ぼたブログ

そんなもん、オマエ・・・

北川歩実「金のゆりかご」(集英社文庫)

2006年01月25日 | 
前回、ドラマ「相棒」を紹介したときも書いたように、後味が悪い話は、終わったあとに複雑な余韻が残って、考えさせられたりする分、印象に強く残ります。
今日取り上げる推理小説「金のゆりかご」も、後味の悪さでは相当のものではないかと思います。

作者である北川歩実氏は理系畑の方なのか、著作はどれも科学系の話を土台としています。
そのため、叙述内容も科学的理解を助けるための説明的な文章が多く、やや冗長に感じる部分があります。
また、ストーリーも2転3転して、なかなか真実にたどり着けないため、そのプロットには感心させられる一方で、話の展開がこんがらがってしまうため、これまた冗長な印象を残してしまいます。
これは、自分の読んだ2作品に共通する部分でした。
まあそのあたりは好みの部分といえると思います。

それよりも、当作品は、謎が全部解かれた後の登場人物の発言が非常に後味が悪いものでした。
やはり真相は2転3転した結果、暴かれるのですが、その結論を導いた人物の最後の発言が、謎が解けたという開放感よりも、一歩間違っていたら・・・、と考えさせられて、すっきりしない読後感を残すのです。
読んでしばらくたつので、正直謎解き部分は全く忘れてしまったのですが、この本のことを思い出すたびに、何ともいえないもやもや感がよみがえります。
こういう印象の残り方は、うまい!と思わせてくれますね。

今日の一言
現在、買ったままの推理小説を読む心理的余裕なし!