できるだけごまかさないで考えてみる-try to think as accurately as possible

さまざまなことを「流さずに」考えてみよう。"slow-thinking"から"steady-thinking"へ

TPPは入っても地獄、入らなくても地獄

2011-10-31 22:18:51 | Weblog

普段から日本の国際社会におけるプレゼンス(発言力)を高めておかないからこういうことになるのにね。日本の国際的発言力を高めようとすると、ネトサヨやリアルサヨが「ナショナリズムだ!」と騒ぐせいで、結局今に至るまでアメリカと対等な経済交渉ひとつできない。

国際的発言力を持っている状態とは、相手のアクションに対して、それが自国に不利な場合は、制裁的なリアクションが採れるということだ。今の日本は、アメリカに対してどころか、中国韓国に対してさえそういいうリアクションは採れないだろう。国際関係を人間関係と同一視し、「他国から嫌われない日本」を志向し続けてきた結果である。だから民主党の外交政策はバカだと国内からも国外からも言われるのだ。

 

おそらく、日本がTPPに参加しなければ、TPPに参加している国々だけがトクをするような形をアメリカが中心となって強引に作るだろう。それに対して日本が、特許などの知的財産などを盾にリアクションをとることはできないだろう。あの蓮舫を中心とする仕分けバカの連中が、基礎研究や開発費用を仕分けしていったからねえ。

逆に、日本がTPPに参加すれば、発言権があまりないままに、アメリカの言うがままのルールに追随するしかないだろう。細かいところで、いざというときに日本が損をしないような条項を、知恵を絞ってどれだけねじ込ませることができるか。本来は官僚がそういうところで働くべきなのだが、そもそも農林官僚がTPPに参加するとしたら・・・というシミュレーションをやっていないのだろうし、TPP参加に積極的な経産官僚も、困ったら円高のせいにすればいいやと思っていたら全てが終わりである。

 

私は農家の戸別所得補償制度に賛成である。ただし、「これだけ作ったけど売れませんでした」という従量制の補償ではなく、質が高いものにはボーナスをかけて補償し、質が低いものには1倍未満の倍数をかけて補償するという制度にすべきだ。これで、単位面積当たりの収量を上げたり、同じ地域でもより質が高い農産物を作ろうというインセンティブになるだろう。戸別所得補償制度は、見方を変えれば政府から農家への補助金なのだから、それで名目上は安くなった農産物を国内流通品や輸出品にすればよいのだ。

つまり、農家の戸別所得補償制度そのものの是非ではなく、どういう所得補償制度にすべきなのかという次元の議論をしなければならないはずなのに、これまた農水省系統でも、経産省系統でも、そういう議論は全く聞かない。まるで安保闘争のような、教条主義どうしの戦いのようだ。

 

例えば小麦一つ取っても、国内の小麦のだぶつきを防ぐために、これまでの日本は単位面積あたりの収量を上げる品種改良を怠ってきた。その結果、補助金にどっぷり浸かっているフランスの小麦と比べても、同じ面積で半分の収量しかとれない小麦を日本では作っている。それで「国際競争はできない」と悲鳴を上げたって、そりゃ「当たり前だろ」としか言いようがない。今後、単位収量を上げるようなインセンティブ(やる気)を上げるような農業制度をデザインしていかなければならないのだ。

 

さて。日本の国際発言力を上げるためには、まだ日本に経済競争力があるうちに、特許などの知的財産権を守る政策を採ること。次に、軍事的にはアメリカにおんぶにダッコ状態なので、その点ではアメリカに文句が言えないということを明確に前提として、それを変える必要があるのか、変えるとすればどう変えるべきかを現実的に議論することだ。核武装の議論をするだけでアメリカからクリントン国務長官がすっ飛んで来るくらいだ。アメリカを揺さぶることは可能である。

 

というわけで、現状では、TPPに参加しようがしまいが、日本経済はどん詰まりになると思うよ。

 



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