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医者が教える「本当に注意すべき病気」の優先順位

2021-07-25 13:30:00 | 日記

下記の記事はダイアモンドオンラインからの借用(コピー)です   記事はテキストに変換していますから画像は出ません

将来にわたって健康でいるために、「病気には気にすべき順位がある」と牧田善二医師は言います。時間もお金も限られている中で何から取り組むべきなのか。新著『医者が教えるあなたの健康が決まる小さな習慣』を上梓した牧田氏が解説します。
誤解しがちな健康診断の結果の意味
会社の健康診断の結果が出ると、たいていこんな会話が交わされます。
「どうしよう。要観察が3つもあった」
「いいじゃないか。俺なんか5つだよ」
周囲の人と比べることで、「自分はまだマシ」と安心したい気持ちがあるのかもしれません。しかし、異常を指摘された項目が3つの人が、5つの人より長生きできる可能性が高いということではありません。
問題はその内容です。病気には、歴然とした順位があります。圧倒的なナンバーワンはがん。日本人の2人に1人が罹り、3人に1人が命を落とすという、最強の病気です。しかも若い人たちをも容赦なく襲います。ただし、同じがんでも重要度は違います。膵臓がんと前立腺がんでは、その予後はまったく変わってきます。
2位は心筋梗塞などの心臓病。肥満大国アメリカでは、がんよりも心臓病による死者が多くなっています。いずれにしても、がんと心臓病は不動のトップ2と言っていいでしょう。
ところが、3位以降はちょっと微妙です。かつて、日本人の死因の3位は脳卒中だったのが、今は肺炎や老衰なども増えています。さらに、QOLを考えたらアルツハイマー病も深刻です。こうした重大な病気と比べたら、尿酸値が高いとか、中性脂肪が高いなどというのは騒ぐに値しません。
物事には優先順位があり、健康維持に関してもすべて同様です。さまざまな検査、必要な治療、体力づくりの運動、いい食事、ストレスを解消してくれる趣味……あなたが、QOLの高い100歳人生をまっとうするために、やるべきことはたくさんあります。でも、その全部を行おうとしたらお金も時間も足りません。ここは、効率的な取捨選択が必要です。
例えば、「体のために」とスポーツクラブに通っている人もいると思います。都内の一般的なスポーツクラブだと、月会費は1万2000円くらいが平均のようです。年にすると15万円近くになります。
しかし、運動は自宅でもできますから、この15万円を最新のがん検査に向けるのも1つの方法です。会社や市区町村の健康診断で「異常なし」と言われていたのに、がんで命を落とす人が少なからずいることを考えたら、検討する余地は大いにあるでしょう。1年に1度の高度ながん検診。こんな習慣を新たに追加してはどうでしょう。
非常に重要なのが「腎臓」の状態
これからの日本人がQOL高く100歳人生をまっとうするために、非常に重要なのが「腎臓」の状態です。腎臓は地味な臓器で、しかも、よほどのことがないと悲鳴を上げません。しかし、人間が命をつなぐための解毒作用を担っており、腎臓が働かなくなれば、尿毒症を起こし(つまり全身に毒が回り)即、命を落とします。
腎臓は加齢とともにその働きが落ちていきます。自覚症状はなくても、50代ともなれば、すでに慢性腎臓病になっている可能性もあるのです。でも、みんな気づいていません。気づいていなければ、さらに悪化させてしまい、とても100歳まではもちません。
腎臓の状態を正しく把握するためには「尿アルブミン値」を測定することが必須ですが、これは普通の健康診断ではまず調べません。よく調べられる「血清クレアチニン値」が正常であれば大丈夫、と医者も信じているからです。しかし血清クレアチニン値に異常が出たときはもう遅いのです。
次のグラフを見てください。日本における慢性腎臓病の透析患者数と死亡者数の推移です。一目見て、透析を受けねばならない重症の慢性腎臓病患者数が激増しており、死亡者数も増えていることがわかるでしょう。
医学は大変に進歩しています。そのおかげで、以前だったら諦めるしかなかったがんも治るようになりました。人の手では難しい心臓の手術をロボットが安全に行えるようにもなりました。
そのような状況にあるにもかかわらず、慢性腎臓病による死亡がこれほど増えていることは決して看過できません。
現在、日本には2100万人もの慢性腎臓病患者がおり、成人の5人に1人に相当します。これは一流医学誌に報告された最新の間違いない数字です。しかも、日本人は透析が必要なほどに悪化するケースがとても多く、その率は台湾に続いて2位です。
腎臓は沈黙の臓器であり、がんや心筋梗塞のように、急激に「今すぐどうにかしなければ」という状況にはならないので、医者もあまり関心を持ちません。だから、専門医も少なく、大学病院など大きな医療施設に通っていても、腎臓について指摘される機会はほとんどありません。
となれば、あなたが腎臓に無頓着でいたのも無理からぬことです。統計上の死因としては、腎臓病によるものは7位です。しかし、慢性腎臓病になると、それ自体は比較的軽症であっても、心筋梗塞や脳卒中に罹る率が跳ね上がります。腎臓病自体で亡くなる前に、心筋梗塞や脳卒中で命を落とすことになり、その死亡率は4倍にも上るのです。
慢性腎臓病に罹ることは、すなわち命を縮めること。さらに、透析は著しくQOLを下げます。週に3日、1回4時間ほど拘束されるのですから、仕事も旅行もできません。100歳人生をすばらしいものにするために、腎臓を大切にする習慣を身につけましょう。
私がみなさんにお伝えしたい小さな習慣は、言い尽くされた古めかしいものではありません。新しい時代には新しい知見が必須です。
大事なのは「最新の知見は何か」
今後は医療も多様化し、専門クリニックや自由診療(保険外診療)も増えていくでしょう。自由診療と聞くと、突飛なことをやって高いお金を取る怪しい医療者を想像するかもしれません。たしかに、手遅れのがん患者に根拠もない「治療もどき」を行う不届き者も希にいます。
『医者が教えるあなたの健康が決まる小さな習慣』(KADOKAWA)。
しかし、すばらしい医学の進歩をいち早く患者さんに享受してもらうために、自由診療での新しい治療の提供を試みる医療機関も増えています。そうしたことを正しく知り、本当に自分に必要なものを取り入れていく知性が、人生100年時代には必須だと私は考えています。
同時に、医学はほかのどんな分野よりも加速度的に変化するダイナミックな学問であり、ときに、過去の常識は180度覆されます。
私自身、過去に信じていたことをひっくり返し、改定しながら毎日の臨床の現場に立っています。このときに大事なのは、「過去はどうだったか」ではなく「最新の知見はなにか」です。そこに行き着けることが重要なのです。そういう柔軟性をいくつになっても失わずにいてください。
習慣は、繰り返して身につくもの。だから、ずっと変えずに行うことがいいのだと考えているかもしれません。しかし、こと健康に関してそれではいけません。絶えずアップデートしていける頭の柔らかさ、知的好奇心こそ最も求められているのです。
とはいえ、医師として長く患者さんと接してきて、人はなかなか生活様式を変えることができないということもわかっています。だからこそ、小さなことから始めること、知ることから始めることが重要なのです。
牧田 善二 : 医学博士・AGE牧田クリニック院長


