福岡万葉散歩

街の様子や木々や草花を眺め乍ら、先人の俳句や和歌を織り込んで、今の季節を楽しみたい。たまには万葉散歩も楽しみたい。

藤袴と源氏物語

2011-10-25 | 日記・エッセイ・コラム

  なに人がきて脱ぎかけし藤袴(ふぢばかま)

    来る秋ごとに野辺を匂はす    藤原敏行(三十六歌仙の一人)

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藤袴(ふぢばかま)  キク科の多年草

芳香を放つことから、秋の七草の中でも人気が高いという。

原産地中国では、洗髪用に使われたそうだが、日本では

出陣の武士が兜にたきこめたといわれる。

この藤袴について高橋治は次のように書いている。

  「源氏物語」藤袴の巻で、夕霧が父源氏の使者として玉鬘の

  もとに行き持った蘭の花を手渡す。それが藤袴で、この花が

  蘭と呼ばれていた傍証とされる。

  玉鬘は「源氏物語」中最も印象的な薄倖の美女夕顔の娘で、

  父は源氏のライバルだった若き日の頭中将、源氏の妻葵上

  の兄である。「夕顔」は大河小説の中にさしはさまれた短編

  という説もあるくらいで、見事な出来映えを示す。その伏線が

  第二帖「帚木」(ははきぎ)のいわゆる”雨夜の品定め”に出て来る。

  その玉鬘(たまかづら)に源氏父子が思いを寄せる。錦織のように

  人間関係があやなす王朝絢爛(けんらん)の絵巻を、この花と香り

  が彩っている。

この歌の派生歌に源実朝の次の歌がある。

  藤袴きて脱ぎかけし主やたれ

      問えど答えず野辺の秋風

  


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