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浅はかなYouTuber
秋篠宮の長女・眞子さま(29)と小室圭さん(29)の婚約問題が、国民的議論に発展しているのは、ご存知の通りだ。
***
ネット上でも、お二人の結婚に反対する声は多い。“破談”を願う過激な意見も目立つ。そんな“ネット世論”を考える際、Twitterが調査対象になることが一般的だ。
一言で“小室問題”というが、その内情は【1】小室さん自身の問題、【2】母親の小室佳代さんの問題、【3】親子の問題──大きく3つに分けられる。
例えば、金銭トラブルは母親である小室佳代さんの問題だ。A4サイズで28枚の文書を発表したものの、世論の総スカンを食らったのは小室圭さんの問題、という具合だ。
試しにTwitterで、【1】から【3】までの単語を入力して検索をかけてみよう。それぞれ2つのツイートを選び、その一部をご紹介する。
「【1】小室圭」で検索
《眞子様にはやはり似つかわしく無い人だという事が判明しました》
《小室圭さんも眞子さまも税金泥棒だと思われても仕方ないでしょ》
「【2】小室佳代」で検索
《小室佳代もやっぱりおかしな奴だよ。つくづくそう思う》
《小室佳代さんの老後の生活も、眞子様と小室圭さん経由で、皇室利用で扶養することになります》
5種類の動画
YouTube「田村淳の休日」より
「【3】小室親子」で検索
《はやく身を引いてくれ!小室親子》
《秋篠宮家と小室親子は 国民への説明責任を果たすべき。この結婚には反対です》
いずれの意見も、決して目新しいものではない。つまり、ごく当たり前の声がTwitterに投稿されていることが分かるわけだ。
だがネット世論に詳しい人でも、YouTubeにおける小室問題の状況を調べたことは少ないかもしれない。
YouTubeの公式サイトに「小室圭」、「小室佳代」、「小室親子」といった言葉を入力すると、どうなるのだろうか。ネットに詳しいライターが解説する。
「再生数などに応じ、大きく分けて5種類の動画が表示されます。1種類目は、NHKや民放キー局といったテレビ局、あるいは新聞社などが作成した動画です。記者会見の様子などを伝えるもので、内容にも全く問題がなく、再生回数も多い動画であることは言うまでもありません」
2種類目の動画は、YouTubeの公式チャンネルを持つ著名人の見解が収録された動画だ。ロンドンブーツ1号2号の田村淳(47)や、脳科学者の茂木健一郎氏(58)といった人々が小室問題について見解を述べている。6月27日現在、任意の1本を調べてみると、前者の再生回数は約9万2000回、後者は約16万8000回だ。
“小室バブル”
「3種類目の動画は、顔や名前を明らかにしてはいるが、知名度の低いYouTuberが、単に報道を朗読するタイプのものです。『週刊誌には、こんなことが書いてありました』という内容です。本当に新聞や雑誌、ネットメディアの記事を紹介するだけで、YouTuberの見解すら示されるない動画もあります。ところが、10万を超える再生回数が記録されている場合もあります」(同・担当記者)
例えば、元銀行員を名乗る男性のYouTube公式チャンネルがある。小室問題に関する動画を相当数配信しているが、そのほとんどは週刊誌やネットニュースの報道を紹介しているだけだ。
その他の動画は、銀行員のリストラや住宅ローンの問題など、自身の専門を活かしたものが多い。
興味深いのは再生回数だ。元銀行員という職歴を活かした動画は数千から1万台という再生回数が大半を占める。
ところが、小室さんや小室佳代さんの問題を取り上げた動画は1万を超えることが多い。それどころか、場合によっては10万台に達することがある。
過激化する動画
「YouTubeで“小室バブル”が起きていることがよく分かります。それだけ世間は小室さん親子に関心が高いということでしょう。YouTuberが小室親子について言及すれば、再生回数が伸びるのです。しかも独自取材を行わず、単に週刊誌の記事を朗読するだけで再生回数を稼げるのです。まさに“濡れ手に粟”です」(同・担当記者)
ただ、こうしたYouTuberは他の動画でも数万台の再生回数を記録しているのは事実だ。数千台という低い再生回数に悩んでいるYouTuberは更に過激化し、世間の耳目を集めようと懸命だ。
「4種類目が、いわゆる“底辺”のYouTuberです。こちらは何をやっても再生回数が少ないタイプと、小室動画だけは再生回数が伸びたタイプと、2種類に分かれます。例えば、小室佳代さんの周囲で自殺が相次いだことを指摘し、『自殺がこんなに連続するはずがない』と主張する動画は一定の再生数を獲得しています」(同・担当記者)
他に再生回数が多いのは、小室佳代さんが遺族年金を詐取した疑いがあるとする内容の動画だ。週刊文春の報道が“出典”なのは言うまでもない。
最後の一線
「一方、もともと再生数の少ないYouTuberは荒唐無稽な主張を繰り広げることもあります。例えば、あるYouTuberは、小室さんのファッションが広域暴力団の組長のセンスに似ていると主張しています。他のYouTuberは冷静な口調で小室さんの身体的特徴を罵倒する動画を配信しています。さすがに眉をひそめる内容で、再生回数も低迷しています」(同・担当記者)
5種類目は名前や顔を公開していないものだ。動画ではイラストや合成音声を使用し、小室親子についての誹謗中傷を垂れ流している。
顔を出しているYouTuberの動画と内容の差はないかもしれないが、より卑劣であることは言うまでもない。この記事では紹介は控えさせていただく。
ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「小室さん親子を巡る真面目な国民的議論と、こうした動画は分けて考える必要があります」と指摘する。
