白い花の曼珠沙華が咲いている。万葉集には「壹師(いちし)の花」を詠んだ歌が唯一首あるが、この「壹師(いちし)の花」は「曼珠沙華」であるという説が有力である。しかも「壹師(いちし)の花」は白い花を咲かせる白い曼珠沙華(彼岸花)であろうというのが最有力となってきたと思う。
白い花を咲かせる曼珠沙華 白彼岸花(シロヒガンバナ)
路(みち)の辺の壱師(いちし)の花のいちしろく
人皆知りぬわが恋妻を
柿本人麻呂(万葉集巻11-2480)
大意:道のほとりのイチシの花のようにはっきりと、人は皆知って
しまった。私の恋しい妻を。
(日本古典文学大系6 岩波書店)
イチシ:諸説がある。羊蹄(ぎしぎし)(タデ科の草木。淡緑の穂
状の花が四、五月ごろ咲く)、
クサイチゴ(バラ科の宿根草。初夏に白い目立つ花が咲く)、
エゴノキ(エゴノキ科の落葉喬木。純白の五弁の合弁花が
初夏のころ咲く。長い柄があり、総状に垂れ、目につく花)
など。
(日本古典文学大系6 岩波書店)
イチシ(壱師)の花は、この外にも「イタドリ」や「赤い
ヒガンバナ」を当てることがあり、定説がない。
僕はこれを「白いヒガンバナ(白曼珠沙華)」に当てたい。
素人考えであるが、「壱師(いちし)の花いちしろく」を
そのまま読めばいいのではなかろうかとも思うのだ。
曼珠沙華が日本に渡来した時期は不明だが有史以前の
ようだ。
この花を表す方言、異名數多く、「日本植物方言集」には
400ほどの方言が記録されているという。