Mのミステリー研究所

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まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「人格転移の殺人」西澤保彦のミステリ

2014-09-20 13:45:22 | ミステリ小説
                                   

有る特殊な装置の中に入るとそこに居る人間の人格が他の人間に転移すると云うそんな不可思議な状況が説明されます。そして人格が次々と転移していくなかで連続殺人が起きるというそんなストーリーになっています。
したがって非常にややこしい記述が続きます。一人では装置が作動しないが、二名以上その中に入ると瞬く間に人格が入れ替わるということになります。それも一定のルールがあり順繰りに次の人間に人格が
移るというわけです。しかも一度だけではなく全くの不定期にそれは繰り返されるという設定です。誰が何のためにそんな装置を作ったのか、その点は曖昧にしてあります。初めにその装置を研究している政府機関の人間たちの
動きを描写して物語世界を紹介して読者を誘います。そして、数年後ということであるショッピングモールの中にあるファーストフーズ店に居合わせた七人の男女。そこに突然大きな地震が起きます。そのため店内にあったシェルターらしき中に
逃げ込む七人。しかし、それこそが例の装置で逃げ込んだ人間の人格が次々に転移していくことになります。仮に四人が装置に入ればAの肉体にdの人格が入りBの肉体にaの人格が入りCの肉体にはbの人格、そしてDの肉体には
cの人格となる訳です。そして法則として転移が繰り返される度に人格はひとつづつ次の肉体に移ると云う事になっています。そして装置から助け出された六人は政府機関の用意した施設に軟禁されます。この世間とは隔離された施設内で
連続殺人が起こる内容なんですが、これが読んでいてとてもややこしい。店に居たのは七人ですが装置の中にいたのは六人です。つまり一人の女性が崩れ落ちた店内で死体として発見されます。残りの六人で人格転移が
繰り返されますが、誰が誰を殺したのか把握するのに非常に神経を使います。ハッキリ云ってネタというかトリックはシンプルなんですが舞台装置が派手で、またその状況を上手く使ったストーリー展開がスピーディに進み
あっさりとは真相に近づけないようになされています。この辺は作者の計算のしたたかさです。西澤マジックといわれる所以でしょう。SFチックな設定のミステリはあまり好まないのですがこれは楽しめました。二重のトラップが
仕掛けられていますが、装置の意味を匂わせるラストと犯人の隠され方が上手いのでややこしかった事件も納得です。こういった設定には元ネタがあるのですが、それでもここまで膨らましてこのようなミステリに仕上げる
著者には流石としか云えません。西澤保彦らしい特殊な世界を舞台にしたちょっと毛色の変わったミステリです。

                                    


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