林檎日記

わたしです

不思議な人

2005-11-22 23:40:07 | 認知症にまつわる話
 それは、うちの施設にいる利用者Fさん。、、、私じゃないよ。
 この人、どうやって生きてきたんだろうと思う。こんなんじゃ、生きて来れないよね、普通。不思議です。
 すっごい性格悪いんだけど、半端なく性格悪いんだけど、それがどうも、認知症だからってわけじゃあないらしんだよ。認知症になって、分からなくなって性格が悪くなっているようにはたから見える人はいるよね、よく。あのねー。
 
ずっと怒鳴ってます。相当うるさい。まさにだみごえです。時にはつねります。叩きます。刃物が近くにあったら間違いなく流血するね。起きたとたんに怒鳴り始めるよ。
「母親はどこいったの?!!」
「あの女、家にいたことなんかないよ!」
「遊びにいってるんだね!!」
「何もないじゃないのよ!!」
「こんな熱いお茶飲めないわよ!!」
「こんな冷たいお茶だして、殺す気なの?!!!」
「ごはんは?ご飯がないじゃない?」
「何もんなのよ?このばばあ、でてけ!!」
「いいね、あんたたちは偉いんだよ!!いいね!偉いね!王様なんだ!」
「こんなかたいごはん食べれるわけないでしょ!!」
「嫁さんはどこいったのよ!」
「あんな女、ぶち殺してやる!」
「こんなにさむいのよ!!どうする気よ!!」
「はやくしなさいよ!」
「病人ほっといてとんだもない人だね!でていきなさいよ!!」

ひどいもんです。ほんとに「!!!」って感じで怒鳴ってんのよ。相当痴呆も進んでいるので、時代も色々かわるし、私たちも使用人だったり、職場の人になったりするし、場所も実家になったり、息子の家になったり、会社になったりなんだけど。だから、怒る内容も、自分の家に知らない人が住んでいることに対する怒りや、仕事のできない使用人に対するものや、いるはずなのにいない人たちへの怒りとか、仕事のできない職員に対するものとか、、、。、、、。だから、痴呆の要因が全くないわけではないんだけど、、、、。でもね、怒るまでもない事で怒ってんじゃん?そんなんで怒ってたら、世の中渡っていけないよ?、、、。でも、渡ってきたんだよ。、、、。それが不思議でならないよー
 息子さんや、お嫁さんや、お姉さんの話では、どうも子供の頃から、ずーっと、そんな性格だったらしいのよ。
 お姉さんが言うにはね、あんな性格なので、友達なんてできないでしょ。でも、お姉さんが友達と出かけるのも気に食わないの。そこでお姉さんについていって、そのおかげでお姉さんの周りからも友達がいなくなっていくという、、、。かわいそうに、、、。
 お嫁さんはずっと怒鳴られていたそうです。ほんと、ひどいよ、、、。多分、いま、私たちが怒鳴られている感じで怒鳴られていたんだろうね。相当ひどいよ。
 今は、精神安定の薬もつかってるけどさあ、痴呆になる前はそういうわけにもいかないだろうから、もっとひどかったかもよ?今みたいにうそをついてごまかす事もできないしさあ。
 それこそ不思議なのは、お嫁さん。あんなに、あんなにひどい姑の世話を、よくみるよー。えらいよー。週に一回必ず会いにくるしさあ。にこにこにこにこ接してさあ。こんな施設に預けちゃったら、会いにこなくてもいいのにね。息子だけくればいんだよね。偉いなあ。なんであんなに偉いんだろ。すごいなあ。
 
 ふつうさあ、こんなに長く生きてきてさあ、仕事もしてるし、結婚もしてるし、性格矯正されるでしょ?多少。だってそうじゃなきゃ生きてこれなくない?あんなんじゃ。どうなの?不思議だ、、、。

 でも、面白くてかわいいんだよ。ま、認知症のなせるわざ。
しゃもじ持って「もしもーし」って喋ってたり、ふくろうのマスコット人形手にとって電話番号押していたり、おせんべいを手に紐で結び付けて時計にしたり、、、。(全部本気です。)ほんと、笑いが止まらないくらいおかしくてかわいい。これがなかったら、Fさんの介護なんてやってらんないな。