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ドイツの「戦後賠償」について

2017-05-28 20:45:04 | 国際情勢
ドイツの戦後国家賠償に対する賛美に関しての質問です。日本は各種侵略戦争時代の戦後補償や賠償問題を取り上げられるとき、よく「ドイツを見習え」という論法がなされますが、その詳細は我が国ではあまり知られていないように思います。

①ドイツはなぜ、ホロコーストやユダヤ人問題で国家補償や賠償をしたんでしょうか?その背景ってどういうものだったんでしょうか?

きっかけは「ポツダム協定」にさかのぼります。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%84%E3%83%80%E3%83%A0%E5%8D%94%E5%AE%9A

>・ソ連および西側連合国(米・英・仏などを含む連合国)は、その占領地域から賠償を徴収する。ソ連の徴収分からポーランドへの賠償は充当される。
・西側連合国はその占領地域からソ連に対して賠償を配分しなければならない。ドイツの平時経済に不必要であると判定された工業設備・資材の10%は無償で、15%は物資との交換でソ連に引き渡される。
・賠償徴収は2年以内に行われなければならない
・ソ連は西側占領地域、西側連合国は東欧とソ連の占領地域、オーストリアにおける資本の請求権を相互に放棄する。
・ソ連は西側連合軍が押収したドイツの金資産等に対して関与しない。

→これによりドイツは「連合国に対する賠償」を行うことが「正式決定」されています。

とは言え、1949年に、西ドイツ(ドイツ連邦共和国)と、東ドイツ(ドイツ民主共和国)が成立た事でし、正当な継承国が決定されない状況下のため賠償問題の解決は統一後まで一時棚上げされています。

さて西ドイツの戦後の経済復興は同時に賠償請求にまつわる議論を呼び起こし、また1948年5月にイスラエルが独立宣言をしたこともあり、1952年9月10日にイスラエルと西ドイツの間で、「ナチスの権力掌握後に発生したユダヤ人被害者」に対する補償を行う条約を締結しています。

同日にはユダヤ人対独物的請求会議とハーグ議定書を調印し、個人的請求についての合意を行いました。

こちら、ご参考までに
http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/bitstream/2297/17883/1/AN00044830-43-3-89.pdf

一応言っておくと西ドイツによる賠償はユダヤ人問題に限らず、賠償・補償請求は被害者の国籍国によって行われるものであり、個人請求は国内制定法によって定められたものに限られています。

これは個人は国際法に基づく請求の権利を持たず、また国内制定法の制定は「あくまで道徳的な義務の遂行であり、法的義務ではないという見解」によるものです。

実際に西ドイツは国際法違反を理由とした個人請求を退けていますし、この見解はドイツ統一後でも踏襲されています。

たとえば東欧諸国に在住する「強制労働」の被害者に対する補償責任を、現在でもドイツは認めていませんし、これは当時のドイツ軍が徴収した「慰安婦」に対しても同様です。
(どっかの国だと大騒ぎになりそうですが…)

1990年9月12日のドイツ最終規定条約により、ドイツの戦争状態は正式に終了しましたが、この条約には賠償については言及されていません。
なので統一後のドイツ連邦共和国はドイツの戦後問題が最終的に解決されたとしており、法的な立場からの賠償を認めていません。

現在行っている補償等は、あくまでも道義的な立場としてのものです。

②ドイツ以外に、戦勝国や敗戦国が国交や平和条約後に、戦争の国家賠償や国家個人補償をした例はあるでしょうか?あればその背景や内容に関して教えてください。

イタリアがリビア、エチオピアに対して行っています。
http://www.asyura2.com/08/kokusai2/msg/607.html

そのイタリアも、今回のリビアにおけるクーデターに一枚かんでいるようですが。

個人的にドイツも見習うとしたら国家の方針を毅然と持ち、可能な限り自国の不利にならないよう努め、やむを得ない場合には自国の「誠意」を極力アピールする、という姿勢ではないか、などと考えています。