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一番好きな夕陽といえばやはり子供の頃、故郷・深谷の小川の土手を自転車を走らせながら毎日眺めていた真っ赤な夕焼けだ。きっと世界のどこもかなうまい。その夕陽にはいろいろな心象がこびりついている。
中国で夕焼けのことを晩霞(ワンシャ)という。その音の響きといい、文字の並びといい、どこかロマンチックで、広大な大陸的雰囲気を持ち合わせていて、好きな言葉だ。そこに歴史的舞台が重なり合えば晩霞の印象はさらに強くなり、ながく心に残る。晩霞の中を西を目指す隊商の列、胡姫が胡酒を振舞い始める古の晩霞の長安の町角・・・。
なかでも最も印象的な晩霞は、捲土重来の地・烏江亭の高台から眺めた晩霞だ。その西の地は後に虞美人草が生えてきた垓下の地だ。四面楚歌は夜の帳が背景だろう。それでも覇王別姫のもつイメージには夕焼けが重なる。
虞や虞やなんじを奈何せん。
項羽の絶句も晩霞が似合う。
照沼一人 写真:天山北路、夕陽に染まる五彩城