下記の記事はダイアモンドオンラインからの借用(コピー)です
供給量に不安が残るものの、自治体や職場などで64歳以下のコロナワクチン接種が進んでいる。ワクチン接種を予定している、あるいは検討している人も多いだろう。そこで気になるのは「副反応」である。今回はファイザー、モデルナそれぞれの副反応の特徴や、現状の日本における接種状況の課題、知っておくべき世界の状況について解説する。(ナビタスクリニック理事長、医師 久住英二)
接種後の心筋炎、今後は増える!?
発症は20歳前後の男性が最頻
海外でも報告されていた新型コロナワクチン接種後の「心筋炎」や「心膜炎」(心臓の筋肉や膜に炎症が起きるもの)について、厚労省が国内での発生状況を公表した。
報道によれば、6月27日までの接種で、ファイザー製では約2624万人中19人(100万接種あたり0.72人)に、モデルナ製では約94万人中1人(100万接種あたり1.06人)に、心筋炎・心膜炎の症状が報告されている。うち40歳未満の男性が7人という。
心筋炎といえば、今年3月には俳優の志尊淳さんが発症し、3週間休業したことも話題となった。仕事や学業、そして家族のためにも接種を受けたいと思っていた働き盛りの若い男性にとって、気がかりなポイントだろう。
米国疾病対策センター(CDC) の最新の報告では、接種後の心筋炎・心膜炎は、ファイザーとモデルナおしなべて100万接種あたり12.6人に発生。いずれも10代後半~20代(最頻は20歳前後)の男性、2回目接種から2日前後(~4日)に多く見られ、男性が女性の8倍以上となっている。
データからも分かるように国内での発生率は、現時点では米国より大幅に低くなっている。ただ今後、若者への接種が進めば、発生率は米国に近づく可能性がある。国内でこれまでに2回接種が完了しているのは、64歳以下の合計でわずか66.4万人(内閣官房、7月7日時点)。接種後に心筋炎・心膜炎を発症しやすい10~20代にいたっては、微々たるものだからだ。
それでも、ワクチン接種を受けるメリットを脅かすことにはならないだろう。米国CDCによれば、6月11日までに心筋炎や心膜炎の症状が確認された患者323人のうち、309人が入院後すでに退院しており、9人が入院中、14人は入院もしていなかった。
国内で接種後に胸の痛みや呼吸困難、脈拍の乱れを感じた場合は、すぐに受診していただきたい。接種後に発症した場合にも、迅速に適切な治療を受けられれば、大事には至らずに済むはずだ。
接種後に起こる副反応
ファイザーとモデルナで差はあるのか?
徐々に国内の世代の接種も進みつつある中で、「ファイザーとモデルナの違いが気になる」という声も聞く。
両方とも同じmRNAワクチンだ。どちらも発症と感染をそれぞれ90%以上予防し※、さまざまな変異株でも有効性が確認されつつある。心筋炎を含む安全性も、世界保健機関(WHO)の国際諮問委員会(GACVS)のお墨付きだ。
※2回接種の場合。1回接種でもある程度免疫はつくが、『Nature』誌によれば、インドから広まったデルタ株では2回完了しないと効果が期待できない。遅れてでも2回目の接種を受けてほしい。
副反応に関しては、どちらのワクチンでも重篤なものは非常にまれだが、細かく見れば頻度に多少の違いはある。
心筋炎・心膜炎だと、米国ではモデルナ接種者の方が高率で発生している。2回目接種後、ファイザーは100万接種当たり8人、モデルナは19.8人だ。国内でも、発生頻度はモデルナがやや高い。
さらに、「モデルナ・アーム」という症状を聞いたことがあるかもしれない。モデルナ製ワクチンでまれに、接種部位の腫れがやや長びくものだ。接種から1週間以上たって腫れてきて、多くは4~5日(長いと3週間)で自然に治まる。
およそ1万5000人に接種が行われた臨床試験(プラセボを含めると参加者3万人超)では、初回接種後に244人、2回目接種後に68人にモデルナ・アームが認められた。他の報告を複数見ても圧倒的に女性に多いが、入院が必要なほどの症例はない。
他方、アナフィラキシーの発生率はファイザーが上回る。
アナフィラキシーは、mRNAワクチンに含まれる成分への強いアレルギー反応で、接種後15分前後で全身のかゆみ、じんましん、動悸(どうき)や血圧低下などが表れる。米国では、ファイザーは100万接種当たり11.1例、モデルナでは2.5例と、約4倍の差が見られた。
国内では、メーカーおよび医療機関からの報告を厚労省の審議会が評価したところ(7月7日)、ファイザーは100万接種に7件、モデルナは100万接種に1件の割合だった。
接種にあたっては、過去に薬物アレルギーの経験がある人は当日、医師に伝えてほしい。また、万が一の場合も応急処置の準備はあり、念のために救急車で病院に行くとしても命に関わることはない。
上記のようにファイザーとモデルナで起こる副反応の症状や、発生率に多少の違いはあるものの、いずれも重篤な症状はまれであることに変わりはなく、接種に際してそれぞれの差は懸念されるべきことではないといえるだろう。
副反応は大なり小なり出るもの