小室佳代さんの“自死願望”告白 眞子さまを追い込む恐ろしい響き

2021-07-25 11:00:00 | 日記

下記はNEWSポストセブンオンラインからの借用(コピー)です

 その「告白」が波紋を呼んでいる──。秋篠宮家長女・眞子さまの婚約内定者である小室圭さんの母・佳代さんが、6月22日発売の『週刊文春WOMAN』に登場。《小室佳代さん「密着取材」一年》と題された記事で、子育てのこと、報道に対する心境などが佳代さんの肉声で綴られた。なかには「息子は全部自分で決めてやるタイプなんです。中学でインターナショナルスクールに進学することも自分で決めました」と、小室さんについて語る部分もあった。そしてさらには、こんな記述もあった。
《いつ死んでもいいと思うこともありました。明日死のう、と。今だってそう思うことはあります。本当に心身ともにつらくて……》
《二年ほど前には周りの人たちに『さようなら』と別れを告げて、いなくなろうとしていたんです》
 皇室ジャーナリストは次のように言う。
「今回の記事の中で最も気を使わなければいけないのが、この“自殺願望”の告白です。1948年、三笠宮家の百合子さまのお父さまは自ら命を絶ちました。戦後の混乱の中での生活の困窮が理由でした。そうした悲しい過去が頭をよぎった人も少なくないはずです。皇族方にとって自殺とは、そうした忘れられない悲劇でもあるのです」
 眞子さまは昨年11月、「結婚は生きていくために必要な選択」とした文書を発表された。それが、佳代さんの元婚約者のAさんの心を打ち、結果としてAさんは佳代さんに返金を求めることをやめた。佳代さんも、自分の強い思いを明かすことで、潮目が変わると考えたのかもしれない。
「秋篠宮さまや紀子さま、眞子さまにしてみれば、過去の皇室の悲劇も思い出され、身も凍るような、震える思いだったでしょう。もし結婚ができないとなれば、佳代さんが最悪の事態を引き起こしてしまうかもしれない。そう考えれば、この自殺願望の告白は“結婚できなければ大変なことになる”という“恫喝”のような恐ろしい響きも持っているのです」(宮内庁関係者)
「全部あなたたちのせい」
 佳代さんの「自死願望」告白で想起される人はほかにもいる。佳代さんの夫で、小室さんの父である敏勝さんだ。敏勝さんは2002年3月、小室さんが10才のときに自ら命を絶った。小室家をよく知る知人はこう語る。
「敏勝さんは穏やかで、おとなしくて、全然怒らない人でした。佳代さんに何を言われても静かにうなずき、“そうだね”と答えていたのを覚えています。仕事も一生懸命で、朝から晩まで働き詰めの生活だったようです」
 しかし、亡くなる前年の夏頃から、敏勝さんは体調を崩すようになった。
「その頃から、見るからにやつれ、目には生気がなくなって。仕事の悩みもあったようで、明らかに心の病だと感じました。ただ、佳代さんに心療内科に通わせることを強くすすめても、“病院に行かないのは本人の勝手だから”と気にする様子もありませんでした」(前出・小室家をよく知る知人)
 そうして、翌年に敏勝さんは自死を選んだ。だが、当時の佳代さんが取った行動は、驚くべきものだったという。
「佳代さんは敏勝さんのお父さんに向かって“小室の自殺は全部あなたたちのせいだ!”と迫ったそうです。当時、敏勝さんが亡くなったことで、お父さんは憔悴し切っていたと思います。それにもかかわらず、義父である人物に佳代さんは“あなたたちの愛情が足りないから彼は自殺したんだ!”と強い口調で告げたと聞きます」(前出・小室家をよく知る知人)
 その約1週間後、敏勝さんの後を追うように、敏勝さんの父も自殺した。さらに、それから1年ほど経った頃に、敏勝さんの母も自ら命を絶ったとされる。
「敏勝さんが亡くなる少し前から、佳代さんは『運命の人』と呼んでいた男性と出会っていました。彼のことを、圭くんには『湘南のパパ』と呼ばせていたので、よく覚えています。敏勝さんの心身が衰弱していく中で、“夫が死んだら、運命の人と再婚する”ということも口にしていました」(前出・小室家をよく知る知人)
 敏勝さんの死後、「湘南のパパ」との今後の関係について佳代さんが口にした言葉は「自殺なんて気持ち悪いことされたから、2人で話し合ってもう会わないことにした」という意外なものだった。小室家の関係者は言う。
「自殺ということに対して佳代さんはよく“気持ち悪い”という言葉を使っていたのを覚えています。小室家の自宅には夫婦で使うクイーンサイズくらいのベッドがありました。ですが、“自殺したような人が寝ていたベッドは気持ち悪いから処分したいのよ”と話していました」
 自死は“気持ち悪い”こと──かつてそう語っていた佳代さんがほのめかした、自らの自死願望。その真意はいったい何なのだろうか。
「本心か否かはわかりません。ですが、これまで佳代さんは自分の苦労や、生活のつらさを主張することが多かった。2013年にAさんと金銭トラブルについて話し合う席で、 “女がひとりで生きていくのは大変なので”と話すこともあったようです。今回の告白も、そうした悲観的な主張を繰り返すことで、“悲劇のヒロイン”になっているように思えてならないのです」(前出・皇室ジャーナリスト)


