(1)昨日、新聞の切り抜きを整理をしていて気づいた中から二つ紹介します。
「2024衆院選 問われるのはなにか」(『朝日新聞 10月10日付)という長谷部恭男(早大教授:憲法)と杉田敦(法大教授:政治理論)の対談記事です。
(2)一つ目:
杉田:・・・民主政治の先進国でも政権交代が万能ではないことがわかり、その結果、人々が政治そのものを信頼しなくなる「政治の危機」が大きな流れとしてある。・・・
長谷部:今や民主国家の選挙は、・・・気にくわない政治家の首を切ることが主目的となっています。
そうですね。政策をどこまで重視しているか疑問です。
たとえば、今度のアメリカの選挙、どっちが勝っても問題アリです。トランプさんは平気でフェイクを言う人で、まず人格で問題アリです。一方、バイデンさんとハリスさんは、イスラエルのガザ攻撃を放置し、軍事支援を止めません。
しかし、日本でいえば、政権に返り咲いた自民党は、それまでの政治を反省するのでなく、2015年9月の戦争法のほか、桜を見る会・モリカケ・学術会議などのように政治を私物化し、恣意的な対応をするようになり、国民の怒りを買う悪行を続けてきました。
(3)二つ目:
長谷部:今回の選挙は、政治とカネの問題、そして旧統一協会との関係をどうするかが最大の争点でしょう。・・・当選した「裏金議員」は「みそぎは済んだ」というのでしょう・・・。
杉田:「みそぎ」はいかにも選挙至上主義的発想です。・・・政治家たるもの自分でどう責任を取るかを考え、実行しなければならないはずです。
長谷部:今の政治の惨状は、あれも嫌、これも嫌だと棄権したり、勝敗と関係なく「まごころ」で投票したりしてきた有権者にも責任がある・・・。現在の選挙制度では「小異を捨てて大同につく」を実践しないと勝てない。・・・「まごころ」は死票となり、望む政治も引き寄せられません。
そうです。「みそぎは済んだ」と思っている人もいるはずです。
小選挙区選挙制度は1位でないと当選しない選挙制度ですから、連携の大綱のようなものをさらに詰めて準備してもらいたい。今のままだと有権者泣かせ状態が続くのではないかと思います。
たとえば、今回の選挙は日本共産党の裏金のスクープと2000万円の裏公認スクープ、これが引き金になり、なおかつリードしたことは確かです。その共産党は議席を減らし、一方、国民民主党やれいわ新選組などが漁夫の利を占める結果となりました。
今、その国民民主党は、各党と等距離を保つと言っていますが、等距離といいながら、実際にはもう自公側にすり寄っていることは確かです。ですから、すでに「裏自民党」とか、「自民党に利用され捨てられる」とか、「自民党にこっそり手を貸す」とか評され始めています。国民がせっかく自公政治を止めようと動き出して、よりましと思って投票したのに、それが延命する役割を果たそうとしていますから、これでは自公政治の大本は変わりません。裏切りです。これは異常です。
(4)話が少し変わりますが、「みそぎ」についておもしろいことがあります。
本居宣長『玉勝間 上』(岩波文庫 1977年)の19㌻に「悠紀主基〔ゆきすき〕」ということが書かれています。ここに、「No.79 津軽と渡島」で取り上げた「ソキ〔sotki〕」に関わることが出てきますから取りあげておきます。まず、当該箇所を引用しましょう。ルビは( )入れました。
「・・・主基(スキ)は禊(ミソギ)の曾岐(ソキ)と同音にして、濯(スゝキ)といふことなり、みそきも身濯(みそゝき)にて、そゝくとすゝくと同じきを、共につゞめて、曾岐(そき)とも須岐(すき)ともいへるなり、・・・」
かいつまんで言いますと、 宣長がつぎのように言っています。
1.スキ=ソキ=ススグ
2.みそぎ=ミをススグ
3.そそぐ=すすぐ
4.共につづめて、ソキともスキともいう
私が注目したのは、ソキです。
No.79でも書きましたが、ソキは、アイヌ語ではソキ〔sotki〕で、意味は「ねどこ;神々の住む所;山中では熊など多くいる地帯:沖ではカジキマグロなどの多くいる地帯」(知里真志保『地名アイヌ語小辞典』(1997年)です。ここでは「神々の住む所」が該当するでしょう。
一方、宣長はソキをススグと説明し、みそぎは「身濯(みそゝき)」=身そそぐことだとしています。
しかし、「ミ」というのは、ミタマ〔御霊〕やミシワザ〔御所為〕などのように、丁寧な表現や敬意をもっていう場合に用いられます。ほかにも、オミオツケ〔御御御付〕のように、元の「付〔ツケ〕」に「オ・ミ・オ」と3つも丁寧語が付く例もあります。
これでいうと、ミソギ〔禊〕は、「身ソキ」でなく、「御ソキ」=「神々の住む所の丁寧表現」ということもあるのではないでしょうか・・・。
私は、神事についてはわかりませんから、ここでも「酒のつまみ」みたいな話です。しかし、宣長の言うようにスキ=ソキなら、「悠紀主基」は神々のいる場所と関わることなのでしょうから、とりあえずは意味が通ります。
名残りのアケビ
【コレクション 103 相楽総三・赤報隊資料集】
相楽総三や赤報隊は、鳥羽伏見の戦の頃に先触れとして年貢半減令を吹聴して、旧幕領などでの反乱決起を促した先駆集団でした。ところが、彼らはすぐに「偽官軍」の汚名をかぶせられて処刑されてしまいました。
この歴史的事実を作家長谷川伸が『相楽総三とその同志』にまとめましたが、下のパンフレットは長谷川の作業に目を開かれて関係資料の発掘に努めた成果です。
この大きさは、B5判8㌻です。B5判の4枚分の横長の用紙を二つ折りし、さらにもう一度二つ折りするとできます。
全体は、
1㌻ 上に掲
2~4㌻途中まで 解題 宮地正人 東京大学名誉教授 『相楽総三・赤報隊資料集』を押す
4㌻途中~5㌻ 解題 桐野作人 作家 西沢朱実氏の仕事 —緻密と執念と愛惜と
6~7㌻途中 主な収録資料
7㌻の残り *ここは下に載せました。
解題 西沢朱実
刊行案内 体裁:A5判 750㌻ 定価:1万8千円(特価:1万5千円)
発売:平成20(2008)年 限定300部 マツノ書店
以上です。
落穂拾い
1.
2.
3.
今日はここで。