神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.146 公文書のこと

2024-04-21 03:53:54 | 新聞記事
   
    朴:まだ蕾

 朝日新聞(3月26日付)に「国民のための公文書」と題するインタビュー記事が掲載されました。インタビューの相手は元官房長官・首相の福田康夫氏です。

(1)まず、福田氏にミズを向けます。
 「官房長官・首相時代を通じて公文書管理法制定(2009年成立、11年施行)への道筋を付けました。」
 すると、語り始めました。
 「01年の小泉内閣発足時、新しいことを始めようじゃないか、と総理から呼びかけがあり、官房長官として公文書管理法の制定を提案したら、『それはいいんじゃないか』とそこから本格的に準備を始めました。」
 たしか「自民党をぶっこわす」とか言って支持を得て始まった内閣でした。それが、発足してから「新しいこと」を探すというのは奇妙です。
 実際、小泉内閣以降、安倍内閣を経て日本が平和国家から離脱する方向へ変えられ、財政構造もその方向へ向かいだしました。しかし、いまこの点は措きましょう。
  
(2)続いて、「なぜ公文書問題に取り組んだのですか。」と問われて、
 「国家として歴史の事実の記録をきちんと残していく。それは当然のことです。事実を知ることは民主主義の原点、民主国家の義務です。しかし、その基礎となる法律は日本になかった。」
と説明します。これは。とりあえず字面は良さそうです。
 さらに、アメリカの例を挙げて次のように言います。
 「・・・国家がどのような歴史を経て今の形になったのか。事実の積み重ねを具体的な生の記録を通じて知ることで歴史の事実を実感を持って理解してもらうことができる。それが国民の国家への信頼につながり、対外的な信用も生まれる。」
 おもしろいのはここです。
 「国家」とは何か、福田氏が考える国家がどういうものか。とりあえず。これは現在の日本の国家でしょう。福田氏は、公文書を通じて「国家・・・の今の形を・・・理解してもらう」、公文書が「国民の国家への信頼につなが」るといっています。 
 つまり、福田氏は、公文書は国家へ国民を寄らしるものだ、といっているわけです。この点、見出しの「国民のための公文書」とありましたが、これはそういう意味での「国民のための」のようですから、それでよいのかどうか。

(3)さらに、「公文書を見ればその国がわかるということですか。」と重ねて質問されて、
 「・・・歴史の記録の一つ一つがお城の石垣のように積み上がって国家を形作っている。その石垣が公文書です。公文書を通じてその国がどういものかが読み取れる。」
 この意味はどういうことでしょうか。

(4)国家は公権力体です。公的権力を持って、さらにその裏付けとなる税制などの財政収入を使って行政を行います。その過程は、ドイツ財政学以来の伝統では、官僚がそつなくそれを処理する技術として発展し、それが日本にも導入されて駆使されてきたわけです。
 それが、戦後の日本では主権者である国民の立場でなされることが憲法でも謳われるようになったわけです。

(5)福田氏は、国家を言いますが、その国家の役割は、戦前は天皇を主権者とする国家でしたが、戦後は国民を主権者とする国家へと憲法上も変わりましたから、それに伴って変わったはずです。
 そうならば、「公文書を残す」という意味も、戦前は主権者である天皇に説明をし、責任の所在を明らかにするところにあったはずであり、戦後は主権者である国民の立場に立って行政がなされたかの検証に供すべく関係文書は残す責任があるということになるはずです。

   
    夕日:明日また会おう

 福田氏へのインタビューからわかったことは、「公文書」が国家に国民を寄らしむるためのものとの発想から始まったもので、主権者である国民の保護や権利の立場からのものなっていないようだということです。
 この国の行政も財政もまだ国民の立場からの財政になっていません。だから、隠蔽とかごまかすということが起こるのです。
 公文書は行政・財政の足跡ですから、政治姿勢をきちんとすることと不可分です。それが言われるのでないとツギハギの公文書論になってしまいます。

   
   来客:

 昨日の写真の3枚のうち、1枚目は長野県伊那の清流荘前、2枚目はわが家にあった朴尾、、3枚目は山梨学院大学からの夕景です。

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