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国会での論戦から…野党はアナロジーに逃げるな!

2005-01-27 07:24:10 | Weblog
 小泉氏が首相になり、国会での論戦が多くの国民から「見る価値のあるもの」として見なされるようになったことは彼の功績だと思う。森首相の時代までは、特に与党側は「できるだけ弱みを見せない答弁」に終始していたからだ。

 しかし、その一方で、小泉首相のせいで(または、小泉内閣がきっかけとなり)、国会論戦が意味のないエンターテイメントになりつつあるという側面も見逃せない。

 25日の民主党の代表質問で、民主党の野田佳彦議員は以下のような主旨の発言をした。

「(前日の首相の所信表明演説で)小泉首相は浜口雄幸元首相が、途中で凶刃に倒れようとも『(改革を達成するのであれば、狙撃されようとも)男子の本懐である』と言ったことを自分になぞらえたが、あなた(小泉首相)は、浜口元首相になぞらえる資格はない。なぜなら、浜口氏は狙撃後も大手術を受け、経過が悪くても国会に出席し、さまざまな政策について説明責任を果たしたからだ。逃げて、ぼかして、隠して、開き直るあなたとは違う!(場内拍手)

 これを紹介した26日フジテレビの「とくダネ!」では、小倉キャスターやデーブスペクターは大絶賛。
小倉氏「鋭いな~」
デーブ氏「やっと野党らしくなってきました」

………鋭いか?

 小泉首相が自分を浜口雄幸になぞらえようがなぞらえまいが、郵政民営化問題とは何も関係がない。にもかかわらず、「小泉首相は浜口雄幸ではない」という、どうでもよいことを「与党攻撃」というイメージで見せようとしている民主党のこの演説は、レベルが低すぎて泣けてくる。

 よく、物事をわかりやすく説明するために「アナロジー(置きかえ)」という技術を使う人がいる。例えば、戦前の天皇と国民の関係は「親と子の関係」、少なくとも昨日までの海老沢元会長とNHK職員の関係は「金正日と北朝鮮人民の関係」など、ある関係を「別の関係に似ている」と説明することで、相手に関係を理解させようとすることがその典型である。しかし、アナロジーは、正確には、何の説明にもなっていないことを忘れてはならない。小泉首相が、「逃げて、ぼかして、隠して、開き直る」というのであれば、どの政策について、どのような発言が「逃げて、ぼかして、隠して、開き直っている」のかを、直接指摘して追求しなければ、真剣に見ている国民側からすれば正確な理解はできないし、そういう追求をする方が、よほど野党らしい鋭い攻撃であろう。

 私は小泉首相ファンではない。むしろ逆である。だからこそ、野党に対してこのように苦言を呈する次第だ。私なら昨年の「自衛隊が行くところは非戦闘地域だ」などの発言をあげつらって、首相の無責任な言論姿勢を徹底的に批判するところだ。

 せっかく、多くの国民が国会中継を見ようとする風潮が高まっている中で、このようなやりとりが続くと、パブロフの犬のように「中身はないが、見た目だけ戦っているような論戦」が「熱い論戦」だと勘違いする国民も出てこよう。先ほどの小倉氏やデーブ氏のような反応である。だからこそ、次の選挙までは、野党が本気で政権を取る気があるのであれば、勢いにだまされない、丁寧な言葉遣いで、リアルに与党の政策批判をすべきであろう。ここが正念場である。

 昨年の参議院選挙でも、民主党の岡田代表は、民主党内の予想を裏切り、女性からの人気がかなり高かった。その理由も「発言に責任感が感じられるから」というようなものが上位であったと記憶している。彼も、代表になるまでは、かなり実直な言葉遣いをしていた(今は代表であるせいで微妙な部分も見受けられるが)。意外と国民は見ているものである。

 ちなみに読売の社説でも、民主党の与党攻撃に厳しい評価を下している。
[国会代表質問]「民主党は政権準備にほど遠い」

参考 浜口雄幸狙撃事件

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