Mのミステリー研究所

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「火の粉」怖い隣人の物語

2014-03-23 08:38:35 | ミステリ小説
雫井修介 著『火の粉』は映画で云えばサイコ・ホラーのような隣人の恐怖を描いた物語です。
親切で世話好きな男。あれこれと気を回しいろいろ手伝ったり話相手になったりと好人物に見える男。だが、その男には異常な点があった。彼は自分の親切に対して見返りを求める。
金銭とかそういったことではなく自分を認めてくれという意味で、ないがしろにされたり相手にされないとお仕置きという攻撃を相手に加える。

裁判官だった梶間は最後の裁判である殺人事件の被告に無罪を言い渡す。その男の名は武内。

ある日梶間の妻が庭にいると隣の庭から話しかけてくる男に気付く。何かと親切にいろいろ話しかけてくる男と妻はいつの間にか打ち解けた隣人としての態度をとるようになる。
裁判官だった梶間の家には介護が必要な梶間の母親と弁護士を目指す浪人の息子。その息子の妻とひとり娘の五人が住んでいた。梶間は隣に引っ越してきた男が武内と知ったが距離をおいた態度でいた。
いちばん打ち解けたのは梶間の妻でいつしか家に上げお茶を飲みながら話をするようになっていた。しかし、家族中が親密になる中息子の嫁雪子ひとりが武内に違和感を持つ。
武内も自分を見る目が違う雪子の態度に気付く。ここから手に汗握る展開となっていきます。誰も雪子の話を受け止めず武内の陰謀で夫とケンカした雪子は家を出され実家に帰ります。いちばん
頼りの夫が雪子の話をまるで信じず過去のある人間を色眼鏡で見るなとむしろ雪子を非難します。この孤立無援の雪子の闘いぶりが中々上手くページをめくる手が止まりません。
武内の本性が少しずつ現れてくる怖さもあり結末が気になって最後まで一気読みでした。
ミステリとは違いますがサスペンスものとして読み応えのある内容でした。人の内面までは中々見抜けない。そして、隣人は選べない。お化けや怪物より怖い物
それは人間だということなんでしょうか。最後の皮肉さもひとつの問題提起のようでいろいろ考えさせる物語でした。

          
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