NPO法人 専攻科 滋賀の会

盲・聾・養護学校高等部への専攻科設置拡大、そして広く特別な教育的ニーズを有する青年たちの教育機会の保障をめざす滋賀の会

専攻科滋賀の会 活動報告〔更新しました!〕

2009年11月15日 08時20分50秒 | HPのご紹介
  **学習会の報告**
   障がい青年の自分づくり
~青年期教育と二重の移行支援~


2009年11月8日(日)鳥取大学の渡部昭男氏を講師としてお招きし、鳥取大学付属特別支援学校・高等部専攻科の取り組みをビデオ上映と併せて講演戴きました。会場には約50名の参加者が集い、講演後質疑応答が活発に行われました。


*於:滋賀県立男女教育参画センター(視聴覚室にてビデオ講演)

【講演内容音声記録を簡潔に文章化しましたのでご参照ください】

障害青年の教育をさらに(専攻科など)保障する滋賀の会学習会(講演要旨)
                障がい青年の自分づくり~青年期教育と二重の移行支援~
                              鳥取大学地域学部教授 渡部 昭男 氏


 鳥取大学附属養護学校専攻科での取り組みについては、できたての著書「障がい青年の自分づくり」の中でも紹介している。例えば鳥取大学の入学式に出席したり、ふれあいピックでは組み体操を披露したり、ボランティアスタッフとして手作りまつりにも参加をしている。現在専攻科は今年度から新たに私立の専攻科が1校できたので、私立が8校国立が1校になった。国立の場合は私立に比べて保護者の負担が少ないというメリットがある。

 鳥取大学付属養護学校専攻科ではグループホームでの体験をすることで、自立への意識を高める取り組みを行っている。ある青年は、卒業後の生活のためにアパートの下見を行った時に、仕事から帰ってアルミ鍋の鍋焼きうどんを食べるのが楽しみで、IHコンロではなくガスコンロのあるアパートを希望した。ある絵を描くのが好きな女性は、キッチンと生活スペースの他に、アトリエとして使える部屋のあるアパートを希望した。
 卒業後の自分の生活を具体的にイメージできる取り組みをすすめることがとても大切である。鳥取県技能・作業競技会では、作業能力はそれほど高くはなかったが、作業手順を工夫することで優勝した学生もいる。
専攻科では社会へ出る準備のために、できるだけ学校臭さをなくすことも大切。鳥取大学の専攻科では、「附養カレッジ」という愛称を付けて、生徒ではなく学生と呼んでいる。
 定員割れをしていた小学部の定員を減らして、専攻科に振り替えた。定員は1学年3名。2学年で6名なので、本科生全員が進学することはできない。鳥取大学は作業所も持っているので、高等部卒業の時にやりたいことが分からない人が利用する。実際は自分の力と現実とのギャップの大きい発達障がいの人の利用が多い。教育課程は、「くらし」「労働」「余暇」「教養」「研究ゼミ」の5領域。専攻科には文部科学省が定める学習指導要領がないため、2年間のカリキュラムの中で社会生活力プログラム(中央法規)を入れていくようにしている。朝の健康の授業もマラソンではなく、卒業後も楽しみながら続けられるように、ウォーキングやジョギングを取り入れている。運動後はティータイムをしながら、新聞を活用していろいろな話題提供を行っている。卒業後仕事で失敗することよりも、人間関係で失敗することの方が多い。職場では他愛のないような世間話ができるようになることが必要。昼食は自分たちで作ったり、出前をとったり、専攻科の卒業生が就労している大学生協に食べに行く。
 一期生の中には電車が好きで、JRに就職したかった学生がいた。しかし、JRでの実習を通して、自分の思っていたような仕事内容と違っていたため、電車は趣味にして大学生協に就職した。声優を目指していた女性が、声優の専門学校での実習を通して現実を知り、仕事と趣味が異なることを学ぶことができた。卒業後の生活では、一人暮らしをするためには10万円程度の収入が必要なので、年金の不足分を就労収入で補わなければならない。夢をつぶすのではなく、夢は大切にしながら、現実的な選択を自らの意志で行っていかなければならない。

