BLOG夜半亭

「HP夜半亭」などのトピックス的記事

早野巴人の世界(その十)

2004-10-11 11:33:41 | 巴人関係
早野巴人の世界(その十) ○ 風薫る家に入間の里の馬鹿  この巴人の句には、「京なりける人の許(もと)にまねかれて」の前書きが付与されている。この前書きを頼りにして、文字通りに解釈すると、「かって京都に住んでいた人に招かれて、その人の家を訪問しましたが、その家は初夏の風薫るように爽やかなのですが、その家の主は狂言『入間川』に出てくるよう、逆さ言葉を使い、どこか、その狂言の『入間の里の馬鹿』う . . . 本文を読む

早野巴人の世界(その九)

2004-10-11 11:22:07 | 巴人関係
(その九) 早野巴人の世界(その九) ○ 晋化去りぬにほひ残りて花の雲  嵐雪 ○ 玄峰居士匂ひのこりて花の雲   宋阿(巴人) ○ 花の雲三重にかさねて雲の峰   蕪村  この三句は、蕪村の「宋阿の文に添ふる辞」からの抜粋である。宋阿は早野巴人の晩年の号。掲出の句の「晋化」は「晋子」の号を持つ「其角」のこと。「玄峰居士」は晩年の禅に傾倒した「嵐雪」のこと。この嵐雪の句は、其角の「白雲や花 . . . 本文を読む

早野巴人の世界(その八)

2004-10-11 11:17:21 | 巴人関係
(早野巴人の世界(その八) ○ 広庭に淋しくまはる一葉かな  季語は「一葉」(ひとは)で秋。句意は「広い庭を風に吹かれるままに、大きな桐の一葉が、淋しそうに走り回っている」。巴人の句としては数少ない叙景句の一つである。巴人には、時に、比喩句などの技巧的な句ではなく、掲出句のような客観写生的な句を見ることができる。  そして、こういう句が、巴人を俳諧の師とした蕪村が、より多く、後に、自分のものに . . . 本文を読む

早野巴人の世界(その七)

2004-10-11 11:13:47 | 巴人関係
早野巴人の世界(その七) ○ 落(おち)鮎や水に酔(よひ)たる息づかひ  この句には「落鮎」との前書きがある。巴人の故里の栃木県那須郡烏山町の那珂川河畔に巴人句碑として、この句が建立されている。詩人の草野心平の書によるものである。しかし、詩人・心平が巴人のこの句を選句したのではなく、烏山町は俳句の盛んな所で、その長老格の人が選句して、書をよくした心平にその揮毫をお願いしたというのが、その真相 . . . 本文を読む

早野巴人の世界(その六)

2004-10-11 11:07:11 | 巴人関係
早野巴人の世界(その六) ○ 夏川や流れるもののみなうつくしき  高井几董編著『続明烏』の中の巴人の句である(「夏川の流れるものの」の「の」は原本は反復記号)。巴人の句は、その十三回忌に編纂された、砂岡雁宕らの『夜半亭発句帖』所収の二百八十七句が、現在、主として、巴人の句として、鑑賞されるのが通常である。そして、この句は、その『夜半亭発句帖』に収録されてはいず、ひっそりと、『続明烏』(その三 . . . 本文を読む

早野巴人の世界(その五)

2004-10-11 10:58:22 | 巴人関係
○ 鳴(なき)ながら川飛(とぶ)蝉の日影かな  巴人の代表作の一つであろう。この句については、夜半亭二世・蕪村が夜半亭一世・巴人とその高弟の一人である夜半亭三世となる高井几董の父・几圭の画像を描き、そして、夜半亭三世・几董の賛によるものが、几董編著の『其雪影』に収録されている。巴人像というのは、唯一、この蕪村の描くものという貴重なものであろう。この句については、明治時代の子規以降で、論の人として . . . 本文を読む

早野巴人の世界(その四)

2004-10-11 10:52:06 | 巴人関係
早野巴人の世界(その四) ○ 炭窯や鹿の見て居る夕煙 巴人の『夜半亭発句帖』の中の一句である。この句には「炭」という前書きが付与されている。秋の「鹿」の句というよりも、冬の「炭窯」(『夜半亭発句帖』では「窯」は異体字)の句ということになる。 この句について、ドナルド・キーン氏が次のような英文・訳を付して、その著「日本文学の歴史8(近世篇2)」で紹介している。    The charcoal . . . 本文を読む

早野巴人の世界(その三)

2004-10-11 10:49:54 | 巴人関係
早野巴人の世界(その三) ○ 星を見るなら夕暮の海 この巴人の句は、五・七・五の発句(俳句)ではなく、七・七 の十四音字の、連句の付け句の「短句」のそれである。 この句は、元文四年(一七三九)の『俳諧 桃桜』の中の、 嵐雪追善の「右」の巻に所収されている。その「名残の裏」の 四句目のものである。その前後の句と併せて記載すると次の とおりである。   白髪迄かせきわたりの黒羽折    星を見る . . . 本文を読む