 血液検査で50種類以上のがん検出、最終結果が報告

2021-07-25 08:30:00 | 日記

下記の記事はビヨンドヘルスオンラインからの借用(コピー)です

 たった一度の検査で50種類以上のがんを検出できる可能性を秘めた血液検査に関する最終結果が報告された。それによると、この複数のがんの早期発見検査(MCED検査)は、がんリスクの高い人々に対する多様ながんのスクリーニング検査として申し分のない精度であることが判明したという。米クリーブランド・クリニックのGlickman Urological & Kidney InstituteのEric Klein氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Oncology」に6月24日掲載された。
 MCED検査では、血液中のセルフリーDNA(cfDNA)と呼ばれるDNAの解析が行われる。cfDNAとは、血中に存在する、免疫により破壊された細胞やアポトーシス(プログラムされた細胞死)した細胞に由来する遊離DNAである。cfDNAは、健常者の血中にも存在するが、がん患者ではその濃度が上昇する。解析では、このcfDNAのメチル化パターンを、次世代シークエンス解析と人工知能(AI)を組み合わせて読み取る。DNAメチル化は遺伝子発現などに重要な役割を果たしており、DNAメチル化パターンの異常はがんの存在を示唆する。AIはさらに、がんの部位の予測も可能だという。検査結果は、血液サンプルが検査期間に到着してから10営業日以内に判明する。
 今回の研究報告は、MCED検査に関する前向き縦断症例対照研究〔Circulating Cell-free Genome Atlas(CCGA)study〕の3番目にして最後のサブスタディの結果である。試験では、がん患者2,823人と、がんのない1,254人(対照群)の総計4,077人を対象に、この検査の特異度や感度、がんのシグナルの発生起源の予測精度を調べた。
 その結果、この検査での全体的ながんのシグナル検出の感度(真陽性率)は、がんの種類とステージ(Ⅰ〜Ⅳ)を通じて51.5%であることが明らかになった。特異度(真陰性率)は99.5%であった。これは、対照群の中でのがんの誤検出率がわずか0.5%であったことを意味する。がんのステージごとの検査感度は、ステージⅠで16.8%、ステージⅡで40.4%、ステージⅢで77%、ステージⅣで90.1%であり、ステージが進むほど感度も高くなっていた。また、感度はがんの種類によっても異なっていた。具体的には、固形がんでは、スクリーニング検査ツールのないがん(食道がん、肝臓がん、膵臓がんなど)では65.6%、スクリーニング検査ツールのあるがん(乳がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がんなど)では33.7%であり、悪性リンパ腫や骨髄腫などの血液がんでは55.1%であった。さらに、この検査により、がん患者の88.7%で、がんが存在する組織を特定することができた。
 Klein氏は、「がんによる負担を軽減するには、治療が成功しやすい早期にがんを発見することが非常に重要となる。今回の研究で得られた知見は、この血液検査を既存のスクリーニング検査と併用すれば、がんの検出方法、ひいては公衆衛生に非常に大きな影響を与え得ることを示唆している」と述べている。
 この研究報告を受けて、米国臨床腫瘍学会(ASCO)のチーフメディカルオフィサーであるJulie Gralow氏は、「わくわくする結果だ」と話しながらも、「ただし、がん死亡率の低下を最も見込める初期段階のがんに対する感度は低かった。この血液検査をがんの主要なスクリーニング検査手段とするには時期尚早だ」と指摘する。
 それでもGralow氏は、「極めて致命的ながんの大半には適切なスクリーニング検査の手段がない。従来の検査にこの血液検査を追加することで、そうしたがんを、これまでより簡単にかつ早期に発見できるようになるかもしれない」と期待を示している。
[HealthDay News 2021年6月25日]


隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態

2021-07-24 15:30:00 | 日記

下記の記事は東洋経済オンラインからの借用(コピー)です

「女性の貧困」――。近年、注目されているテーマだが、2000年代初めから「女性ホームレス」に着目し、研究を続けてきた人がいる。京都大学大学院文学研究科准教授の丸山里美氏は7年間にわたって、東京と大阪で女性ホームレス33人へのフィールドワークを行い、問題点をあぶり出した。
「女性の貧困」の深淵とは何か、その実態を測る難しさはどこにあるのか。「ニッポンのすごい研究者」は今回、女性ホームレスの研究者にスポットを当てた。
男性ホームレスとの大きな違いは「結婚歴」
――丸山さんが調査された女性ホームレスには、どんな特徴があるのでしょうか。
私の調査はサンプル数が33と少なく、聞き取りの方法や時期が統一されていないため、統計的な価値は高くありません。ただ、女性に特化した調査はこれまでほとんど実施されていません。
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そこで女性ホームレスの特徴をつかむために、対象を男性に特化した厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査」(おおむね5年ごとに実施)の2007年版と、私が2003年から2009年にかけて実施した調査で比較しましょう。
厚労省の調査は野宿者のみを対象にし、私の調査は野宿者と施設居住者を対象にしています。
私は東京と大阪の路上で会った19人、東京の福祉施設で会った14人、計33人から生育家族や学歴、職歴、居住場所、同居人といった生活史を詳細に聞き取っています。このうち、夫が失業して2人ともホームレスになった人は11人。本人の失業でホームレスになった単身女性が15人。夫や家族との関係性を失ってホームレスになった人が7人。これらのうち、野宿経験者は26人でした。平均年齢は59歳です。
男性ホームレスとの大きな違いは、まず、結婚歴です。厚労省の調査によると、男性のホームレスには結婚経験がない人が半数以上もいるのですが、女性の場合、9割近くに結婚歴(内縁関係含む)があり、そのうち半数以上が複数回しています。
貧困女性にとって男性のパートナーを持つことは、生活を維持するための手段になっている実態が改めて浮かび上がります。ホームレスの人は総じて学歴が低いのですが、女性では「最終学歴が中学校以下」という人が半数以上で、男性よりもさらに低い。職歴も大半はパート。多くの人が清掃、水商売、旅館の住み込み、飯場の賄いなどに従事しています。
――その女性たちは、どのようにしてホームレスになったのでしょうか。
いくつかパターンがあります。夫との死別や離別によって単身となった女性が失業する場合、もともと単身の人が病気や高齢などで働けなくなる場合、夫をはじめ家族との関係がうまくいかなくなる場合などです。
丸山里美(まるやま・さとみ)/京都大学大学院文学研究科准教授。2007年京都大学大学院文学研究科行動文化学系社会学専修博士課程単位取得認定退学。博士(文学)。専攻は社会学。立命館大学産業社会学部現代社会学科准教授を経て現職。著書『女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学』の新装版を今夏出版予定(写真:本人提供)
中高年の女性ができる仕事は、低賃金の不安定労働に限られていますから、失業保険や厚生年金の対象にならない人も多い。働けなくなると、すぐに生活に困窮することになりがちです。
例えば、本人が失業したケース。60代の女性は、中学校卒業後に正社員としてガラス工場で働き始め、22歳で転職します。26年間勤めますが、そこでは失業保険や年金に入っていませんでした。
給料が上がらず生活が苦しくなったため、その会社を辞めて清掃のパートを2つ掛け持ちします。でも、アパートの家賃には足りない。友人からの援助で賄っていましたが、次第に友人宅に居候するようになった。その生活が10年ほど続きましたが、高齢になって仕事を解雇されると、友人への借金が気になって居候しづらくなり、野宿に至りました。
離婚によって貧困に陥るケースも
