『明治文学小説大全』 (全50篇)より
6月25日
『草枕』 夏目漱石
明治39年(1906年)9月
再読。確か中3の時に読んだと思ったのに、まったく思い出さないとは。もしかしたら初読?
冒頭の知情意に関する一節はあまりにも有名。それゆえに読んだつもりになっていたのかも。
漢字もかなも残念ながら現代表記。
言文一致体だけど漢語が多く、意味を読み解くのはかなり難しい。
中3どころか今のぼくにも一語ごとに調べないと無理。もちろん調べて読み進む気にはなれないので、シカトして読み進めた。
主人公は画工(絵描き)。
都会を離れて「非人情」を体現すべく、温泉宿で過ごす。
一番印象的だったのは、
華厳滝に身を投じた藤村操について、「美の一字のために、捨つべからざる命を捨てたるものと思ふ」としている。改めて調べたら、彼が華厳滝の樹木に「巖頭之感」を刻んだのは1903年、漱石がこの作品を発表したわずか3年前のことだった。
漱石は、「死そのものの壮烈をだに体し得ざるものが、いかにして藤村子の所作を嗤い得べき」と書いているが、ぼくはこの藤村子を三島由紀夫に置き換えてしまいたくなる。
6月28日
『坊つちやん』 夏目漱石
明治39年(1906年)4月
たぶん三読め。
小学6年の頃に初めて読んだ。大人の読む文庫本を買ったのは初めてだったと思う。そのあと高校に入って何かの拍子に読んだ気がする。
さて、40数年ぶりに読んで改めてわかったこと。
今年の3月からこれまで、明治20年の『浮雲』から始めて明治文学を通読して来たが、これは言文一致体の完成型、文学史上、画期的な作品だと思う。
一人称小説で、地の文がそのまま主人公の語りであるかのように書かれているために、煩わしい漢語表現もなく、かくも完全なる言文一致体となったのだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます