Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「高原のフーダニット」有栖川有栖のミステリ

2014-08-17 11:21:23 | ミステリ小説
                                      
ミステリの本格モノを書く作家として、その認知度はもう今さら説明の必要はない作家です。デビュー作の「月光ゲームYの悲劇゛88」が、
クイーンばりのロジックを駆使したミステリで大変面白く読んだ記憶があります。近年では「女王国の城」が本格ミステリ第一位、週間文春ミステリベスト10で第一位、このミステリがすごい!で第三位となり
ファンを喜ばせてくれました。おもに学生アリスシリーズ(江神二郎シリーズ)と作家アリスシリーズ(火村英生シリーズ)があり、他に「マジックミラー」「幻想運河」「赤い月、廃駅の上に」など
面白い作品があります。個人的には学生アリスシリーズは良いのですが、作家アリスシリーズの臨床犯罪学者火村英生と作家アリスとのコンビの作品はどうもイマイチ好きになれません。
どうも学者が犯罪捜査に首を突っ込みあれこれ捜査するという設定が馴染めないのです。もちろんこのパターンは沢山あります。刑事を主人公にした物語以外はすべてこのパターンといって差し支えないぐらいです。
でも何故かこの火村英生には馴染めないのです。作者も現場にシャシャリ出る学者に嫌悪感を隠そうともしない刑事を用意して、このパターンの有り得ない状況を肯定するような姿勢を示しています。
何故、火村シリーズに乗り切れないのか、久しぶりにこの「高原のフーダニット」を読んで解かった気がします。著者の人間性でしょうがとても生真面目な文章で出てくる人物も品行方正で考え方も行動も
しっかりとした人物ばかりです。もちろん犯罪が行われる訳ですから悪意を持った人間が登場するのですが、そこが画一的というかパターンとしての行動にしか見えないところがあります。
もっと毒の有る人物とかドロドロした狂気に憑かれた人間とかが出てくればと思います。このため久しぶりに読んだにも係わらず退屈を覚えてしまいました。この「高原のフーダニット」はタイトルの良さに
惹かれて読みましたが三作が収められた内容で、一作目はアリバイ崩し、二作目は夏目漱石の夢十夜のオマージュのような作品で怪異話の短編十作です。そして三作目がこの本のタイトルの
高原のフーダニットで火村がロジックで犯人を指摘するミステリとなっています。
「孤島パズル」とか「双頭の悪魔」とか好きな作品もあるのですが、どうも火村シリーズには馴染めない。とても残念な気がします。

                                     


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