市販の頭痛薬でしのげる
ただし大前提として、万人に対し副反応ゼロということはあり得ない。体に異物を入れる以上、それを排除しようとする免疫システム発動の結果が副反応だから、ごく軽微なものは想定しておく必要がある。
初回接種では、接種した部位辺りが筋肉痛のように痛んだり腫れたりする「局所反応」が中心となる。2回目になるとそれに加え、発熱、頭痛、倦怠(けんたい)感(だるさ)、筋肉痛、関節痛、吐き気、寒気など、「全身症状」が強く出がちだ。
米国CDCの調査によれば、ファイザーもしくはモデルナの接種後、頭痛や倦怠感の訴えが初回接種で4割前後、2回目では6割前後に上った。発熱は、初回だと数~5%程度だが、2回目では2~3割に見られた。
こうした症状の多くは接種当日の夜から始まり、たいてい24時間以内には症状は峠を越し、長くても2~3日で治まる。もしつらい場合も、自宅にある市販の解熱鎮痛剤で十分やわらぐ。タイレノール、イブ、ロキソニン、バファリン、ノーシン…などなど、何でも大丈夫。「アセトアミノフェン」に殺到する必要はない。
初回接種後にこうした全身症状が強く出た人は、念のため2回目接種の翌日の仕事は前もって負担を減らしておくか、可能であれば休みが取れれば安心だ。
ちなみに、接種後に立ちくらみや失神などが起きる場合があるが、通常、これはワクチンの“副反応”ではない。「血管迷走神経反射」と呼ばれ、注射の痛みや緊張、不安などが相まって自律神経のバランスが崩れ、急激な血圧低下の結果生じたものである。
接種前に不安を取り除き、少々の痛みや副反応は甘受するつもりで(個人差も大きいが)、穏やかな気持ちで接種に臨むことで、そうした“有害事象”リスクの回避につながる。
なお、新型コロナワクチンで「不妊になる」「ワクチンのmRNAが細胞のDNAに組み込まれる」といった怪しげなうわさがあるようだが、全くのデマなので安心していただきたい。
接種失速……1日100万回に届かず
供給不足の中、明暗を分けたものとは?
7月13日時点で、日本の接種数は100人あたり45.3回(米国は99.7回、英国は118.3回)で、OECD38カ国中の下から6番目。南米やアジアの平均を下回っており、途上国レベルである(Our World in Dataから)。
しかも、東京オリンピック・パラリンピック開幕まであと1週間だというのに、接種回数は失速しつつある。
先月24日には菅首相が掲げた「1日100万回」の目標達成が発表されたものの、7月に入ってからは1日当たり接種回数が100万回に届かない日が多数。このところは加速度的な減少傾向となっている(内閣官房のデータから)。
大きな原因は供給不足だ。政府は6月23日、自治体向けファイザー製ワクチンおよび大規模集団・職域接種向けモデルナ製ワクチンの供給不足と受け付け停止を明らかにした。その直前21日に職域接種も始まり、わが国でもいよいよ接種加速かと思われた矢先、水を差された格好だ。
多くの自治体が供給への不安を抱え、職域接種は見通しが立たないまま断念するところも出てきた。そうかと思えば、予定通り接種を受けられる人たちもいる。両者の明暗を分けたのは、各自治体あるいは企業の初動の早さと見込みの差だ。
ナビタスクリニックの医師やスタッフは、集団接種や職域接種のお手伝いをしている。その中で私自身、組織によって接種体制に大きな格差があることを目の当たりにしてきた。
集団接種は、自治体ごとのばらつきが見過ごせないほどに大きい印象だ。無理もない。自治体の組織は基本的に、降って湧いたような大規模プロジェクトを短期に組み立てて遂行するようにはできていないからだ。ノウハウも人材も足りない中、手探りから始めたのではどうしても限界がある。
それでも、運営や現場レベルでリーダーシップを執る人物を獲得できた自治体では、すでに未成年者への接種が進んでいるところもある。
職域接種では、企業の組織力が顕著に表れた。率直に言えば、トップから末端までの伝達系統がしっかりしている組織は、意思決定が早く、動きも迅速だ。そこがしっかりしている企業での職域接種は、運営や進行も非常にスムーズだった。
要するに、どこに住んでいるか、どの会社に勤めているかで、ワクチン接種へのアクセスのしやすさが決まってしまうのが、日本のコロナワクチン行政なのだ。
ファイザー、モデルナの信頼性は高い
誤った知識からの「接種忌避」には危機感
ただ、世界全体に目を向ければ、日本で接種を受けられることがいかに恵まれているか、お分かりいただけると思う。
世界では今日までに全人口の約25%が少なくとも1回接種を受けているが、低所得国ではわずか1%にとどまる(Our World in Data、7月13日確認)。しかも、高い有効性と安全性が認められているファイザーとモデルナ、必ずそのどちらかのワクチンの接種を受けられる国はかなり限られている。
英国はモデルナとアストラゼネカの割合が半々で、人口6665万人に対し1億回分ずつ確保されている。米国ではファイザーとモデルナが圧倒的だが、ジョンソンエンドジョンソンの接種も行われている。欧州連合(EU)では契約数ベースでファイザーが24億回分、その下にモデルナ、アストラゼネカ、ジョンソンエンドジョンソンが約4億回分ずつで並んでいる(日本貿易振興機構)。
