今回は上記論文の中で作物と牧草の放射能核種の挙動を解説します。
上記論文では1956年と1957年12か所の野菜のセシウム137とストロンチウム90を測定しています。
1955年からソ連の核実験が始まっています。
野菜でキャベツ、カブ、ダイコンを調べています。長期間栽培していた野菜は水洗いしても放射能は減少しません。古い葉のほうが多く残ります。
放射核種は植物の葉に沈着した後、葉面吸収があるようです。越冬展開した葉からは最大約乾物10g当たり125Bqのガンマー線が検出されています。
牧草のセシウム137とストロンチウム90も調べています。
調べたのは1963年、1964年、1966年です。
ラジノクローバーとイタリアンライグラスについて測定しています。場所はM町の新潟大学農場です。これは牧草の植物体乾重1Kg当たりのセシウム137とストロンチウム90を測定しています。
ラジノクローバーでは1963年がセシウム137で734Bq、ストロンチウム90で617Bq、1964年がセシウム137で347Bq、ストロンチウム90で604Bq,1966年でセシウム137で60Bq、ストロンチウム90で211Bqでした。
イタリアンライグラスは1965年のデータですが、乾重1Kg当たりでセシウム137が104Bq、ストロンチウム90で95Bqでした。
以上の事実はマメ科牧草で土壌を覆うラジノクローバーはセシウム137とストロンチウム90の保持量が多いこと、これは土壌からの吸収より、沈着による葉面吸収が大きいと推測いています。
イタリアンライグラスは1年間に5回刈り取りを行い、その平均値であること、マメ科と比べて沈着や吸収が低いことがわかります。
刈り取り時期別濃度を比較すると、降水量が少なく土壌の水分含量が小さい時期に牧草中のセシウム137とストロンチウム90が抑制されています。
マメ科牧草による土壌表面被覆が土壌への蓄積を防ぐ手段としてかなり有効です。