「小室さん親子に問題があるのは言うまでもありません。結婚に反対する世論が多いのも頷けます。そしてYouTubeを含むネット上の罵詈雑言に溜飲を下げる人もいるかもしれませんが、やはり最後は一線を引くべきでしょう」
訴訟の可能性
小室問題でいたずらに極端な主張を垂れ流すYouTuberには、「名誉毀損」というリスクがつきまとう。
「こうしたYouTuberはネット上の言論しか見ていません。Twitterなどで小室親子の非難が多いことを認識し、『これなら炎上しない』と判断しているのです。いわばネット世論の尻馬に乗って、あることないこと乱暴な言説を動画化していると言えます。その内容は小室さん親子が名誉毀損で訴訟を起こしたなら、簡単に勝訴できるものばかりです」(同・井上氏)
実際のところ、小室さん親子が一部のYouTuberに「訴訟を起こすぞ」と警告する可能性は低くないという。
「小室さんがニューヨーク州の司法試験に合格すれば、晴れて法曹家の一員になります。今のところは眞子さまと結婚する男性として、自重を必要とする立場だったと思います。しかし、法律のプロとなれば、自分に対する酷い言論に対して行動を起こさなければ、法曹家としての見識が問われるとも言えます。日本の法曹関係者に協力を仰ぎ、配信者を特定して内容証明を送るというシナリオは荒唐無稽なものではないでしょう」(同・井上氏)
もちろん、小室さんが法的措置を警告すれば、世論が反発する可能性はある。
健全なバランス感覚
「小室さんは正直に言って、世間から総スカンを食らっています。いわば、失うものは何もないわけです。捨て身になってYouTuberに警告を発すれば、『この問題だけは小室さんを支持する』という人も出てくると思います。それが2割や3割に達するだけでも、むしろ小室さんにとってはプラスになります」(同・井上氏)
いくら小室親子に問題があると言っても、名誉毀損はよくない。それが健全なバランス感覚だ。
「無名でお金のない会社の作った商品でも、ネットで拡散すれば大きな宣伝効果を得られます。これはネットの良いところです。一方、発言力を認められていない人の罵詈雑言が拡散してしまうのはネットの悪いところです。とはいえ、どちらも本質は同じで、まさに表裏一体です。だからこそ私たちは“良識”を大切にする必要があります。『小室さん親子は確かに問題だけど、この動画はやっぱりよくない』と指摘することは重要です」(同・井上氏)
デイリー新潮取材班
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よく眠れない、体がだるいなど、夏は疲れを感じがち。原因のひとつに「睡眠の質の低下」があるようです。誰でもぐっすり眠る方法を専門医・白濱龍太郎さんに聞きました(構成=島田ゆかり イラスト=石川ともこ)
質のよい眠りの3つの条件
現代人の睡眠の質は昔に比べると驚くほど低下しています。その原因は、夜になっても活動が続く生活リズムや、長時間スマートフォンやパソコンを使用しているライフスタイル。これらはよい睡眠を阻害するものです。加えて夏は寝苦しく、よく眠れないという人も多いでしょう。疲れが取れないと感じるのも当然といえます。
そもそも睡眠の役割は、昼間に活動した脳と体がオーバーヒートしないように、脳の温度を下げ、細胞を修復することにあります。また、寝ている間に脳に溜まった老廃物「アミロイドβタンパク質」や体内の疲労物質を排出する役割も。しかし、睡眠時間が短くて深く眠れない場合、これらの排出がうまくいかず、目覚めても疲労感が消えないというわけです。逆にいうと、ぐっすり眠れば、疲労感もスッキリとなくなります。
よい睡眠の条件は、3つあります。まず、「自律神経」である交感神経(覚醒)と副交感神経(リラックス)のスイッチが夜にしっかり切り替わること。本来ならば、夕方以降、自然と副交感神経優位に変わることで眠りに入りますが、遅くまで仕事をしたり出かけたりする生活習慣から交感神経優位のまま夜を迎えることになると、睡眠の質が低下します。夜はできるだけリラックスして過ごすよう心掛けましょう。
次に、「メラトニン」という睡眠を誘発するホルモンがきちんと分泌されること。メラトニンは朝起きて光を浴びると約14時間後に分泌され、眠気を誘発します。しかし、スマホやパソコンのディスプレイ、お店のLED照明などが発するブルーライトにより、分泌が抑制されてしまうのです。夜に光を浴びると、よい睡眠の妨げになります。
3つめは、眠るタイミングで「深部体温」がぐっと下がること。深部体温とは内臓など体の内部の体温で、よく眠れない人は深部体温のコントロールがうまくできていない可能性があります。これもメラトニンの分泌に関係しますが、生活習慣を見直したり、寝る前のストレッチなどで改善できます。
次に「よい眠り」のための常識チェックをしてみましょう。
「よい眠り」の常識チェック
朝食を食べると、睡眠の質がアップする
答え ○
大豆製品や卵、乳製品、バナナなどに含まれるトリプトファンを摂取すると体内でセロトニンに変化し、14~15時間後に眠りに不可欠なホルモン「メラトニン」に変わります。しかしメラトニンの産生は加齢により減少するため、朝食で補うことが重要。また、噛む行為も自律神経を整え、睡眠の質を上げてくれます。
冷え性の人は寝るときも靴下を穿くほうがいい
答え ×
よい眠りには深部体温の低下が不可欠です。靴下を穿いたまま寝ると体内の熱が放散されず、体温が下がりにくくなるので、冷え性の人でも靴下は脱いで寝ること。寝る前にお風呂で体を温めたり、ストレッチを行えば冷えは改善できます。
寝室は遮光カーテンがよい
答え △
夜でも外からの明かりが入る寝室の場合は遮光カーテンをつけましょう。光を浴びると睡眠の質が低下します。ただし、朝はカーテンを開け、たっぷり光を浴びること。夜に外がさほど明るくない部屋なら、遮光する必要はありません。
布団に入ると毎日バタンキュー。 だから寝つきはいい
答え ×
「寝つきがいい」=「よく眠れている」は勘違い。理想は布団に入ってから20分くらいでスーッと眠る状態です。バタンキューで眠ってしまうのは脳が気絶しているのに近く、睡眠負債がたまっている証拠。その後に続く睡眠の質もよいとはいえません。
週末に「寝だめ」すれば睡眠時間は十分
答え △
睡眠不足は寝だめで取り戻せます。ただし、平日の睡眠時間が5時間なら週末は7時間にするなど、平均的な睡眠時間+2時間程度にしましょう。体内時計の睡眠リズムが崩れないようにするためです。なお、未来の睡眠を先取りする寝だめはできません。
カフェインは寝つきが悪くなる
答え △
午後3時にコーヒーを飲んだら夜に眠れないという人もいれば、寝る前に日本茶を飲んでも眠れる人もいて、カフェインが睡眠に与える影響には個人差があります。ただし、カフェインは睡眠の質を低下させるため、夜にカフェインを摂る習慣があってよく眠れない、眠りが浅いと感じている場合は、夜8時以降の摂取を控えてみましょう。
エアコンはつけたまま朝まで眠る
答え ○
夏に疲れやすいのは、夜の寝苦しさによる睡眠不足にも原因があります。暑さを我慢して眠れないよりも、エアコンをつけて布団をかけて眠ることをおすすめします。ただし、女性は筋肉量が少ないため男性よりも寒さを感じやすく、睡眠中は深部体温が1℃ほど下がるので、設定温度は昼間よりもやや高めにしましょう。
昼寝は健康にもいい
答え ○
昼間に眠気を感じたり、夕飯後にうたた寝をしてしまう人は午後3時までに30分程度昼寝をするのがおすすめです。脳が休息でき、その後にスッキリとして、夜の睡眠も魔しません。ただし、布団など寝心地がいい場所ではなく机でうつぶせになるなど、目が覚めやすい環境で寝るようにしましょう。
寝る前のスマホは×だけど、テレビなら○
答え ×
どちらも×。液晶テレビもブルーライトを発しており、寝る前のテレビも睡眠を妨げることがわかっています。交感神経を覚醒させるブルーライトを浴びてよいのは夜8時まで。それ以降は、副交感神経優位にするため明かりは暗めにして、リラックスして過ごしましょう。
白濱龍太郎
睡眠専門医
RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長。
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人生でこんなにエロ本を見たのは初めてだった
普段、私は「エロ本」を目にする機会はない。ところが、独身男性が住むゴミ部屋を片付けていると、必ずといっていいほど目にする。10冊程度であればまだ理解できるが、数えきれないほど出てくる家が少なくない。今月片付けた50代男性の住むゴミ屋敷では、ざっと1万冊以上のさまざまな本があり、その5分の1、つまり2000冊程度が成人向け雑誌、いわゆる「エロ本」だった。たぶん人生でこんなにエロ本を見たのは初めてだ。
運び出しの様子。50代男性の住むゴミ屋敷では、1万冊以上の本があり、そのうち2000冊程度がエロ本だった。
「こんな家に住んでいると、人は死にます」はこちら
石見「たしかに男性のゴミ部屋には多くのエロ本が存在しますね。ゴミ部屋という閉ざされた空間で、イメージだけが膨れ上がり、多く購入しているのかもしれません。恋愛の機会がないのですから、そのような視覚に訴えるものに頼らざるを得ないんでしょう」
その50代男性宅にあるエロ本のほとんどは、“しばられた女性”が表紙を飾っていた。彼はおだやかな雰囲気で、部屋の整理について尋ねる私の質問にも、ていねいに答えてくれた。女性をしばるような乱暴さは感じられない。
他人には見られたくない“宝の山”をどうするか
石見「しばる系のエロ本が多いのも、ゴミ部屋の住人にはよくあるケースです。ゴミ部屋の整理で、亡くなった方ではなく生きている男性が依頼者である場合、ナヨナヨしているといいますか、性格的には“気の弱い人”が多い印象です」
石見良教さんの現場での様子
気が弱くても、あれだけ大量の本を購入する「所有欲」はすさまじい。
現代ではネット配信が主流で、今後大量のエロ本が出てくるゴミ屋敷は少なくなるだろう。ただ、エロ本に限らず、他人には見られたくない“宝の山”を持つ人は多い。私も今、自分が突然死したらと考えると、誰の目にも触れてほしくないものがいくつかある。周囲が認識する私のイメージと一致しないからだ。けれど自分にとっては大切な物だから、それを今すぐ処分することはできない。
「幼い頃に描いた思い出の絵」は処分できない
ある孤独死現場で、亡くなった家主の男性が書いたと思われる「好きだった女性への恨み文」を見つけた。作業を見守る男性の母親にとても見せられなかった。息子が他人を恨み、孤独の中で死んだであろうこの文書を見せることは、気丈に明るく振る舞う高齢の母親に、苦しみしか与えない。
撮影=笹井恵里子
50代男性宅のキッチン。複数の包丁があった。
私がそう振り返ると、石見さんが「反対に家族に知らせてあげたほうがいいケース」を紹介してくれた。
石見「若くして離婚し、その後一人暮らしをしていた男性が孤独死したんです。離れて暮らす元妻と子供からの整理依頼で、過去の嫌な思いしかなかったのでしょう。『あの人は死んでよかった』『物はすべて処分してください』と言う。けれどもわれわれが整理をすると、幼い頃の子供が描いた思い出の絵が大切に保存してある。
そういう時、私は手紙を書くんです。『あなたはすべてを処分してくださいと言いましたが、私にはできませんでした。それは最後まであなたのことをお父さんは思っていたと感じたからです』と記して、その物と一緒に送る。すると大抵の人は、気持ちが変わります」
