日本時代の台湾人、年代的にいえば、大正から昭和10年くらいまでに生まれ、現在80歳を超える人達だが、共通しているのは日本好きという点だ。
植民地時代の生まれであり、日本人から、日本語で教育を受けたからといってしまえば、それまでだが、この日本好きの傾向は教育程度が高い男性に共通しているように思える。
陳啓民さんも日本大好きの台湾人の一人で、私は囲碁を通して陳さんに出会った。陳さんは囲碁が好きで、台北の復興南路にある囲碁クラブでよく対局しているという。80歳というが、その堂々たる体格は年齢からすれば並はずれている。身長は、180cm位、体重は90kg位ありそうで、大柄な李登輝と並んでも遜色はないだろう。
昭和10年の生まれとすれば、10歳までは日本語の教育を受けていたわけだから、日本語が流暢なのはわかるが、陳さんは、源氏物語や平家物語などの古典をはじめとして、海音寺潮五郎や司馬遼太郎の歴史小説まで読みこなすというから、たいへんな語学力なのだ。
しかし、陳さんが受けた日本語教育は、1945年日本の敗戦、つまり陳さんが10歳の時点で、終わっている訳だから、源氏物語を読むような高い日本語能力はどのようにして身につけたのだろうか。是非とも聞いてみたいところだ。
1945年、台湾は中華民国に返還され、陳さんを含む多くの子供たちは、中国語を学ばなければならなくなった。
外来政権が日本から中華民国に代わり、話す言葉も変わる中で、おそらく陳さんは大変な努力をしながら、台湾大学を卒業しているが、中国語で学位をとりながら、日本語の研鑽も忘れなかったのだろう。
李登輝が日本好きなのは有名だが、陳啓民さんを見ていると、李登輝の日本好きは決して珍しいことではなく、大正から昭和にかけて生まれた台湾人に共通した特徴ではないだろうか。
次に逢う機会があれば、どうして日本が好きなのか、聞いてみたい。
以上