アジアやアフリカでは状況はさらに違う。中国のシノバックやシノファーム、ロシアのスプートニクVが、「ワクチン外交」としてばらまかれているためだ。
ただ、中国製ワクチンの有効性は揺らいでいる。インドネシアでは接種完了者の間で感染が拡大し、シノバックの接種を受けた医療従事者が6月以降、130人以上死亡。ロシアでも、自国ワクチンの安全性が疑問視されて接種率が上がらないため、多くの地域で接種を義務化せざるを得なかった。
それらに比べれば、ファイザーやモデルナの信頼性は群を抜いている。先の通り重い副反応もごくまれで優劣はつけがたいし、健康な人なら接種を躊躇(ちゅうちょ)する理由にはならない。これは、日頃からさまざまな予防接種を積極的に行っている一臨床医としての実感でもある。
自分や大切な人の健康と命を守る一人ひとりのアクションが、経済や生活を守ることにもつながる。他方、誤った知識や漠然とした不安からの「接種忌避」の増加には、危機感すら覚える。正しい知識の下、ぜひせっかくのチャンスをふいにせず、きっちり接種を受けていただきたい。
(監修/ナビタスクリニック理事長、医師 久住英二)
◎久住英二(くすみ・えいじ)
ナビタスクリニック理事長、内科医師。専門は血液専門医、
予防接種健康被害救済制度
健康被害救済制度とは
予防接種の副反応による健康被害は、極めて稀ですが、不可避的に生ずるものですので、接種に係る過失の有無にかかわらず、予防接種と健康被害との因果関係が認定された方を迅速に救済するものです。
予防接種法に基づく予防接種を受けた方に健康被害が生じた場合、その健康被害が接種を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、市町村により給付が行われます。申請に必要となる手続き等については、予防接種を受けられた市町村にご相談ください。(厚生労働大臣の認定にあたっては、第三者により構成される疾病・障害認定審査会により、因果関係に係る審査が行われます。)
- リーフレット「ご存じですか?予防接種後健康被害救済制度」 [852KB]
【申請から認定・支給までの流れ】
給付の種類
医療費 | かかった医療費の自己負担分 |
医療手当 | 入院通院に必要な諸経費(月単位で支給) |
障害児養育年金(※) | 一定の障害を有する18歳未満の者を養育する者に支給 |
障害年金(※) | 一定の障害を有する18歳以上の者に支給 |
死亡一時金 | 死亡した方の遺族に支給 |
葬祭料 | 死亡した方の葬祭を行う者に支給 |
遺族年金 | 死亡した方が生計維持者の場合、その遺族に支給 |
遺族一時金 | 死亡した方が生計維持者でない場合、その遺族に支給 |
請求書の様式
医療費・医療手当 | 様式 [128KB] | 医療費及び医療手当の請求書の様式 |
---|---|---|
受診証明書 | 証明書(認定前) [88KB] | 初めて医療費及び医療手当を請求する際に必要な受診証明書の様式 |
証明書(認定後) [90KB] | 既に医療費及び医療手当の支給決定を受けている場合に必要な受診証明書の様式 | |
障害児養育年金 | 様式 [127KB] | 障害児養育年金の請求書の様式 |
障害年金 | 様式(A類) [133KB] | 障害年金の請求書の様式(A類疾病(四種混合、麻しん・風しん、日本脳炎、BCG等)) |
様式(B類) [117KB] | 障害年金の請求書の様式(B類疾病(インフルエンザ等)) | |
診断書 | 診断書(A類) [170KB] | 障害児養育年金又は障害年金の請求時に必要な診断書の様式(A類疾病(四種混合、麻しん・風しん、日本脳炎、BCG等)) |
診断書(B類) [170KB] | 障害年金の請求時に必要な診断書の様式(B類疾病(インフルエンザ等)) | |
年金額の変更 | 様式(A類) [100KB] | 障害児養育年金又は障害年金を受けている方について、障害の状態が変わったことによる障害等級変更の請求書の様式(A類疾病(四種混合、麻しん・風しん、日本脳炎、BCG等)) |
様式(B類) [93KB] | 障害年金を受けている方について、障害の状態が変わったことによる障害等級変更の請求書の様式(B類疾病(インフルエンザ等)) | |
死亡一時金 | 様式 [121KB] | 死亡一時金の請求書の様式 |
遺族年金・遺族一時金 | 様式 [133KB] | 遺族年金又は遺族一時金の請求書の様式 |
葬祭料 | 様式(A類) [112KB] | 葬祭料の請求書の様式(A類疾病(四種混合、麻しん・風しん、日本脳炎、BCG等)) |
様式(B類) [111KB] | 葬祭料の請求書の様式(B類疾病(インフルエンザ等) | |
未支給の給付 | 様式 [88KB] | 支給決定されている救済給付(医療費等)について、受給すべき方が亡くなった等の理由により、未支給の状態となっている場合に使用する請求書の様式 |