別の50代女性のケースは、こうでした。高校中退後、縫製工場に正社員として勤め始めます。18歳で専業主婦になり、4人の子供をもうけた。その後、35歳で離婚し、水商売を始めて3年後に独立。42歳で再婚しました。夫婦2人の収入があったため、その後は自らの子供と共にマンションで豊かに暮らしています。
ところが、女性は54歳のときに体を壊して店をたたみました。実は結婚直後から夫の精神的暴力に耐えていたのですが、末っ子が結婚したのを機に離婚し、家を出ます。しばらくはホテルやサウナに泊まっていましたが、所持金が尽きて野宿になりました。
もともと精神疾患や軽度の知的障害がある女性も一定数いて、人間関係のトラブルになりやすく、仕事が続かないという背景もあります。
――丸山さんが調査に着手する2003年まで、ホームレスと言えば男性の問題として認知され、女性のホームレスはほとんど注目されていませんでした。そんな中、7年もかけて綿密な調査を続けた。京都から東京へは夜行バスで通っていたと聞いています。
京都大学の大学院に通っていたときですね。約250人がテントで暮らしている東京都内の公園に何度も通いました。そこでは女性が10人ほど暮らしていて、顔見知りになった4人の女性たちと数年間にわたって人間関係をつくり、調査を行いました。
テントは平均で3畳くらいの広さです。中には洋服や布団といった日用品があり、発電機や電池式のテレビを置いてあるテントもありました。日雇いやアルバイト、保険の外交員、ビルの清掃、廃品回収などで現金収入を得ている人もいました。
食事はコンビニなどで廃棄物として出されるもの、福祉事務所で配布されるもの、炊き出しなどで確保。カセットコンロを使って自炊する場合も多いです。日用品は自分たちで購入するか、定期的に訪れるボランティアや教会に頼んで手に入れ、生理用品など男性に頼みにくいものは女性ボランティアに頼んでいたようです。
丸山氏が調査した東京都内の公園の様子。約300のテントがあった。
何度も足を運び、一緒に時間を過ごす
――公園以外では、どんなところで調査されたのですか。
野宿者だけでなく、住居のない状態(=ホームレス)の女性たちが滞在する都内の福祉施設に泊まり込み、そこで最初はボランティア、後にアルバイト職員として働きながら、並行して聞き取り調査をしました。大阪では、女性野宿者の支援グループをつくって、その活動と並行して調査もしていました。
(こうした手法を取ったのは)まず、一緒に時間を過ごしたいと思ったからです。それに、1回だけのインタビューでわかることは限られています。何度も足を運んで人間関係をつくって話を聞けば、その分、調査は深みのあるものになると考えました。
東京で調査したのは、京都や大阪ではホームレスの女性になかなか出会えず、東京に行き着いてしまったということですね。
――日本では「ホームレス=中高年の男性」というイメージがあります。一般的には男性よりも女性のほうが貧困とされているのに、なぜ、女性ホームレスは少ないのでしょうか。
彼女たちは危険を避けるために物陰に隠れるように暮らしているので、なかなか目にとまりません。厚労省の「ホームレスの実態に関する全国調査」の2021年版によれば、全国の野宿者3824人のうち女性は197人。わずか5.2%です。
「ホームレス」の定義によるところも大きいと思います。日本でホームレスというと、一般的に路上生活をする人を指します。しかし、もっと解釈を広げ、「家のない状態の人」と定義し、インターネット・カフェやファストフード店、知人宅で夜を過ごすといった人もカウントすれば、5.2%よりずっと多いです。
女性ホームレスが少ない背景には、男性が稼ぎ主で女性は家事を主に行うことを前提にした、日本の労働や社会保障のあり方も問題として横たわっています。こうした結果、多くの女性は不安定な低賃金労働に従事している。低賃金だと1人で生きていくことが難しいので、貧困を恐れて、夫や親のいる家から出られないわけです。
また、雇用保険や年金といった保険から排除されていることも多く、単身者の場合、失業すると途端にホームレス状態になるリスクがある。
他方、男性より利用できる福祉的な選択肢は多い。そうしたことから、路上に出る一歩手前で踏みとどまっているケースが多く、数字上では女性ホームレスの比率が極端に低いのだと考えられます。
一貫性がなく、矛盾した言動をとることがある
――調査を通して、どんなことが明らかになったのでしょう。
