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寿初春大歌舞伎・第二部@歌舞伎座

2021-01-10 | 歌舞伎

緊急事態宣言で3月以降の悪夢が蘇るのかと慌てましたが、今回、劇場は対象外でひと安心。

 

私見ながら、歌舞伎に関して言えば徹底的な感染症対策をしてるので、問題ないと思います。

客は全員マスクして、前を向いて黙って見ているだけですから。

舞台上でも役者以外の演奏者は全員、鼻から胸までかかる黒い薄絹(?)を垂らしています。

太い声を出す義太夫さんや粋な高音の清元さんは、さぞや苦しいことでしょう……。

 

再開以降、大向うは禁止。

座席での飲食は勿論、幕間(休憩)でも水分補給以外の飲食はできません。

歌舞伎座休館前はお弁当やサンドイッチ、名物の小倉アイスや鯛焼き、ワインやビールなどの酒類も

販売されてましたが、全て消えました。

 

売店には幕が下り、舞台写真やグッズも木挽町広場という地下鉄直結のコーナーで販売しています。

これは以前からあった歌舞伎座の建物外の広場です。

そこにも囲いをして、一度に数人しか入れないように立ち入り制限までする徹底ぶり。

 

これほど対策を講じているのに、お正月(松の内)にもかかわらず客席はガラガラでした。

歌舞伎座が再開してから、座席は市松並びで以前とは全く違う光景が広がっていましたが

それでも用意された席はそれなりに埋まっている状況に慣れてきたところに、華やかであるべき

お正月の歌舞伎座のあまりにも惨憺たる有り様に冷水を浴びせかけられたような気分になりました。

 

1階席も前方でもポツポツ、後方はゼロ。

幕間に2階席と3階席をチェックしに行くと2階は水を打ったような静けさとはこのこと?

というような異様な雰囲気で、立っているのは歌舞伎座スタッフのお姉さんたちだけ。

3階はそれなりに埋まっていましたが、それでも後方の列には誰も座っていない様子。

 

この惨状では役者はもとより松竹にしても開けるも地獄、閉めるも地獄のジレンマに陥るのでは

と不安を覚えました。

 

内容的にも時間を短縮するために、「仮名手本忠臣蔵」の「祇園一力茶屋」が大幅にカットされて

通常でも段ごとに分けて上演する「仮名手本」なのに、各段の詳細まで端折ってしまっては

歌舞伎初心者には何がなんだか分からない話に見えるでしょう。

また、見慣れている歌舞伎ファンにとっては物足りないこと、この上ない!

 

仁左衛門さんが「無駄に見える場面を削ってしまうと味わいがなくなる」といった内容の発言を

されていたのを何かで読んだのですが、まさにそのとおり。

 

討ち入りに加わりたいのに断られ続ける、梅玉@平右衛門と吉右衛門@由良之助のやり取りがないなんて!

大石がどれだけ放蕩な暮らしをしているか、忠義心など失くしてしまったのではないかと

観客にも元家来たちにも思わせるバカ騒ぎもカット。

息子が重要な手紙を届けに来る場面もカット。

 

うーん、こんな短縮バージョンにするくらいなら重厚な演目は避けたほうがいいのでは?

と思わずにいられませんでした。

 

一方、「夕霧名残の正月」は藤十郎丈を偲んで二人の息子が美しく演じ、こちらは良かったです。

 

鴈治郎@伊左衛門の丸っとした姿には愛嬌があって、お父さんを彷彿とさせます。

扇雀@夕霧はお父さんとは違ってややシャープな印象で、既に亡くなった夕霧を演じる設定としては効果的。

一種の幻覚、亡霊なので、あまり可愛らしくてもねぇ。

 

日本の伝統芸能を民間企業一社で支えさせる理不尽さに、歌舞伎ファンの一人としてやるせなさを

感じた、少し苦い初芝居になりました。

 

心なしか、鏡餅もショボかった……。

 

27日千穐楽。

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