給付額(令和3年4月現在)
臨時接種及び A類疾病の定期接種 |
B類疾病の定期接種 | |
---|---|---|
医療費 | 健康保険等による給付の額を除いた自己負担分 | A類疾病の額に準ずる |
医療手当 | 通院3日未満 (月額) 35,000円 通院3日以上 (月額) 37,000円 入院8日未満 (月額) 35,000円 入院8日以上 (月額) 37,000円 同一月入通院 (月額) 37,000円 |
A類疾病の額に準ずる |
障害児養育年金 | 1級 (年額) 1,581,600円 2級 (年額) 1,266,000円 |
|
障害年金 | 1級 (年額) 5,056,800円 2級 (年額) 4,045,200円 3級 (年額) 3,034,800円 |
1級 (年額) 2,809,200円 2級 (年額) 2,247,600円 |
死亡した 場合の補償 |
死亡一時金 44,200,000円 | ・生計維持者でない場合 遺族一時金 7,372,800円 ・生計維持者である場合 遺族年金 (年額)2,457,600円 (10年を限度) |
葬祭料 | 212,000円 | A類疾病の額に準ずる |
介護加算 | 1級 (年額) 844,300円 2級 (年額) 562,900円 |
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「ワクチンが危険だと言いたいわけではありません。ただ、私たちの父がワクチンを打った翌日に息を引き取ったこと、そしてその後の警察や行政の対応に翻弄されたのも事実なんです……」
そう語るのは、6月10日に急性の「虚血性心疾患の冠状動脈硬化症」で亡くなった川崎市在住の岡部哲郎さん(仮名、71)の三男だ。哲郎さんは亡くなる前日の6月9日、川崎市の大規模接種会場で1回目のモデルナ製ワクチンの接種を受けていた。新型コロナウイルスのワクチン接種の翌日に亡くなった岡部哲郎さん(仮名・71)の妻と三男
「ワクチンの接種と父の死に関連があるのでは?」という疑念
「ワクチンの接種と父の死に関連があるのではないか?」と遺族は不安に思い、警察もまた哲郎さんの死因について外部の医療機関に委託して、検査を行った。その結果、哲郎さんの死とワクチン接種との間には「関連がない」と結論付けられたが、遺族にはその検査の詳細については知らされなかった。
また、遺族側は「哲郎さんの死因を調べた検査結果」が厚労省の「ワクチンの副作用について検証する」部会で活用されるよう望んだが、担当した医師は当初「報告するケースに当たらない」として、遺族側の要求を拒んだという。哲郎さんの三男は、文春オンラインの取材にこう訴えた。
「多くの人の命を救うワクチンは大事なものだからこそ、ワクチンを打った後に人が亡くなるケースが生じた場合には、それがワクチンの接種と関連があったのかどうか遺族が十分に納得できるまで検査することが必要だと思うんです。そうでないと私たち遺族は何時まで経っても『父はワクチンを打ったから死んだのではないか』という疑念を拭い去ることができません。そういった観点からも、国はもう少し手厚い体制を整えるべきではないでしょうか。残された家族が抱える大きな負担についてもぜひ広く知ってもらいたいです」ワクチンの接種券が届いた時は一緒に喜んだ
『接種した部分の腕が痛いなあ』とずっと言ってた
川崎市内のアパートで暮らす哲郎さんの妻が、哲郎さんが亡くなった当時の状況を語ってくれた。
「6月9日の14時ころ、川崎市が設置している大規模接種会場のNEC玉川ルネッサンスシティホールに夫婦2人で接種に行きました。横に並んでそれぞれワクチンを打ってもらって接種はすぐに終わり、15分様子をみましたが問題はなくそのまま帰ることになりました。主人は『接種した部分の腕が痛いなあ』とずっと言っていましたが、私も痛かったのでそれほど気にはしていませんでした」哲郎さんが接種を受けた川崎市の大規模接種会場 Ⓒ文藝春秋/撮影・宮崎慎之輔
哲郎さんはもともと血圧が高く持病もあり病院にかかっていたが、かかりつけ医からは5月20日に「ワクチンを打つのは問題ない」という診断を受けていたという。しかし、一夜明けても哲郎さんは腕の痛みを訴え続けた。
「翌日になっても、痛みを紛らわすためか趣味の将棋のゲームをずっとやっていました。それでも痛みがおさまらないようで、接種の案内の紙に書かれていた川崎市の問い合わせ先に主人が『湿布でもした方がいいのか』と尋ねる電話をしました。担当の女性は専門家ではなかったようで『後で折り返します』と言われ、主人も電話番号を伝えたのですが、その後今に至るまで折返しの連絡は来ていません。
主人は泡を吹いていて、救急隊が懸命に心臓マッサージを…
昼に主人が好きなアイスの『ガリガリ君』を食べて、夕方には日課の散歩に行きました。その間もずっと『腕が痛い』と言い続けていました。それでも食欲も普段どおりで、夕飯の里芋の煮っころがしとアジの干物も私の分までペロリと食べていました。20時半頃にまたアイスを食べて、寝る前にトイレへ行ったのですが……」