それを聞いて、“遺品整理人”の仕事が少しわかった気がした。
故人や依頼人の心をつかまなければ「整理」にならない
そもそも遺品整理とは、亡くなった人(故人)の持ち物の整理を行うこと。最近は依頼のうちゴミ部屋化した家、それも孤独死現場が多いから、「整理=ゴミ部屋、あるいは孤独死現場の清掃」という構図だが、本来の仕事は“掃除”ではない。
石見「物の整理は簡単にできるんですよ。でも、最終的に整理してあげたいのは、残された家族の“心の整理”なんです。だから現場で故人の思いを読み取るようにしています。窓からの風景を見て、目の前に桜が咲いていればこの角度に座って見ていたんだろうな、ここで酒でも飲んでいたんだろうなとか、イメージを展開させていく。想像力を働かせ、故人や依頼人の心をつかまなければ本当の整理をしたことにならない」
50代男性宅のキッチン
石見「ゴミ山になるのも孤独死してしまうのも、どこかに原因があるはずです。だから現場に入ると、なぜこの人は孤独死してしまったんだろう、逃れる術はなかったんだろうかといつも考えますね。
殺人現場も印象に残ります。母親が育児に疲れて子供を殺めた事件や、子供が両親を殺害した現場の特殊清掃(遺体でダメージを受けた室内の原状回復をする作業)を行ったことがあるんです。殺人はナイフのケースが多いので、あたり一面に血がばーっと飛び散る。その拭き取りをしていると、むなしさを感じます。『なぜ』『どうして』という言葉で頭の中がいっぱいに……」
一戸建てのゴミ部屋で、居住者は孤独死していた
一つひとつの現場、特に精神的に負担がかかる現場ほど、作業完了とともに忘れるようにしていると、石見さんは言う。
石見「われわれの作業は職人作業と同じで、一つの現場には作品の意味合いもあります。自分の中で仕事が完結していれば終わりにできる。しかし悪い現場ほど記憶に残ってしまう」
50代男性宅のキッチン。ゴミに埋まって使えなくなっていた。
石見「ある一戸建てのゴミ部屋整理で、後悔したことがあります。家主が生存していて、本人の依頼で始まった作業だったのですが、1階部分の整理が完了したところで2階はしなくてもいい、と言われました。2階には大量のゴミが残っていましたが、本人がOKを出してくれなければ作業を進められないのでやむなく手を引きました。
しばらくして、近くの民生委員さんが見守り活動の一環で声をかけると、その家から返事がない。なんとその人は、室内で孤独死していたんです。民生委員さんは責任を感じて仕事を辞めてしまいますし、われわれももっといろんな職種の人たちを巻き込んで、本人を説得し、ゴミ部屋を片付ければよかったと反省しました」
生前整理であれば、生活を再建できる可能性がある
昨年末、私が関わった現場でも、生活再建への道のりがついていない状態で、ゴミ部屋整理の作業を終えることがあり、とてもつらかった。いくら本人が「これでいい」と言っても、これでは人間としての生活が保証されないのではないか、と思った。
孤独死現場では「遺品整理」しかできないが、生前整理であればゴミ部屋に住む人の生活を再建できる可能性がある。だから生前整理の依頼があること、その仕事に関われることには、希望を感じる。
石見「そう。『生前整理』は将来の自分のために整理を行うことですし、それから高齢者が住みやすいように環境を整える『福祉住環境整理』も、まさに生き続けるための片付けといえるでしょう。ですから生前整理や福祉住環境整理を行う際に、『このままでは孤独死します』というようなゴミ部屋を見たら、『このままではまずいから物を捨てよう』と本気で説得します。うちの作業員でも遠慮がちに言うことがありますが、それではダメです。ゴミ部屋化してしまう人は孤独に生きているから、話しかけられると案外うれしいものなんですよ」
「これはあなたが亡くなったら、ただのゴミだよ」
遺品整理であれば、その人の生活に思いをはせ、処分するものと誰かのために残すものを分ける。しかし生前整理の場合、誰のために残せばいいのか。ゴミ部屋には、例えば「レシートの束」や「賞味期限切れの食品」など、物としての価値はないが、当人にとってはこだわりのあるものが数多ある。
整理のために入室しようとする石見良教さん(撮影=笹井恵里子)
石見「私ははっきりと断言しますよ。『これはあなたが亡くなったら、ただのゴミだよ』と。いくら大切に保管してもなんの意味もない、今処分したほうがいいと話します。それでも『処分したくない』と言う人も多いですね。その時は、『じゃあ死ぬまで抱えといていいけど、あなたが亡くなった後に俺がここに来たら処分するからね』と言います。するとハハハと笑って、『いいわよー』と返されるのがオチですが。
でも、これだけは言えます。生前、介護、死後でいうと、死後の整理が一番大変。ですから元気なうちに、身の回りの物の整理を少しでも進めてほしい。エロ本のような“見られたくないもの”があって、自分の死後に見られて恥ずかしいと思うなら、やはり健常なうちに自分の手で始末するしかない。50歳を超えたら考えたほうがいいでしょう」
石見さんのもとには、これまで「自分が亡くなったら遺品整理をしてほしい」という依頼がおよそ70件あったという。中でも依頼して1カ月後に死亡してしまった60歳女性の事例が、興味深い。
下記は東洋経済オンラインからの借用(コピー)です
改正育休法が成立するなど、男性の育児参加への環境が整備されつつある今。しかし、共働き家庭の多くは、見えない問題を抱えている。本稿では、理想の家族像を追い求めた1人の男性のインタビューを紹介。熱心な「イクメン」だった彼の家庭は、なぜ崩壊したか。外からは見えづらい「モラハラ」の実態とはどうなっているのか?