【ビデオ】
・ 栄養士の指導で、賞味期限を確認することや、冷蔵庫の残り物で調理をするサバイバル給食の取り組みを紹介。
・ ホームルームで学生が主体となって、バザーで8名の人数で4つの模擬店を出すためにどうすればよいか話し合う。開店時間を遅らす、バイトを雇う、複数の店で協力をするなどの意見を出し合い、質問をしたり皆を説得しようと努力する様子を紹介。
 
 このように専攻科では先輩が自分のモデルになるため、2年生から1年生への引き継ぎが行われる1年生の3学期に、急に成長することが多い。専攻科生は私服通学ができ、検定に受かれば自転車通学も可能であり、本科生のあこがれとなる。何か問題が起これば、専攻科内で話し合って解決をしていく。専攻科ができる前も、がんばって実習や就労に取り組んでいたが、離職率も高かった。仕事ができても、お金をどう使って良いか、余暇をどう過ごして良いか分からない人が多かった。専攻科の目標を、自分で考えて自分で行動できると共に、「適切な援助を求められる」ことにした。行事も原則現地集合現地解散とすることで、社会生活に必要なスキルを身につけることができる。ジョギングのために自分で選んでシューズやウェアを買ったり、ジョギングを楽しむために音楽を聴きながら走るなど、体力づくり以外のスキルを身につけることが大切。
専攻科では縦に伸びるのではなく、横に広げることができると考えている。専攻科に進学しても、福祉就労を企業就労にすることは難しい。離転職をなくすこともできないが、離転職を本人にとってプラスに変えることを目指す。青年期とは、体は大人だが、仕事をすることを猶予され、考える力を身につける期間。自分のイメージを、体験を通して修正する期間。学校から社会へ、子どもから大人へという二重の移行支援が必要。
 青年期教育は多様であるべきであり、専攻科を作ることで進学という選択肢が広がる。大学の付属養護学校なら、教育委員会の管轄外であるため、比較的専攻科を設立しやすい。短期大学や専修学校に障害青年のコースを作る。NPO法人や自立支援法を活用する。青年学級やオープンカレッジの開催など、滋賀で多様な青年教育の道が拓かれることを切望します。韓国にはほとんどの養護学校に専攻科がある。

【質疑応答】
Q:娘が高等部1年生、重度の自閉症。鳥取大学の専攻科にはあまり重度の人はいないようだが。
A:全国には様々な専攻科がある。重度の人を対象とした専攻科もあり、マカトン法やサイン言語を積極的に取り入れているところもある。自閉症の人の場合は、思春期バランスの乗り越えが課題であり、その後の教育効果が高いといわれている。鳥取大学の場合は作業所もあるので、定員の関係でどうしても知的には高い人が多くなっている。

Q:専攻科には指導要領がないということだが。
A:職業専攻科には資格取得のために必要なカリキュラムがあるが、現在ある普通科専攻科にはない。しかし、「運転免許を取りたい」「ヘルパー資格を取りたい」などの要望にも応えられる用意もしている。無理だと思われることでも実際に体験することで、自分で選択することが大切。自分の持っている力と認識とのギャップをどう埋めるか。発達障害の人の場合はそのもつれをどう解きほぐすかが大切。

Q:現実的には一般高校にも多くの発達障害の人が通っている。専攻科はどうしても内部進学が中心になるのか。
A:鳥取大学専攻科の場合は、県外からの利用も可能だが、現実的にはグループホームを利用しながら、週末は帰宅するのが望ましい。しかし、内部進学者ばかりになると、集団として変化がなくなる。建設の予算的には、大学の付属養護学校ならば大学の予算内でできるが、県立なら県の予算承認が必要。滋賀県で県立の専攻科ができれば、全国初となる。さすが、糸賀さんの滋賀県といわれるだろう。

Q:専攻科の運営形態は様々だが。
A:専攻科は高等部と同じなので、設立すれば公的補助は出るし、就学奨励費の利用も可能。見晴台は今春から専攻科のみ自立支援法の就労支援事業とした。教育委員会は知事部局からは独立しているので、知事が積極的でも教育委員会が動かないようなら、障害部局から県立学校の多目的利用について、教育委員会に申し入れることも可能。方法はいろいろあると思う。       以上
                               (記録)2009年11月9日 森本 創

専攻科滋賀の会では、今後もこのような学習会を行って行きます。次回予定に関しては全専研全国大会終了後12月中旬にお知らせできる予定です。

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【↓↓下段活動報告もご参照下さいませ↓↓】
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