愛犬耳袋

 コーギー犬・アーサーとの生活と喜怒哀楽

アーサーとの出会い(3)

2006年09月23日 | 愛犬紹介
 そういうわけ(前日参照)で、2005年11月のある日、母犬の飼い主さん宅を訪問することになった。
 どんな子たちが待っているのだろう。威圧しないよう、薄型デジカメを手に2時間ほどの片道を行く。地図を片手に、目指す集落に近づくと角に近い一軒から、犬の声が聞こえて来る。あそこだ。
 我々の姿に気づいた飼い主さんが庭越しに現れ、呼び鈴を押すまでもなく中に通して頂いた。
 玄関を開けると、上がりかまちからリビングに至る廊下が、ビッシリ、ペットシーツと新聞紙でガードされているのが目に飛び込んで来た。母犬1匹、仔犬7匹の生活は想像を絶するものらしい。
 そしてリビングに足を踏み入れるのと、
「うわぁー!」
 思わず声を上げたのと、どちらが早かっただろう。リビングの一角に、ケージの中でモゴモゴ動く、灰色がかった生き物たちの集団が!





 生後1ヶ月のコーギーの仔犬! 仔犬! 仔犬!
 どの子もムッチリとよく肥え、毛並みもよい。損得勘定抜きで、愛情をかけられている様子がよくわかる。
「今、決まっていない子はこの子と、この子と……写真でいいと言ってもらったのは、この子です」
 飼い主さんは、3匹の仔犬をケージから取り出した。もう結構重いのか、その手付きはゆっくりだ。
 仔犬たちは見分けの為に色別のリボンを首に巻かれていた。写真で見初めた子は緑。兄弟の中で1番大きいと聞かされただけあって、体格もムッチリ、骨もガッチリ。前足なんかボッテリと太い。
 物怖じしない性格なのか、ケージから出され、仔犬らしいおぼつかないながらも、しっかり踏ん張った足取りで、ポテコロポテコロ、あちこち歩みはじめる。他の2匹はあたりの匂いを嗅いだりしているが、ウロウロするようなことはない。

 この3匹の中から運命の子を選び取らなければならない。試しに動き回る子を膝に抱いてみた。しばし動きが止まる。同行した家族も、他の子を抱き上げてみる。

 さあ、感じろ自分! 何かを!

 あの、よくペット体験談やエッセイなどで目にする
「目と目があった瞬間、この子しかないっ! と思いました」
 とか
「あの子の方から私の方に近寄ってきて、うちの子になるって自分で決めたんです」
 とかいう、アレだ。
 ああいう運命的な瞬間を、感じる時は今だ。
 ……何か感じなければ。何か感じなければ。
 そんなことが頭の中をグルグル駆け巡っているうちに、緑の子は膝の上からサッサと降りていってしまった。
 その後、緑の子は入っては行ってはいけないテーブルの下に入り込み、なんの予兆も無くジョジョーッとラグマットにオシッコの水たまりを作った。
 今思えば、この一連の行動に、後のアーサーの性格すべてが象徴されていたのだが、またしても当時はそんなことはサッパリ分からないのであった。
 その間、家族に抱かれていた子は、至極大人しくじっとしており、そのうちジャケットの中に頭をつっこんでウトウトしていた。
 その様子を見ていた飼い主さんは
「どうします?」
 そろそろ決定を促して来た。

 大柄で健康で、でも手がかかりそうなのは緑の子である。少々気が弱そうだが、御し易そうなのは抱かれている子だ。どちらがいいのか。
 申し訳ないが雷に打たれるような運命の天啓が無かった自分には、決めることが出来なかった。口をついて出た言葉は情けないことに
「ど、どうする?」
 同行した家族に意見を求めるものだった。しかし家族もうろたえ気味に小声で
「決めて」
 とささやき返されてしまった。