女性野宿者たちは、さまざまな場面で一貫性がなく、矛盾した言動をとることがあります。例えば、DVを受けたある女性は、いったんは施設に逃げ込むけれど、その後、夫の元に戻る。また施設で暮らす、そして夫の元へ。そういうことを繰り返します。
私の家に居候したいと言った女性はある時、衝動的に公園を飛び出し、夫と違う男性とホテルで暮らし始めます。そして毎日のように電話をしてきては、「実家に帰ろうか」「公園で夫の帰りを待とうか」「生活保護を受けようか」などと言うのです。
彼女たちの多くは自らの重要な決断をする際、他者の意見や存在を考慮し、それに大きく影響されていた。女性に求められてきた社会的な期待に沿うことは、「自分で選択できる自立した生」とは矛盾するのです。
研究者として感じたことは、この合理的には理解しがたい存在のあり方が、それまでのホームレス研究から女性が排除されてきた一因ではないかということでした。
もしかすると皆さんは、「ホームレス=なくすべきもの」と思われているかもしれません。でも、すべてのホームレスが「ホームレス生活をやめたい」と願っているわけではないのです。この研究を通して、私は「その人がその人なりに望むことを実現できるような社会になればいい」と考えるようになりました。
――丸山さんがフィールドワークをされてから10年以上が経ちました。女性ホームレスの姿に変化はありましたか。
2010年代半ばには、女性の貧困が社会的に話題になりました。私の主な調査対象は中高年の女性でしたが、生活に困窮して性産業で働いている女性たちが「女性の貧困」や「女性ホームレス」としてイメージされるようになったことが、最も大きな変化だと思います。
おそらくこれからも、時が経つにつれ、女性の貧困の実態や、それに対する人々のイメージも変化していくことでしょう。
――そもそも、なぜ女性ホームレスの研究をしようと思ったのですか。
大学の卒業論文のフィールドに、釜ヶ崎(大阪市西成区の「あいりん地区」)というホームレスの人たちが多い所での炊き出しを選んで、3年間通いました。それが非常に楽しかった。
インドに1人、バックパックを背負って旅行に行ったことがあったんですが、釜ヶ崎にはそういうアジアの国に旅行しているかのような雑然とした雰囲気があって……。人間らしい行為や感情があふれていて、人々が生き生きしていると感じました。
でも、釜ヶ崎でトラブルに遭ってしまうんです。炊き出しのボランティアをしているときに知り合った男性にストーカーされて。「殺してやる」とも言われました。それまでは自分が女性であることや、ジェンダーの問題にあまり関心がなかった。だからこそ、男性ばかりの釜ヶ崎の街に楽しく通えていたんですね。
私はよそから通っていたので、そんなことがあったら釜ヶ崎に行かなければいい。でも、ときどき、街で見かけていたホームレスの女性たちは、住人のほとんどが男性という街で、きっと、私と同じような目に遭って困難を抱えているんじゃないか。人生の先輩である彼女たちがどういうふうに暮らしているのかを知りたいと思ったんです。
世帯の中にいる女性の貧困は捉えきれていない
――今の新しい研究テーマを教えてください。
「世帯に隠れた貧困」に関心があります。貧困者支援をしている、あるNPO法人に相談に訪れた人の記録を分析したときに「統計に表れない女性の困窮」に気づきました。
例えば、夫からのDV被害に遭っている妻は、統計上「家に住んでいる」「世帯収入がある」となり、貧困とは見なされません。でもDVに耐えかねて、いざ家を出ると、その妻は「住むところがない」「お金もない」となり、途端に貧困に陥る。
従来、(研究や政策は)貧困を世帯ごとに見ていたのですが、それでは、世帯の中にいる女性の貧困の実態を捉えきれないのです。
――その研究で、どんなことが明らかになるのでしょうか。
夫婦で生活していると、多くの場合、女性が家事や育児といった無償労働を担い、それに時間を投入するせいで満足な現金収入を得られません。一方、夫が現金を得られるのは、妻の無償労働に支えられているからです。
つまり、貧困という概念を考えるときには、経済的資源についてだけではなく、「時間資源」やそれに派生する「自由度」についても考慮すべきだと考えています。
今は研究の途上ですが、研究を進めていけば、貧困の捉え方や計測の方法、さらには貧困の概念を根本から問い直すことになるのではないか、と思っています。それは、困難を抱える女性たちの生きづらさを可視化させることになる。そう期待しています。
取材:宮本由貴子=フロントラインプレス(FrontlinePress)所属


