仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「第三の時効」 横山秀夫

2007-02-27 18:51:12 | 讀書録(ミステリ)
「第三の時効」 横山秀夫
お薦め度:☆☆☆☆+α /
2007年2月22日讀了


横山秀夫の小説としては、第6作となる。
ちなみに本書以前の小説は以下の通り。

第1作: 「陰の季節」 (1998年10月刊行)
第2作: 「動機」 (2000年10月刊行)
第3作: 「半落ち」 (2002年9月刊行)
第4作: 「顔 FACE」 (2002年10月刊行)
第5作: 「深追い」 (2002年12月刊行)

本書では、F縣警搜査第1課の強行犯係が描かれてゐる。
強行犯係は1班から3班に分かれてゐるのだが、それぞれの班長が一癖も二癖もあるつはもの揃ひ。
本書は連作短篇集で6篇が收録されてゐるが、作品毎に主役が異なつてゐる。
その主役たちの個性が強烈なだけに、それぞれの作品が樂しめるのだ。

「沈默のアリバイ」:第1班(朽木班)
法廷の場でいきなり無實を主張し始める容疑者。
なんとアリバイがあるといひだしたのだ。

「第三の時效」:第2班(楠見班)
時效間近の事件で、容疑者は海外にゐた期間があつた。
その期間を含めた「第二の時效」が成立した時、事件の眞相は明らかになつた。
しかし・・・。

「囚人のジレンマ」:搜査1課
第3班には退官間近の刑事・伴内がゐる。
いまの事件が最後の事件になるだらう。
搜査1課の3つの班はそれぞれにいがみ合つてゐて、お互ひに情報交換をするといふことがない。
その状態を搜査1課長の田畑はまるで砂漠のやうだと感じてゐた。
しかし、搜査1課には、水も緑もあつたのだ。

「密室の拔け穴」 :第3班(村瀬班)
第3班の班長・村瀬が腦梗塞で倒れ、東出が班長代理で事件を擔當した。
容疑者が暴力團の構成員である關係で、やむなく「暴對課」の協力を仰ぎ、張込みをしてゐたのだが、容疑者に密室ともいへるマンションから逃走されてしまふ。
何故そのやうな事態になつたのか、關係者を集めた會議が召集された。
その場に現はれた第3班の班長・村瀬は、謎のやうな言葉をつぶやく。
「ゆつくりやれや。時間はたつぷりあるんだからよ」

「ペルソナの微笑」:第1班(朽木班)
青酸カリを使つた殺人事件が發生。
13年前には同じやうに青酸カリによる殺人事件が發生してゐたが、その事件は未解決のままだつた。
13年前の事件と今囘の事件の關係は?

「モノクロームの反轉」:第1班(朽木班)&第3班(村瀬班)
事件の早期解決を期待して、犬猿の仲である朽木班と村瀬班を投入した田畑搜1課長だつたが、彼らはまるで協力しあはうとしない。
しかし、重要な事實に氣づいた朽木は・・・
この作品、TVドラマで見た記憶がある。


刑事といへども人間であり、事件搜査における泥臭い人間ドラマがある。
この作品では登場する刑事のひとりひとりにドラマがあり、はつきりとした個性がある。
さうしたドラマを、こちさらにウェットになることなく、硬質な文章で見事に描ききつてゐる。
それだけに、事件そのものもさることながら、刑事たちのキャラクタが記憶に殘る。
續篇が待ち遠しいかぎりだ。


第三の時効

集英社

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