しばらくして妻が部屋を出ると、哲郎さんがトイレの前で仰向けに倒れていたという。哲郎さんが倒れていた廊下
「最初は寝ているのかと思い『こんなところで寝ていたら風邪ひくで』と言ったのですが、反応がない。慌てて隣の家の方にも助けを求めて、救急車を呼んでもらいました。そのときには主人は泡を吹いていて。救急車の中では救急隊の方が懸命に心臓マッサージをしてくれましたが、搬送先の病院で23時43分に死亡が確認されました。あまりにも突然でその時は何も考えられなかったんですが、徐々に『もしかしたら前日に打ったワクチンが原因だったのでは』という思いが大きくなっていったんです」遺族が取り寄せた搬送記録の書類
「一方的に100%と言われても…」
死因を詳しく調べるために、哲郎さんの遺体は11日の未明に神奈川県警が委託する県内の医療機関に移送された。哲郎さんの三男が続ける。
「その日のうちに『死因は心臓によるものです。詳しく検査するため、3~4日後に連絡します』と警察から伝えられました。遺体は葬儀屋さんからすぐに病院に送り返され、医療機関はCTや血液の検査をしたようです。解剖などはありませんでした」
最終的に、検査に当たった医師から死因について電話で説明を受けたのは2週間後の6月25日だった。生前の哲郎さん 絵と旅行が好きだった
「先生から死因は『虚血性心疾患の冠状動脈硬化症』と説明された上で『ワクチンと岡部さんの死亡には100%因果関係がない』と聞かされました。詳しい検査結果も見せてもらえず、ただ一方的に100%と言われても……。もっとできる検査があるのではないかと納得がいかなかったし、せめて直接先生と会って、お話を伺いたいとお願いしました」(哲郎さんの三男)
さらに今度は神奈川県警高津署から連絡があり、哲郎さんの遺族は「岡部さんの死亡事例は厚生労働省に報告されない」という説明を受けたのだという。
新型コロナワクチン接種後に死亡した事例は累計556件
新型コロナのワクチン接種は予防接種法上の公的接種にあたるため、法律に基づき、接種後の副反応が疑われるケースは医療機関から報告され、外部の専門家でつくる厚労省の部会で安全性を検討することになっている。高津署が言う「厚労省への報告」とは、この部会への報告のことを指している。
大手紙社会部でワクチンについて取材する記者が解説する。川崎市の高津警察署
「部会では、安全性を検討することになる『接種後の副反応の疑い』について、『接種による副反応』と『接種と因果関係のない偶発的な事象』のどちらかすぐに判断できないものと定めています。全国から報告される『副反応の疑い』があるケースについては、詳細に調査が行われており、7月7日に開かれた厚労省の部会では、新型コロナワクチン接種後に死亡した事例が累計556件あったと報告されました。
このうち大部分はファイザー社製のワクチンを接種した後に死亡したケースで、5月22日に接種が始まったモデルナ社製のワクチンを打ったあとに死亡したケースは2件のみでした。556件のうち、死亡と接種の因果関係が『認められない』とされたのが7件、現在『評価中』だったのが101件、情報不足などで『評価できない』としたのが451件でした(重複を含む)。また、この報告の中でファイザー社製ワクチンの2回目接種を行った7日後に死亡した80歳の女性について『(死亡が)接種との因果関係が否定できない』と踏み込んだ認定をされたことも注目を集めました」哲郎さんの三男は、今も父の死について調べ続けている
厚生労働省への報告対象にすら入らなかった。
接種の副反応を調べるために「国は接種後に亡くなったケースについてはできるだけ厚労省に報告をあげるよう各医療機関に働きかけている」(同前)という。しかし、哲郎さんの死は「接種後の副反応が疑われる」ケースにすら該当しないと判断されたのだ。
哲郎さんの三男が続ける。
「警察は『報告をあげる基準に達していない』というのですが、肝心の基準が何なのかは教えてもらえませんでした。疑問に感じて調べてみると父と同じ『動脈硬化症』で亡くなった方について厚生労働省に報告され、因果関係が『評価できない』という結果になったケースもありました。接種後に自殺で亡くなった方さえ『接種後の死亡』ということでワクチンの副反応を調べる調査に含まれていたんです。それなのに父のケースが報告されないだなんて、とても納得できませんでした」
7月8日には、高津署で遺族と警察、哲郎さんの遺体を検案した医師とで「話し合い」の場がもたれた。そこで医師は「ワクチンによるアナフィラキシー反応(臓器などにアレルギー反応が出る症状)は確認できておらず、厚労省に報告をあげる必要はない」と再び説明したという。遺族側が「アナフィラキシーではなくても報告されているケースもある」などと説得すると、医師は当初は「医者によって判断は違う」と答えていたが、最後には「遺族がそこまで言うなら」と厚労省に報告することに決まったという。家族に渡された診療記録の一部