20 年あまりに及び男性の生きづらさを取材してきた著者が、男性社会の変化に迫った書籍『捨てられる男たち』より、「モラハラ」のパートを抜粋、再構成してお届けする。
妻からのDVは「僕がモラハラ夫だったから」
2020年の年末、4年ぶりの取材にオンラインで応じてくれた田中徹さん(仮名、47歳)は青ざめてうなだれ、込み上げる感情を必死にこらえながら、たどたどしい口調で語り始めた。
「じ、実は……DV(ドメスティック・バイオレンス)、なん、です……」
「奥さんに手を上げた、ということですか?」
「いえ……そ、そのー、逆で……。妻から……暴力を、受けてしまいまして……」
この間に何があったのか。尋ねた質問に対し、そう答えているときも、うつむいたまま、いっさい視線を合わせることなく、おびえたような表情を見せているのがパソコン画面からもはっきりとわかった。
コロナ禍でのDV増加が指摘されるかなり前から、妻から夫へのDV事例を、もはや“逆DV”という言葉は通用しないほど数多く取材していた。DV被害者の男性は、加害者にも増して、惨めさや情けなさを内に秘めているケースが多い。慎重に言葉を選ばなくてはと言い聞かせ、質問する。
「どうして、そのようなことになってしまったと思われますか?」
顔面のこわばりが弱まったのを見計らって、尋ねてみた。
「僕がモラハラ夫だった、からです……」
まったく予期せぬ答えだった。動揺を隠し切れた自信はない。
「えっ、モラハラ……つまり、モラルハラスメントということですか?」
「そのとおり、です」
そう言うと、田中さんは突如として顔を上げ、説明を始めた。田中さんはどのようにして、“モラハラ夫”と化してしまったのか。20年近くに及ぶ定点取材から彼の人生の一端をたどることで、その背景や妻との複雑怪奇な心理戦、対人的相互作用について解明してみたい。
田中さんとの出会いは、2002年にさかのぼる。当時、男性の育休取得率は0.33%と1%にも満たず、「イクメン」という言葉・概念が登場する5年以上前。自治体の男女共同参画センターが主催した、当時としては先駆的な取り組みである「父親講座」を取材した時のことだった。
翌年、田中さんは30歳で男児の父親になった。田中さんが参加するパパサークルの活動も波に乗っているようにみえたのだが、2006年のインタビューで田中さんは眉をひそめ、本音を打ち明けてくれた。
「みんな、わが子の子育ての楽しさや充実感を語る一方で、悩みや愚痴などネガティブな部分は努めて話さないようにしているようで……。もともと僕自身、父親としての不安や戸惑いなどを一緒に乗り越えていきたいと思っていたんですが……やっぱり、男同士というのはなかなか難しいものですね」
妻に認めてもらうための”仮面イクメン”
それからというもの、田中さんの父親としての苦悩は増す一方だった。主任に昇格して仕事量が増えたため、帰宅時刻は以前よりも遅くなっているという。次第に父親としての悩みの要因は、単に保育所に通う長男とともに過ごす時間が十分に取れないことだけではないように思えてきた。
複雑な心情を語ってくれたのは2009年のこと。当時36歳の田中さんは、視線を取材場所のコーヒーショップのテーブル上に落としたまま、淡々とした表情でこう打ち明けた。
「僕は、イクメンのふりをしているだけなんです」──。
田中さんはそう言ったきり、言葉を続ける気配はない。どうインタビューを展開していけばいいのか、考えを巡らせていたそのとき、彼が静かに語り始めた。
「父親として息子の成長を見守り、子育てを楽しみたいという思いとともに、家事・育児を分担して仕事を頑張っている妻を応援したいとも考えてきました。ただ……妻が、仕事で能力を、発揮して、頑張れば頑張るほど……そのー、何というか……」
沈黙が再び訪れる。育児そのものよりも、自身の仕事も含めた、妻との関係が影響しているのではないかと直感した。
「奥さんの仕事での活躍と、ご自身を比較されて、ということなのでしょうか?」
「そうですね。僕はたくさんの仕事をこなして会社に貢献しても、上司からは何の評価もされない。同期の中には実績を上げ、課長に昇進した奴もいるんです。妻は……以前のように僕に仕事の愚痴をこぼして、アドバイスを求めるようなこともなくなった。もう僕を頼る必要がなくなったんですね」
「でも、それがどうして、イクメンのふりをすることになってしまったのですか?」
「僕の男としての価値、父親としての存在を妻に認めてほしかった。妻は僕が仕事でパッとしないのはわかっていますから……せめて、イクメンを演じるというか、育児を楽しむ父親の仮面をかぶることで……」
だが、田中さんは実際に育児に積極的に関わり、妻の負担を軽減し、仕事に打ち込みやすい環境をつくってきたはずだ。なぜ、“仮面イクメン”を続けなければならないのか。
「妻のほうが子どもと接する時間は長いし、息子も懐いています。でも、それは僕のせいじゃない。会社が女性の仕事と育児の両立には理解があっても、男性が子育てのために仕事を早く切り上げたりすることにはまだまだ厳しいからなんです。でも、妻はそんなことはわかっちゃいない。僕には子育てへの関与を感謝するどころか、『もっと(子育てに)協力して』が口癖です。だから、そのー……今、はやりのイクメンを頑張っている、少なくとも努力している、と妻には受け止めてもらいたかったんです」
ここまで言い終えると、口をつけていなかったコップの水を一気に飲み干した。