中央が緑の子


 こうなると自分で決めるしかない。その時、私の頭の中にはかつて飼ったペットとの数々の思い出がフラッシュバックしていた。
 子供の頃拾って親に反対され、元の場所に返してしまった野良犬。隣の猫に襲われて亡くなった文鳥。そしてハムスター。
 ハムスターは大人になってから飼ったせいもあって、1番長い時間を共にした動物だった。ひ孫の代まで繁殖させ、足掛け6年ほどつきあったことになったろうか。
 といっても小動物であり、個々の寿命は2年弱と短い。そして病気になったとき、きちんと向き合って診療してくれる獣医が少なかった。
 口コミで小動物に明るい動物病院を知り、やっと診察を受けることが出来ても小さな体に薬物や麻酔の影響は軽視でいない。強気な治療を施すかどうかのジャッジ。手術をさせても予後抵抗力が低下し、寿命を全う出来ないという危険性。そして寿命との兼ね合い。
 また犬猫には発達している予防医学も無い。小動物は不健康を隠す生き物である。ある日突然発病し、病院につれていった時、施す手が無いということも珍しくない。
 そんな診断を受けた後、待合室で一緒になった、見るからに健やかそうな犬たちの姿がどれほどうらやましかったことだろう。犬猫は予防接種などで健康なうちに病院に出入りできる。その日あった犬の飼い主さんは、にこやかに犬仲間と言葉をかわす余裕があった。
 私は小動物の飼い主として、毎回死の宣告を待つ気持ちで、診察室に入っていた。

 こんな経験を長くして来たため、今度飼う生き物は、とにかく元気で健康で、病気や怪我とは縁遠く、そして万一怪我や病気をしても軽く済ませられる生命力がある子にしようと、心の底から切望していた。
 その考えを思い出し、ようやく3匹の仔犬から一匹を選び出した。
「やっぱり最初写真で決めた、この緑の子にします」
 飼い主さん一家は歓迎してくれるかと思いきや、
「いいんですか? この子、大きくなりますよ?」
「ほんとに、かなり大きくなりますよ?」
 口々に念押しをしてきたのである。
 まあ、そのぐらい緑の子がやたらめったらガッチリしていたということなのだが。

 そういうわけで、1番大きい緑の子がうちの子になると話がまとまった。引き渡しは体が出来る一ヶ月後。
 我々がおいとましようと玄関を出た時、ワンワン吠えていた母犬と対面することになった。母犬の名ははなちゃん。普段は仔犬と共に家の中にいるところだが、今日は仔犬たちとも引き離され、あわれ庭につながれていた。
「いいですか、放しますよ」
 飼い主さんがはなちゃんのリードを外した。その瞬間、はなちゃんは弾丸のように我々に突進してきた。
 こちとら、仔犬の匂いをぷんぷんにまとった見慣れぬ人物である。母犬がカーッとしても仕方が無い。正直「噛まれる!」と思った。
 しかしある意味飼い主としての器量が試される時だと思った。ここで逃げては飼い主がすたる(?)。
 万一ガブリとやられても、それを甘んじて受けようと思った。はなちゃんが命をかけて産んだ仔犬をつれていくのである。そうされる理由が我々にはある。
 しかしはなちゃんは、私の悲壮なやせ我慢を見抜いたかのように、ドドドッと駆け寄ると、素早く上半身を起こし
 ドンッ
 棒立ちの太ももに、前足2本に体重をかけた一発をお見舞いしてくれた。はなちゃんには飛びつき癖があったようだ(そしてこの癖は見事にアーサーにも遺伝しているのだが、この時は(以下略))。
 しかし、私はこのとき太ももに覚えた重みを
「アタシの子供を頼んだわよ。しっかりしてもらわないと!」
 という、はなちゃんからの激励のバトンタッチだと思っている。


【今日のアーサー】

残暑のため勝手休憩。
しかも、こうしていると犬好きの人に
「あらあら、まあまあ」
とかなんとか構ってもらえ一挙両得


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2 コメント

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Unknown (山下)
2006-09-23 22:49:50
アーサーくんかわいいですね
ありがとうございます (SETSU)
2006-09-23 23:12:58
コメントありがとうございます。

山下さんのところのハムゾウ君とハムコさんもかわいいですね。

昔を思い出しました。