「ワクチンの副反応を調べているはずなのに、遺族がお願いしないと報告さえされないのはなぜかと思いました。厚生労働省に報告されたことで、父の死がせめてワクチンの副反応を調べるための何らかの助けになることを望んでいます」(哲郎さんの三男)
1カ月が経った今も遺体を火葬できていない
哲郎さんの家族は、死亡から約1カ月が経過した現在もまだ哲郎さんの遺体を火葬できずにいるという。
「父の死因について、やっぱりまだ納得できない部分がありまして……。死因について詳しく知りたいと思い、警察側が行った(遺体の)検査記録の詳細をもらおうとしたのですが、警察は『先生に聞いてくれ』、医者は『警察に聞いてくれ』とたらい回しにされてしまいました。いま私たちの手元にあるのは、“虚血性心疾患による冠状動脈硬化症”と簡単に死因が書かれた1枚の紙切れだけです。これでは父の体に本当は何があったのかわからない。どのような検査をしてどのような結果だったのか。このまま、警察から記録の詳細がもらえないままだったら、どこか別のところで改めて遺体を調べてもらうしかないのではないか。そう思って父の遺体を未だに火葬できずにいます」亡くなった哲郎さんの思い出を語る妻
哲郎さんの妻が振り返る。
「主人は中学校を卒業してから50年間、大工一筋でした。昭和49年に知人の紹介で知り合って、3人の子供を一緒に育ててきました。喧嘩をすることもありましたし頑固なところもありましたが、本当に優しい人でした……。数年前に大工を引退してからは家の天井まで届くような大きな絵を描いたりして、二科展でも入選したんですよ。自慢の夫でした」哲郎さんの描いた絵。二科展への入選経験もあるという
検証してもらってこそ、父の死も誰かの役に立てる
「ワクチンで救われる命がたくさんあるのも分かります。一方でワクチンに不安を持っている人もいるし、少ない症例かもしれないけれど副反応が強く出る人もいます。だからこそ、国にはしっかりとデータを集めて検証してもらいたいんです。因果関係があったにせよなかったにせよ、検証してもらってこそ、父の死も誰かの役に立てるのではないかと思うんです……」
哲郎さんの三男は最後にこう語ると、静かにため息をついた。
下記は女性自身オンラインからの借用(コピー)です
「1年ほど前には周りの人たちに『さようなら』と別れを告げて、いなくなろうとしていたんです。なかには『ちょっと待ちなさい! 悔しくないの!?』と励ましてくださる方もいました。でも『一生このまま状況が変わらないのなら、もういいかな』って考えるようになってしまって」
この発言の主は、小室圭さんの母・佳代さん。’17年12月に金銭トラブルが報じられて以来、マスコミに対して口を開くことがなかった佳代さんだったが、6月22日発売の『週刊文春WOMAN』に、心情を告白しているのだ。
3年以上も沈黙を続けていた佳代さんだが、約1年にわたり接触し続けたという文春WOMANの記者には心を開いていったのか、冒頭のように度重なる批判報道への心境を吐露したほか、現在の暮らしぶりや圭さんとの親子関係などについても語っている。
ただ、肝心の金銭トラブルについては多くを語っていない。婚約解消の際に元婚約者・X氏から「差し上げたものです」などと返済を求めない旨の言葉があったと話すのみだった。苦しい心情を明かした佳代さんだが、金銭トラブルの当事者でありながら、これまで説明をしてこなかったのは佳代さん自身だった。
そして、X氏は解決金についての交渉に応じる意思を示しており、小室家側の代理人には「佳代さんと直接会って話がしたい」という希望を伝えている。だが、いまだに返事はないというのだ。
この記事についてX氏はどう受け止めているのだろうか。X氏の知人に話を聞くと、
「記事については、彼は何も話すことはないと考えているようです。佳代さんとの話し合いが早いうちにできるようになれば、というのがXさんの願いです。ただ、小室家側からはいまだに何の連絡もありません。佳代さんは長期入院していると聞いていましたが、足の手術が終わって体調がよくなっているというのであれば、早くXさんに会って、忌憚なく意見を交わせばいいと思います。彼は高齢ですし、膠着状態が長引くようなことはしてほしくありません」
元婚約者との面会を2カ月にわたり拒否
佳代さんの発言によれば4月上旬から足の手術で入院していたというが、1カ月弱で退院したという。つまり、それから約2カ月にわたってX氏からの面会要求を拒否している状態なのだ。
佳代さんは、圭さんの結婚を進めるためにも金銭トラブル解決に着手する必要があるのでは――。しかし皇室担当記者は「もはや結婚は確定してしまっている」と語る。
「昨年11月に秋篠宮さまが『結婚を認める』と発言されて、眞子さまと小室さんの結婚は既定路線となりました。秋篠宮ご夫妻も宮内庁もこれ以上の長期化は望んでおらず、金銭トラブルが未解決のまま結婚する可能性も大いにあります。もしそうなれば、世間の関心もしぼみ、解決する必要もなくなる――。そういった希望的観測が背景にあるのかもしれません」
すでに佳代さんの中でこの問題は“終わったこと”であり、会わないことで金銭トラブルの“強制終了”を狙っているのだろうか。