「怒りと悲しみのハワイ挙式」花嫁を幸せの絶頂から突き落とした60代母の異常行動

2021-07-24 13:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です

「あいつらは私を見張っている! 盗聴されている! 毒を入れられる!」。現在30代の柳井絵美さんの最愛の母親は約10年前からおかしな言動をするようになった。家では雨戸を締め切り、換気扇も塞ぎ、ひきこもる。そんな中、柳井さんは結婚し海外挙式をするが、ハワイでも母親の妄想は改善せず。家族の説得でようやく診察を受けた母親は統合失調症だった。柳井さんはその後、第1子を出産。不安な気持ちを抱え、介護と育児に直面することに――。)
この連載では、「ダブルケア」の事例を紹介していく。「ダブルケア」とは、子育てと介護が同時期に発生する状態をいう。子育てはその両親、介護はその親族が行うのが一般的だが、両方の負担がたった1人に集中していることが少なくない。そのたった1人の生活は、肉体的にも精神的にも過酷だ。しかもそれは、誰にでも起こり得ることである。取材事例を通じて、ダブルケアに備える方法や、乗り越えるヒントを探っていきたい。
10年前から母親がおかしい「盗聴されている! 毒を入れられる!」
柳井絵美さん(現在30代 既婚)は、2014年に結婚するまでは関東地方にある実家で両親と1歳下の妹の4人暮らしだったが、結婚してからは実家から車で10分ほどのところに新居を構え、夫と暮らし始めた。
しかし、「甘い新婚生活」とはいかなかった。悩みの種は、2012年ごろからおかしな言動をするようになっていた当時64歳の母親だ。
当時、清掃の仕事をしていた母親は、60歳で定年延長し、65歳で退職するつもりだった。65歳の誕生日が迫っていたある休日、柳井さんと母親は車で買い物に出かけ、帰宅すると、突然母親は異様な行動に出た。ダッシュボードからメモ帳とペンを取り出して、家の近くの農道に列になって路上駐車されている車のナンバーを一心不乱に控え始めたのだ。
「お母さん、何してるの?」。びっくりした柳井さんが声をかけると、母親は、「農道に停まってる車のナンバーを控えているの! あいつら私を見張ってるのよ!」と怒り口調で答える。
「私は生まれて初めて、自分の母に恐怖感を抱きました。でも、当時の私は20代半ば。平日は仕事、休日は今の夫や友だちとの付き合いなど、毎日忙しくしていたこともあり、母の異変に気付いていたにもかかわらず、放置してしまったのです」
それから母親は、「車で私や家族を見張っている!」「あいつらは会社や近所の人に、私や家族の悪口を吹き込む!」「あいつらは私を陥れるわなをしかけている!」などと繰り返し、「絶対に犯人を見つけ出してやる!」と息巻くようになった。
柳井さんや父親、妹がどんなになだめても、路駐している車のナンバーを控える行為は収まらず、メモ帳はみるみる車のナンバーで埋め尽くされていった。
「あんた、ゴミ捨て場にあった自転車盗んだの?」
そんなある日、母親は突然、「あんた、ゴミ捨て場にあった自転車盗んだの?」とすごい剣幕で話しかけてきた。驚いた柳井さんは、「何のこと?」と答える。
どうも母親は、数日前からゴミ捨て場に置かれてあった自転車が失くなっていたのは、柳井さんが盗んだからだと思い込んでいるようだ。柳井さんが「え? 盗んでいないよ」と言っても聞かず、母親は怒気を孕んだ口調で「返して来い!」と繰り返す。
父親も妹も騒ぎを聞きつけ、事情を聞いた2人が柳井さんをかばってくれているにもかかわらず、母親は聞く耳を持たない。「会社の人が言っていた! 返して来い!」の一点張り。
この頃から母親の車のナンバーを控える行為は収束し、代わりに柳井さんに「自転車を返して来い」と繰り返し言うようになった。柳井さんは、本当かどうかは別として、会社の人の言うことを信じて、自分の言うことを信じてくれない母親に、怒りと悲しみの感情が湧いた。
2012年5月、65歳になった母親は清掃の仕事を退職した。
「ほら! 外から誰かが毒を垂らしてきた!」
退職した母親は、一日中家の中に閉じこもるようになっていった。
昼間でもシャッターや雨戸を閉めっぱなしにし、雨戸がない窓はアルミ箔や新聞紙、ダンボールなどで覆い、換気扇はラップで隙間を塞ぐ。なぜ換気扇を塞ぐのかと訊ねると、母親は「換気扇の外から誰かがスプレーで毒を入れてくる!」と答えた。
