「発火点」 真保裕一
お薦め度:☆☆☆☆
2006年4月24日読了
12歳の夏に父親を殺された、杉本敦也が主人公。
彼は、被害者の家族が周圍から受ける、同情といふ名の優越感の裏返しに耐へられない。
女性とつきあつても、自意識過剩な被害者意識で女性とうまくつきあへない。
2人の女性とつきあふが、結局、2人とも傷つけて別れることになる。
しかし、その經驗が彼を大人へと成長させるきつかけとなつた。
父親は何故友人に殺されなくてはならなかつたのか?
その疑問が徐々に心の中で大きくなつてゆく。
そして、その謎を解き明かさうと、12歳の時に住んでゐた伊豆の海邊の町に出かけてゆく。
そこでは少年時代の友達が、昔と變はらぬ暖かい氣持ちで接してくれた。
父親を殺したのは、父親の少年時代の友人で、海で自殺しようとして意識をなくしてゐたところを、主人公に發見された。
主人公の母親は、彼を家においてやることを提案した。
赤の他人を家においてやることで、家庭の絆を強めたいと考へたのだらうと主人公は母の氣持ちを想像した。
父親のあらが見えてしまふ少年時代の主人公にとつて、父親の友人である彼はむしろ親しみを感じる存在だつた。
その彼が何故、父親を殺してしまつたのか・・・
この作品は、「俺」といふ一人稱により、主人公の視點で書かれてゐる。
讀んでゐて奇妙な感じを受けた。
それは、この物語の「いま」はいつたい「いつ」なのだらうかといふ疑問である。
12歳のときのことを「大過去」とすると、「中過去」や「小過去」に相當する出來事が書かれてゐるのだが、「いま」は書かれてゐない。
この讀んでゐる間に感じた違和感は、最後に解消することになる。
ただし、とつてつけたやうな印象があり、あまり效果的とは感じられなかつた。
男の子は多かれ少なかれ、心の中で父親を殺すものだ。
私など、何囘、父を心に殺したものか。
この作品では、さういつた、男の子ならではの父親への愛憎が見事に描かれてゐる。
父親が殺された謎そのものよりも、むしろ、父親といふ存在に對する少年の氣持ちこそが、この作品の生命ではなからうか。
2006年4月24日讀了
お薦め度:☆☆☆☆
2006年4月24日読了
12歳の夏に父親を殺された、杉本敦也が主人公。
彼は、被害者の家族が周圍から受ける、同情といふ名の優越感の裏返しに耐へられない。
女性とつきあつても、自意識過剩な被害者意識で女性とうまくつきあへない。
2人の女性とつきあふが、結局、2人とも傷つけて別れることになる。
しかし、その經驗が彼を大人へと成長させるきつかけとなつた。
父親は何故友人に殺されなくてはならなかつたのか?
その疑問が徐々に心の中で大きくなつてゆく。
そして、その謎を解き明かさうと、12歳の時に住んでゐた伊豆の海邊の町に出かけてゆく。
そこでは少年時代の友達が、昔と變はらぬ暖かい氣持ちで接してくれた。
父親を殺したのは、父親の少年時代の友人で、海で自殺しようとして意識をなくしてゐたところを、主人公に發見された。
主人公の母親は、彼を家においてやることを提案した。
赤の他人を家においてやることで、家庭の絆を強めたいと考へたのだらうと主人公は母の氣持ちを想像した。
父親のあらが見えてしまふ少年時代の主人公にとつて、父親の友人である彼はむしろ親しみを感じる存在だつた。
その彼が何故、父親を殺してしまつたのか・・・
この作品は、「俺」といふ一人稱により、主人公の視點で書かれてゐる。
讀んでゐて奇妙な感じを受けた。
それは、この物語の「いま」はいつたい「いつ」なのだらうかといふ疑問である。
12歳のときのことを「大過去」とすると、「中過去」や「小過去」に相當する出來事が書かれてゐるのだが、「いま」は書かれてゐない。
この讀んでゐる間に感じた違和感は、最後に解消することになる。
ただし、とつてつけたやうな印象があり、あまり效果的とは感じられなかつた。
男の子は多かれ少なかれ、心の中で父親を殺すものだ。
私など、何囘、父を心に殺したものか。
この作品では、さういつた、男の子ならではの父親への愛憎が見事に描かれてゐる。
父親が殺された謎そのものよりも、むしろ、父親といふ存在に對する少年の氣持ちこそが、この作品の生命ではなからうか。
2006年4月24日讀了
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本へのコメントもう~ん深い・・・。
僕ももっとがんばらなって思わされています。
また、お暇でしたらのぞきに来てやってください。
コメントありがたうございます。
そちらのブログで京都の香を味はつて來ました。
私も20數年前の大學生活を京都で送つてゐましたので、懷かしいです。
いまの季節は新歡コンパのシーズンですね!
大文字山で泥のやうに眠つてゐた昔を思ひだしました・・
「発火点」は真保作品の中ではちょっと異質で、心情描写を中心に話がすすんでいますね。
こちらのページに感想を書いているので、よければ見に来てくださいね。
真保裕一ファンサイト
コメントありがたうございます。
確かに真保裕一の作品の中では少し異質な感じですね。
私の場合、この作品の「父親殺し」のモチーフが心に響きました。
いまは「誘拐の果實」を讀んでゐるところです。
古くは(そんなに古くもないか)小役人シリーズとか、
読んでますー。
男の子は父親を乗り越えて大人になる。。。
っていいますが、
そういうものなのでしょうかー。
それともあえてわからないようにしているのでしょうか???