ジャン・ギャバンと映画人たち

Jean Gabin et ses partenaires au cinéma

シュジー・プリム Suzy Prim

2015-09-19 | 女優


 ジャン・ルノワール監督の『どん底』(1936年)で悪妻ワシリーサに扮し、ペペル役のジャン・ギャバンと共演している。ワシリーサは木賃宿の主人の妻でペペルと肉体関係があり、妹の若いナターシャを愛し始めたペペルに嫌われ、嫉妬に燃えて悪知恵を働かすという敵役だったが、シュジー・プリムはこれを個性的に見事に演じ、脂の乗った女優の本領を発揮していた。この時40歳。ギャバンとの共演は『どん底』の1本だけだった。
 ほかに、アナトール・リトヴァク監督の『うたかたの恋』(1936年)のシュジー・プリムも印象深い。シャルル・ボワイエとダニエル・ダリューの二人の恋を取り持つ陽気で世話好きな伯爵夫人の役であったが、孔雀のように着飾り、軽佻浮薄でコミカルな面を出していた。
 戦後はジュリアン・デュヴィヴィエ監督の『神々の王国』で少女感化院のヒステリックな院長役を演じたが、とんだ憎まれ役であった。




 シュジー・プリムは、1896年10月11日、パリ(20区)に生まれた。本名シュザンヌ・マリエット・アルデュイニ。両親、祖父母ともに俳優だったため、物心つく前の1歳半で舞台に立った。2歳半で映画にデビュー。少女時代は可愛い子役として人気を博し、10代から20代半ばまでゴーモン社製作のサイレント映画の短篇に数多く出演した。その後10年間は、マチュラン座、マドレーヌ座、ミシェル座などに出演し、もっぱら舞台で活躍。この頃ジュール・ベリーの相手役を務め、恋愛関係にあった。
 映画がトーキーになると34年頃から本格的にスクリーンに復帰し、次々に映画出演して多くの名優と演技を競った。ミシェル・シモン、アリー・ボール、ジュール・ベリー、フェルナンデル、ピエール・リシャール=ウィルム、ヴィクトル・フランサン、シャルル・ボワイエ、レイミュ、ルイ・ジューヴェ、そして『どん底』でジャン・ギャバンと共演。40歳代前半が彼女の映画女優としての最盛期であった。
 戦中から50年代までは舞台・映画の両方で活躍。60歳を過ぎた57年から映画のプロデューサーとなり、『殺したいほど好き』(59)の製作にたずさわり自らも出演したのち、シナリオも書いて創作活動にも従事。
 76年、アンリ・ヴェルヌイユ監督、ジャン=ポール・ベルモンド主演の『追悼のメロディ』に80歳で映画出演したのが最後となった。1991年7月7日、ブローニュ=ビランンクールで死去(94歳)。
 主な出演作:『うたかたの恋』『どん底』(36)『わが父わが子』(40)『求婚』(42) 『貴婦人たちお幸せに』(43)『神々の王国』 (49)『女性の敵』(53)『脱獄十二時間』(58)『殺したいほど好き』(59)