夫婦の溝がなおいっそう深まり、やがて危機的な状況を迎えることになろうとは、そのとき、田中さん自身も思っていなかったのではないだろうか。
妻の出世で敗北感を感じた
女性活躍推進法が成立、一部施行された2015年、田中さんの妻は40歳で課長に昇進した。同期入社の男性から2、3年遅れはしたものの、子育てと両立させながら管理職ポストに就くことを諦めずに地道に努力を重ね、実績を上げてきたことが評価されての昇進だった。
「妻に負けた、という敗北感が、妻の課長昇進によって僕の中で決定的になったんです。妻のほうが僕よりも仕事の能力があるということには、10年以上前から気づいていたんですが、実際に出世を見せつけられてしまうと……。僕だって育児に関わらずに仕事に専念していたら、今よりはもっと仕事で評価されたんじゃないかと思うと悔しいですし、実際に出世街道を歩んでいたら子供の世話をする余裕なんてなかったわけですから。それに──、あっ、いや……」
田中さんは何か重要なことを打ち明けようとして、言葉をのみ込んだように見えた。苦渋の表情を浮かべたまま、どこを見るともなく見て視線が定まらない。
「妻のせいで、家庭が心休まる場ではなくなってしまった。とくに(妻が)課長になってからはそうなんです。妻とは必要最低限のことしか話さないし、体の触れ合いなんてとっくの昔に終えています。中学に入学したばかりの息子とは結託しているようで、僕の悪口でもたたき込んでいるのか、息子は僕が話しかけても返事さえしないような状態で……。彼女にとって家庭は、息子の学校生活と進路のことだけ考えていれば、あとはいかに家事も含めて効率的に処理するかという、職場のようになっているんです」
夫婦の溝を埋める手立てはないのか、という問いに、こう語気を強めて即答する田中さんの表情からはむなしさのようなものが感じられた。
「ないですね。残念ながら、今はまったく考えられないです」
在宅勤務でたまった怒りが夫へのDVに
妻からのDVと、妻へのモラハラを打ち明けてくれた、本章冒頭の2020年末のインタビュー場面はこの2016年の取材の後、音信不通の期間を挟んで、続く。夫婦の間に深刻な出来事があり、実はイクメンでもよき夫でもないのだと告白し終えた田中さんは、ほんのつかの間、妻に精神的な苦痛を与えた重荷から解放されたかのようにため息まじりに深く息を吐いた。
妻からのDVは、2020年春、コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出され、ほとんどの社員が在宅勤務となっていた時期に起こった。妻はこの前年の2019年に部次長に昇進、田中さんは2018年に課長になったばかりだった。突然、リビングの棚に立て掛けてあった家族写真や、テーブルの上の飲みかけの缶ビールなどを投げつけたり、冷蔵庫の中から持ち出した飲料水の入ったままのペットボトルで田中さんの腕や背中を殴ったりしたという。
投げられた物が後頭部にぶつかって出血し、5針縫うけがを負ったことまである。妻は、いったんは事の重大さに気づいて病院に付き添ったりしてくれるのだが、しばらくしてまた暴力を振るう、という繰り返しが1カ月近く続いたらしい。妻は自身の判断で仕事を続けながら精神科のクリニックを受診、半年以上過ぎた今も月に2回通い、精神安定剤などの投薬治療を受けているという。
「夫婦が顔を合わせる時間が格段に増え、妻はたまった私への怒りを暴力で訴えるしかなかったのではないか」と田中さんは考えている。
妻によるDVのきっかけが、自分が“モラハラ夫”だったためというが、モラハラは無自覚のうちに行為に至るケースが多い。どの時点で妻への行為がモラハラであったと認識したのか。
「妻からDVの理由が僕のモラハラであったと、はっきりと指摘されたわけではありません。ただ……DVが治まってから妻に、僕の『冷たい態度や言葉がとてもつらかった』と言われて初めて自覚したというか……。正直、いつからだったかは覚えていないのですが、妻が課長になった頃だとすると、もう5年になりますからね。妻から受けたDVの期間の数十倍もの長い時間、彼女は僕のモラハラに苦しんでいたんです」
つらい出来事を思い出させるようで心苦しかったが、聞いておかねばならない。
「具体的にどのような言葉や態度だったか、覚えている範囲で教えてもらえますか?」
「前にお伝えしていたとおり、妻とはほとんど面と向かって話はしていなかったんですが、つぶやいたり、妻の後ろから小さい声で言葉を吐き捨てたり、それから時々にらみつけていたんじゃないでしょうか。今メモを見ながら、背筋がゾクッとしました」
〈夫婦じゃなくて、男2人みたいだな〉
〈役員からも気に入られて、同期の男たちはお手上げだろうな〉──。
生気のない顔で、田中さんはメモしてきた言葉を平坦な口調で読み上げた。
モラハラを自覚した衝撃
2020年末の取材以来、田中さんの妻には話を聞きたい旨、彼を通してお願いしてきたのだが、21年春、電話での取材を了承してもらった。ご本人の承諾を得て、内容の一部を紹介する。
「私たち夫婦はともに仕事も家庭も頑張ってきたんですが、どこかでボタンを掛け違えてしまったように思います。それは、女性の管理職登用や男性の育児参加を促す社会の動きも影響していたのかもしれませんね。(略)息子ももう高校3年生になりましたし、これからは夫婦2人の時間も大切にできればと思っています」