一方で、記事の中では佳代さんの意外な一面も垣間見える。“セレブ志向”が強いとされてきた佳代さんだが、スーパーの野菜売場で「トレビスが三十九円! 安いですね」と思わず口にするなど、庶民的な一面を見せている。
また、息子・圭さんとの“母子密着”といわれてきた関係についても「『マザコン』『教育ママ』だなんて書かれたりもしましたよね。五十年以上生きてきて、初めて言われました」と否定。「十八年に米国留学してからは、それほど連絡は取っていません」といい、なんと4月に公表された金銭トラブルの説明文書も、圭さんから公表日を伝えられていなかったという。
佳代さんはまもなく“元内親王の義母”に
セレブではなく庶民派、母子密着ではなく自立した息子を見守る母――。これまでのイメージを覆すような一面を見せた佳代さん。
だが、X氏が公開したメールで佳代さんは、高級レストランでのディナーや婚約のお披露目にクルージングパーティをねだっていた。また、圭さんの留学前には親子そろって出勤していた。
“セレブ志向”や“母子密着”は報道が作り上げたイメージだと言い切れるのか。ここにきて佳代さんが急激な“キャラ変”を狙っているようにも見えるが――。
「元内親王の義母ともなれば、新年など折に触れて皇室の方々と会うことにもなります。結婚が現実味を帯びてきたことで、佳代さんは“天皇家の親戚”になることを意識し始めたのかもしれません。また、佳代さんが“メディア露出”を解禁したことで、今後さらなる告白があるかもしれません。婚約延期に至るまでの秋篠宮ご夫妻とのやりとりなども、明らかにされる可能性があります。秋篠宮ご夫妻が相当厳しい言葉を小室さん親子に浴びせていてもおかしくありません。ご夫妻はそれらが明かされることを恐れているのではないでしょうか」(宮内庁関係者)
’17年9月、眞子さまとの婚約内定に際して、佳代さんは次の言葉を息子の圭さんに贈っていた。
《主人亡き後、息子は自発的に物事に取り組み、努力を重ね、ご尊敬申し上げる方々からのご指導のもと、人生の要所要所を固定概念にとらわれることなく決断してまいりました》
“母子密着”ではないという佳代さんと圭さんだが、“固定概念”にとらわれないやり方は母子共通なのだろうか。
下記の記事は東洋経済オンラインからの借用(コピー)です
あふれる加工食品、動かない生活、睡眠不足。私たちのからだは、ここ数百年の環境の変化にまだついていけていない。その結果、体重が増え、ストレスを抱え、疲労し、気分がすぐれない日々を送っている――。
ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーとなった『ジーニアス・フーズ』(未邦訳)の著者であるマックス・ルガヴェア氏が、このたび健康的な生活を送るための実践的なガイドブック『ジーニアス・ライフ』を上梓した。本書から、家にある化粧品や薬の「疑わしい物質」について一部を抜粋し、編集してお届けする。
シャンプーや洗顔料に使われているパラベン
私たちの生活に入り込んだ多くの化学物質は、便利で快適な現代生活を可能にしてくれている反面で、思わぬ健康被害をもたらす恐れがある。
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そんな「疑わしい化学物質」の1つが、シャンプーや洗顔料、デオドラント、潤滑油やローションなどに使われ、パック入り食品の保存料としても一般的なパラベンだ。防腐剤のパラベンは、微生物の繁殖を防ぐために使われる。
パラベンは口や皮膚を通して簡単に体内に吸収され、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)として働く。
内分泌攪乱物質は、細胞のホルモン受容体を活性化することでホルモンの作用を模倣し、体内で生成された本来のホルモンの働きを阻害する。
パラベンは、実験動物をがんにし、人間の場合には――直接的な因果関係は証明されていないにしろ――さまざまな種類のがんの発症に“関与”してきた。
たとえば、乳がん患者の腫瘍からは、パラベンが検出されている。だからと言って、パラベンが乳がんの原因だと証明するわけではないが、ホルモンの正常な働きを阻害することから、乳がんの原因が疑われるのももっともだろう。
食事を通して体内に入ったパラベンは、肝臓や腎臓によって“解毒”される仕組みだが、皮膚から吸収されたパラベンは蓄積しやすい。
パラベン入りのクリームを毎日たっぷり皮膚に塗っていれば、口からの摂取と合わせて、習慣的に体内に取り込んでいることになり、かなり懸念される。
しかし、いい知らせもある。パラベン入り製品の使用をやめれば、ほかの内分泌攪乱物質と同様、やがて体外に排出される。今ではパラベンフリーの製品も市場に出回っている。
パラベンの健康被害を防ぐ確実な方法はひとつ――口に入れる気になれないものを、皮膚につけないことだ。
認知障害のリスクが高まる抗コリン薬
不眠やアレルギー、不安、乗り物酔い。これらの治療には抗コリン薬が用いられる。
