最近問題になっている尖閣諸島と竹島の領有問題について、結論的にいえば、韓国が実効支配をしている竹島については、どうにもなりませんが、日本人が所有している尖閣諸島については、国が早期に買収して実効支配を強め、中国に対しては一歩も譲歩してはならないということでしょう。
この点は、日本の政治家の意見は一致しているようですが、一つ気になるのは石原都知事の息子さんの石原伸晃さんが気になる発言をしていることです。伸晃さんはいま自民党の総裁選に立候補していますが、その意見は、尖閣諸島について中国が難癖をつけてくるのは、国の買取問題について事前に中国に対して、きちんと説明をしていなかったからだというのです。つまり、事前に説明していれば、こんな問題は起きなかったというのですが、これは伸晃さんの認識不足であり、日本人の常識で中国人を理解しようとする間違いなのです。
たとえばの話ですが、日本では自分の家を建て替える場合などは、隣家に対してタオルなどをもっていって、建て替え工事をするのでよろしくなどと挨拶するのが常識ですが、中国ではそんなことはしません。もし、そんなことをしたら境界に何か問題があるかもしれないからだと勘繰られるのが関の山です。中国や台湾では、自分の土地に何をしようと挨拶などは不要です。伸晃さんが、事前に説明していれば、中国政府が「はい、わかりました。」とでも言うと考えているのでしたら、この人の外交能力は極めて貧弱というしかありません。
さて、はなしを本題にもどしますが、台湾は尖閣諸島についてどう考えているのでしょうか。現在与党の国民党はの馬総統は、「尖閣に対する主権を堅持し、漁業権を保護し、平和的処理するように。」と指示して、台湾の主権を主張しています。その主権とは、清国から全土を受け継いだ中華民国の領土の一部だというのです。蒋介石などは、台湾に来た当初、真剣に大陸奪還を考えていたようですから無理もない話です。
この尖閣問題について、たいへん印象に残った意見が、李登輝元総統の台湾北部の大学での講演でした。この講演で、中国の留学生の質問に対して、尖閣諸島は「日本領」であると主張し会場は騒然となったと新聞記事は報告していました。
李登輝の主張は、「尖閣諸島が中国ものなら、台湾も中国ものになってしまう。」発想が原点にあります。したがって、国民党が主張するように、尖閣は台湾のものだともいいません。あえて、尖閣は日本という第三国のものだということより、台湾の独自性を保とうとした極めて政治的な判断だといえます。
台湾海峡をはさむ両岸の未来についての質問にたいして、李登輝は「台湾は中国ものではなく、未来の民主化のモデルにして、自由と民主主義について学んでほしい。」と結んだといいます。
柔軟な思考で発想を転換して、尖閣諸島の領有について判断した李元総統の英断に敬服しています。 以上