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感情の表出を抑えた澄んだ声が最後のほうでかすかに震え、余韻がしばらく耳に残った。
時代とともに変容する夫婦の関係性・ありようは、モラハラをいっそう複雑化させ、深刻度を増している。アメリカの社会学者、アーリー・ホックシールドは、フルタイムで働く女性が増えて共働き家庭が浸透する過程において、家庭と職場の逆転現象が起きていると指摘する。すなわち、夫婦ともに疲れ果て、家庭では仕事を処理するかのように効率的に時間を使い、職場は家庭の面倒なことから逃避する安息の場となっているというわけだ。
田中家の一件は、理想の夫と父親、そしてよき妻と子どもを追い求めすぎたために、行き着いた惨劇ともいえるだろう。男は一家の大黒柱として妻子を養い、家族の精神的支柱であるといった伝統的な「男らしさ」規範から逸脱した“落伍者”としての自分を認めたくない。それゆえにおう悩し、隘路(あいろ)にはまってゆくのである。
奥田 祥子 : 近畿大学教授、ジャーナリスト
下記はデイリー新潮オンラインからの借用(コピー)です
皇位継承策を巡る白熱した議論の末、ついに「有識者会議」のヒアリングが終了した。だが、女性・女系天皇は封印され、女性宮家創設についても手詰まり感が禁じえない。その背景には、皇統を揺るがせた古(いにしえ)の怪僧・道鏡(どうきょう)に擬せられる、小室圭さんの存在があった。
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日本が世界に誇る皇室の将来を占う会議でも、眞子さまの“婚約内定者”は暗い影を落としている。
さる6月7日、政府の「有識者会議」は計21人の識者に対するヒアリングを終えた。上皇さまの生前退位を実現させた皇室典範特例法が成立したのは2017年6月のこと。今回の有識者会議は、特例法の附帯決議にある通り〈安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について〉速やかに検討を行うために設置された。政府は今回のヒアリング内容を精査し、次期衆院選後に国会へ報告する見通しだ。
中世日本史が専門で、『天皇はなぜ生き残ったか』などの著書がある東京大学史料編纂所の本郷和人教授は次のように語る。
眞子さま(他の写真を見る)
「皇位継承について考える際には、タテとヨコのどちらに重きを置くかで答えは大きく変わってきます。歴史的事実に基づくタテの視点に立てば、天皇は成人男子が望ましいと考えられてきたのは間違いありません。一方、ヨコの視点、つまりは同時代的な潮流からすると、男女平等という考え方のもとで女性・女系天皇や女系継承もあって然るべきではないかとなるわけです。これは歴史家が是非を論ずるべきものではなく、それぞれの時代に生きる国民がどう考えるかという類の問題だと思います」
7日に行われた5回目のヒアリングには、「若い世代や一般の感覚の声を聞きたい」との意向から、芥川賞作家の綿矢りささん、気象予報士の半井小絵(なからいさえ)さん、漫画家の里中満智子さんといった皇室や歴史の専門家以外の顔ぶれが集まった。まさに“ヨコ”の意見を尊重した人選と言えるだろう。
全国紙デスクによれば、
「意外だったのは、女性・女系天皇の是非や女性宮家の創設という論点について、3名の女性メンバーの意見が予想以上に消極的だったことです」
主だった見解を並べるだけでもそうした傾向は窺える。綿矢さんは〈女性天皇の誕生を歓迎する風潮もあるかと思う〉としつつ、女系天皇に関しては〈伝統を重んじる観点から、慎重に取り扱う必要があると考えられる〉。また、半井さんは〈(皇位継承資格の)女系への拡大は日本を混乱させる原因となり許容できない〉〈皇位継承資格を持つ内親王・女王が結婚された場合は、従来通り皇籍を離脱すべきである〉と断じている。
「私は過去に開かれたすべての有識者会議でヒアリングに参加していますが、小泉政権下や野田政権下と違い、今回は“アウェー感”を全く覚えませんでした」
そう振り返るのは、麗澤大学教授の八木秀次氏だ。
「私が訴えてきた男系男子による継承を頭ごなしに否定する方はおらず、旧宮家の皇籍復帰についても議論の俎上に載せられていました。それどころか、専門外のメンバーからも男系継承に肯定的な声が上がっていた。世論は確実に変化していると感じました。やはり、小室圭さんの存在が世論に与えた衝撃は計り知れないものがあったのでしょう」
“コムロ前”と“コムロ後”で、国民世論は劇的に変化していたのである。
「眞子さまと小室さんのご結婚を巡るトラブルが顕在化したことで、期せずして女系継承の問題点が浮き彫りになりました。一般の方々も小室さんのような方が皇室に関わることは望ましくないと感じているはずです。この問題が長期化すれば皇室への敬愛が大いに損なわれかねない、と。小室さんの登場で国民が女系継承に具体的なイメージを抱けるようになり、それが皇位継承に関する議論にも少なからず影響を与えているのだと思います」(同)
八木氏には、ある歴史上の人物と小室さんが重なって見えるという。その人物とは、皇統を揺るがす大事件を起こした怪僧だった。
即位を目論んだ怪憎
初孫の行く末を憂慮されるご夫妻(他の写真を見る)
実は、先のヒアリングで、里中満智子さんは次のような見解を示した。
〈女性皇族が結婚なさってその夫も皇族となれば、権威を得る手段として女性皇族を利用する男性が出現しないとは限らない――という、いささか古めいた心配だが、長い歴史の中ではそのような不安は現実となりそうな事例もあった〉