抗コリン薬は、神経伝達物質であるアセチルコリンが受容体に結合するのを阻害することで作用する。
アセチルコリンには首から下の不随意筋を収縮させる働きがあり、過活動膀胱の原因になるが、いっぽうで学習や記憶に重要な役目を果たす。
抗コリン薬を持続的に服用してその合成が阻害されると、早ければ60日ほどで認知障害が生じる。3年以上という長期の服用者の場合には、認知症の発症リスクが最大54%も増加するという研究もあるようだ。
念頭に置いておきたいのは、強い抗コリン薬は時おり服用するだけでも、急性中毒症状が現れることだ。副作用には、瞳孔散大、発熱、口内乾燥、譫妄(せんもう)と短期の記憶喪失などがある。
抗ヒスタミン薬や睡眠改善薬として使われるジフェンヒドラミン、酔い止め薬のジメンヒドリナート、抗うつ薬のパロキセチンやクエチアピンなどは、強力な抗コリン作用がある。
これらの薬を処方されて服用しているのなら、もっと安全な薬に変えられないか、医師に相談してみよう。
からだの痛みを自己流で治そうとすると、必ず予期せぬ結果を伴う。とくにそれが当てはまるのが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を服用した時だ。
アスピリンやイブプロフェンなどの市販の鎮痛薬と言えば、わかりやすいだろう。
NSAIDを定期的に服用すると、心臓発作などの循環器系のリスクが高まるとされる。考えうる原因のひとつは、心筋細胞のミトコンドリアの機能に障害が生じ、エネルギーをつくり出す能力が低下するためだ。
これが活性酸素種(別名フリーラジカル)の生成を促し、心臓組織の損傷を招く。
そのメカニズムは複雑で、まだ解明されていないことも多い。しかし少なくとも、神経変性疾患のリスクのある人は頻繁な服用は避けるべきだ。脳のミトコンドリアの機能障害は、認知機能の低下をもたらす。
NSAIDはまた、胃腸障害を引き起こす。胃粘膜を保護するプロスタグランジンを作る酵素の働きを阻害するからだ。
実際、NSAIDの定期的な服用者には、胃潰瘍や消化管出血などの副作用が見られる。さらには腸内の善玉菌に働きかけて微生物のコロニーを変えてしまい、クロストリジウム・ディフィシルのような日和見病原菌の感染症にかかりやすくなるという論文もある。アメリカでは毎年50万人が感染し、3万人が亡くなっている。
そしてもうひとつ。NSAIDは、本来の炎症経路を無差別に変えてしまう。研究によれば、幅広い炎症を抑えるNSAIDは、筋肉の成長といった、エクササイズの優れた効果まで阻害してしまう。
覚えておこう。その医薬品が、処方せんなしに店頭で買えるからといって、無条件に安全だというわけではない。
サンブロック(日焼け止め)の化学成分のリスク
サンブロックもまた、注意が必要だ。化学成分を使ったごく一般的なサンブロックの危険性のひとつは、紫外線を浴びると非常に有害な物質に変化することだ。
最近になってそう証明されたのが、アボベンゾンという化学物質である。
ドラッグストアで買えるアボベンゾン入りのサンブロックを、紫外線と塩素消毒されたプールの水で実験したところ、アボベンゾンは、肝臓や腎臓の障害、神経系障害、がんを引き起こすことがわかっている化学物質に変化したという論文がある。
それが、実験に参加した被験者の皮膚で起きていたのである。
このほか、オキシベンゾンという化学物質は、内分泌攪乱物質の恐れがある。私たちは毎年夏が来るたびに、こうしたサンブロックをからだにたっぷりと塗り込んでいるのだ。
パラベンのように、アボベンゾンやオキシベンゾンも、皮膚から血液中に簡単に吸収される。ある論文によれば、サンブロックを用法通りにからだ全体に塗ったあと、さらに塗り直したところ、これらの化合物の血中濃度が跳ね上がったという。
アメリカ食品医薬品局が定める「毒性学的懸念の閾値」――それ以下では有害な影響が現れないとする許容摂取量――を、はるかに超える血中濃度だった。
薬や化粧品は、必ず成分を確認しよう
とはいえ、あらゆる化学物質を完全に避けようとするのは不可能に近い。大切なのは知識を得て、適切に選ぶことだ。
からだの痛みに対して、NSAIDを長期にわたって服用するのはおすすめしない。穏やかな筋肉痛や痛みには、クルクミン(ウコンの根茎に含まれる黄色い色素)や、オメガ3系脂肪酸のEPAを摂取して乗り切ろう。どちらも抗炎症効果があるが、NSAIDに伴うような副作用はない。
日焼け止めには、酸化亜鉛を使ったサンスクリーン(紫外線を減らす)を使おう。皮膚と日光とのあいだに、化学的なバリアではなく物理的なバリアをつくってくれる。
アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、エカムスルを含むサンブロック(紫外線をブロックする)はできるだけ避けよう。これらは日焼け止めだけでなく、リップクリームや口紅にも使われている。必ず成分を確認してから選ぶようにしよう。
マックス・ルガヴェア : 映画製作者、健康・科学専門ジャーナリスト
(構成:笹幸恵)