふ諺はあるが、「死んだ父の歳を數へる」なんてことは聞いたことがない。
しかし、いまの私の執着はまさに父を越えること、それにひとへにかかつてゐる。
べつに竸ひ合ふわけではないが、父よりは長く生きて、父よりは何事かを成し遂げたいと思ふ。
思へば、男にとつての「父」とはさういふ存在なのかもしれない。

いま私は仕事もせずに日々を過ごしてゐる。
こんなことではいけないと思ひつつも、どうにもならない。
何かを論理的に考へ新たなことを構築するといふ營爲が不可能な状態。
人は何故、何のために生きてゐるのだらうと、無駄なことを考へることも多い。
さういふ時には、すぐに思考を停止することにしてゐる。

夜中は理性が眠り情念が覺醒するといふ。
そろそろ、つまらぬことを綴るのはやめて、睡眠藥を飮まう。
明日の朝、目覺めた時からが誕生日だ。
さう思ふことにしよう。