この見解は女性宮家創設に関する懸念を指摘したに過ぎない。だが、歴史をひもとけば、こうした“事例”は確かに存在するのだ。
「その最たる例として想起されるのが“道鏡事件”です」(八木氏)
事の発端は奈良時代にまで遡る。事件の渦中にいたのは、聖武天皇の娘・孝謙天皇(重祚(ちょうそ)して称徳天皇)と、その寵愛を受けた僧の弓削(ゆげの)道鏡である。
聖武天皇といえば、その治世で災害や天然痘などの疫病が頻発し、東大寺の大仏を建立する詔(みことのり)を出したことで知られる。聖武天皇が光明皇后との間に儲けた皇男子は夭逝し、その結果、娘の孝謙天皇が即位することになる。
皇室の歴史を振り返ると、女性天皇は10代8方を数えるが、ほとんどは男系の男性天皇に皇位継承されるまでの中継ぎ的な役割を果たした。実際、女性の皇太子も、皇太子を経て即位した女性天皇も、孝謙天皇をおいて他に例がない。
そんな孝謙天皇が病に臥した折、禅師として看病に当たったのが道鏡だった。
先の本郷氏が解説する。
「孝謙天皇は道鏡を重用するようになり、太政(だじょう)大臣禅師、さらに法王へと引き上げました。加えて、全国の八幡宮の総本社である宇佐八幡宮から“道鏡を天皇にすれば天下は泰平になる”との神託がもたらされ、道鏡が皇位に就きそうになった。ただ、和気清麻呂(わけのきよまろ)が勅使となって宇佐八幡宮に派遣され、〈わが国は開闢(かいびゃく)このかた、君臣のこと定まれり。臣をもて君とする、いまだこれあらず〉という神託を持ち帰り、先の神託を否定したことで道鏡の即位は阻止されたのです。あくまで私見ですが、“道鏡事件”は皇位継承に当たって大きなトラウマになったのではないでしょうか。女性天皇が即位して同様の事態に陥ることを当時の人々が危惧した可能性は否定できません。事実、道鏡事件以降は、江戸時代に明正天皇が即位するまで、実に約850年間にわたって女性天皇は現れませんでした」
閨房で道鏡を溺愛し、他の臣下の言葉に耳を貸さなくなってしまったという孝謙天皇。思惑をもって女性天皇に近づいた道鏡の野望を打ち砕き、皇統を護った忠臣である和気清麻呂は功績を讃えられ、その銅像は、皇居平川門近くの大手壕端に建立されている。
令和の皇室に前代未聞の混乱をもたらす小室さんの姿は、畏(おそ)れ多くも即位を目論んだ奈良時代の怪僧を呼び起こした。両者を重ね合わせる声が上がったとしても無理はあるまい。
仮に、眞子さまが女性宮家の当主となられ、小室さんと結婚されれば「圭殿下」が誕生することになる。場合によっては、おふたりの間に生まれたお子さまが皇位継承権を有し、小室さんが天皇の父親になる可能性も否定できない。だが、奇しくも小室さんに起因するトラブルによって、女性・女系天皇ばかりか、女性宮家創設の機運も潰(つい)えつつある。
国論を二分しかねない
先のデスクが続ける。
「有識者会議のヒアリングに参加したメンバーからも、“小室さんの問題が片付かない限り、皇室制度について冷静な議論は望めない。小室さんの存在が頭を過る状況では国民的な理解を得ることも難しい”という声が聞こえてきます。すでに有識者会議は、現在の男系男子に限定した皇位継承順位を維持することを確認し、女性・女系への継承資格拡大は見送る方針を固めている。また、菅総理は皇室の在り方への思い入れが乏しく、官邸内には“悠仁さままでは決まっているのだから、先々のことは次世代の人が考えればいい”というムードが広がっています」
一方、今後も議論が続く女性宮家創設案は、上皇さまの強いご意思で進められてきた。昭和天皇の皇統に連なる愛子さま、眞子さま、佳子さまというお三方の内親王までに限定する方向で、皇室内のコンセンサスも得られていたという。しかし、宮内庁関係者によると、
「ここに来て他ならぬ上皇さまに変化が窺えるようになりました。というのも、女性宮家とセットで旧宮家の男性の皇籍復帰が論じられることが増え、そうしたお考えを持ち合わせておられない上皇さまは議論の趨勢を懸念されているのです。他方、美智子さまは、初孫である眞子さまには皇室に残ってご公務に邁進してほしいと願っておられました。しかし、小室さんの一件で世論が沸騰。眞子さまが“第一号”になるはずだった女性宮家創設についても、このまま議論を進めれば国論を二分する事態になりかねないと、上皇ご夫妻は憂慮されるようになったのです」
つい先日、現在の上皇さまのお気持ちを象徴するような出来事があった。美智子さまと共に新型コロナウイルスのワクチン接種を受けられたものの、当初は接種日の公表に消極的でいらしたという。
「インフルエンザのワクチン接種は公表しているのに何故なのか、と記者会と西村泰彦長官との間で押し引きがありました。まだワクチン接種を受けていない国民がいるなかで、皇族が優先されるイメージが広まるのを懸念されたのでしょう。また、一部には強硬な反ワクチン論者もいます。上皇さまはこれ以上、賛否が割れるような争点を作りたくないとお考えになり、あえて接種日を伏せられたようなのです」(同)
上皇・上皇后ご夫妻がワクチンを接種されたからといって、それを咎める声が巻き起こるとは考えづらい。
問題は、上皇さまが皇室に厳しい世論の動向について、これほどまでに過敏になられ、心を砕かれている点にある。背景に“小室さん問題”があるのは言うまでもあるまい。古の怪僧に擬せられる「海の王子」。令和の皇室を舞台にした“第二の道鏡事件”はいまだ収束を見せない。