士林官邸公園は、台北市街の北部にあり、中山北路5段と福林路60号が交差する角にある。梅や桜で有名な「陽明山」や「故宮博物館」にも近い。この公園は、蒋介石が生前執務した宿舎とその庭を、没後公園として一般開放したもので、入場無料だ。
市街地の中にできたオアシスのような庭園で、日本の新宿御苑と趣が似ている。庭園の中央には大王椰子や常緑樹の並木道があり、その一角にはうっそうとした林に囲まれた池がある。
それにしても中国人ツアー客が多い。記念写真を撮りながら煙草を吸い、大声で話し、マナーが悪い。あたかも、動物園に珍しい動物を見に来た小学生のようだ。かつての敵のリーダーがどのような生活をしていたのか見てみたいのだろう。
確か新宿御苑は禁煙だったと思うが、この庭園も禁煙にすればいいのにと思いながら、マイクを片手に説明している中国人ツアーガイドの話に耳を傾ける。彼によれば、この庭園には伝統的な中国風味はないと言っていた。
それはそうだろう、古い中国から抜け出すために、西洋式の近代的な軍隊をつくり、ついでに古い奥さんも捨てて、親米派で英語の流暢な奥さん(宋美齢のこと)をもらったくらいだから、自分の家の庭をつくるにしても、伝統的な中国風味などくそ喰らえだったに違いない。
それにしても煙草の臭いが気になる。蒋介石の善悪は別として、歴史的な公園なのだから、多少は敬意を表してもらうように、煙草は禁止にしたらどうだろうか。
庭園には梅の木も多い。梅は台湾の「国花」だが、その梅に囲まれた中にバラ園がある。中央に噴水、確かに西洋風味であり、何となく女性を感じさせるが、宋美齢の好みだろうか。因みに、宋美齢は、2003年にニューヨークで亡くなっている、106歳だった。
庭園の入口の脇に大きな車庫があり、黒塗りのキャデラックが展示されていた。案内には、宋美齢の乗用車であり、1988年式、黒、乗員7人と書いてあった。
士林公園を散歩して感じたのは、蒋介石の権力の大きさだった。軍人あがりだが、歴代王朝の例にもれず、近代的な「皇帝」になったのであろう。
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