換気扇をラップで塞いだまま回し、揚げ物や炒めものの料理をするため、たちまちラップは油まみれになり、壁に油が滴る。すると母親は「ほら! 外から誰かが毒を垂らしてきた!」と言う。柳井さんが「ラップについた油が熱で垂れてきたんだよ! 危ないから外して!」と外そうとすると、大激怒。浴室の換気扇も同様で、窓も開けられず、換気扇も塞がれ、家の中は昼間でも暗く、カビ臭い湿った空気が充満していた。
「あとでわかったことですが、母が『スプレーで毒を家に入れている!』というのは、隣に運送屋があり、車を高圧洗浄機で洗っている音を毒スプレーだと思い込んでいたようです。しかし、それを母に説明したところで受け入れてはもらえず、当時は母対その他の家族で、ケンカばかりの毎日でした。私たちはただ、おかしくなっていく母を、何とかして元に戻したい一心でした」
家の中は常に重苦しい空気が漂い、家族全員がいつもイライラしていた。母親の言動を否定すると悪化するように感じた柳井さんは、試しに肯定してみたが、良くなったように感じるのは一瞬のことで、結局、異常行動を繰り返す。
やがて2014年、柳井さんは入籍し、夫と2人、結婚式をどうしようかと悩んでいた。
「海外ウェディングなら母親の妄想がなくなるのでは?」という期待
母親はもともと引っ込み思案。そんな母親が、娘の結婚式で人前に出られるのか?
そこで夫は、「海外挙式にしてはどうか?」と提案。「国内で追跡や光を恐れるなら、海外に行けば落ち着くかもしれない。妄想の相手は海外までついてこないだろう」と。この提案を、柳井さんも父親も妹も、家族全員がわらにもすがる思いで受け入れた。
このことを母親に話すと、何度目かの説得で渋々承諾。嫌々な母親の様子に、柳井さんは「娘の結婚式なのに!」と怒りと悲しさがこみ上げ、母親と柳井さんの仲は一気に険悪になる。見かねた父親と妹が間に入ってくれ、何とか母親をハワイまで連れ出すことができた。
しかし挙式当日。スタッフから、「お母様は挙式の最初に、花嫁のベールを下ろしてください」と言われた母親は、「いや、私はやりません」と首を振るばかり。このやり取りを見ていた柳井さんは、涙を堪えるのに必死だった。スタッフと妹が母親を説得し、何とか母親は役割を遂行したが、あまりにも義務的で雑なベールダウンに、真っ白なウェディングドレス姿の柳井さんの心の中は、再び怒りと悔しさと悲しさでいっぱいになった。
さらに、柳井さんたちの「海外なら妄想がなくなるのでは?」という期待は、もろくも崩れ去る。母親はハワイにいる間も、「光が私を狙ってる!」と言い、母親がホテルの部屋から出たのは挙式とその後のランチ、そしてほんの少し海へ行ったくらいだった。
だが、自宅にいる間と違い、母親はホテルの部屋ではカーテンを締め切らず、ベッドに横になりながら海を眺めていたと妹から聞くと、柳井さんはわずかに救われる思いがした。
加速する母親の異常行動「盗撮されるから暗闇入浴」
2015年。母親より3歳若く、当時65歳の父親も、柳井さん(製造業勤務)も妹も、平日は仕事がある。
結婚して家を出た柳井さんも、ほぼ毎日仕事後には母親の様子を見に実家を訪れ、時には閉じこもりっぱなしの母親を外に連れ出した。
あるとき、妹が仕事から帰ると、母親は真っ暗な中、入浴していた。「お母さん、どうして電気つけないの?」と訊ねると、「盗撮されるからだよ!」と答える母親。
「母は、お風呂とトイレは夜でも絶対に電気をつけなくなりました。妹は、『お母さんすごくない? 電気付けないでお風呂とか難しいよね!』と笑っていましたが、私はお風呂が大好きだった母が、暗闇でおびえながら入浴していると思うと、かわいそうで胸が痛みました。楽観的な妹がうらやましかったです」
さらにまた別の日、「来てくれ! お母さんがおかしい!」と父親から電話があった。
「父はめったに私たち娘を頼らない人なので、電話があったということは、かなり限界だったのだと思います」
嫌な予感がしながら実家に到着すると、父親はとてもつらそうに、そして今までの怒りが爆発したかのように叫んだ。
「もうお母さんには何を言ってもダメなんだ! いい加減にしてくれ! こっちまで頭がおかしくなりそうだ!」
すると母親も負けずに怒鳴る。
「どうしてみんなわかってくれないの! 私がこんなに狙われているのに! あんたたちも敵の味方なんだ!」
「お母さん、もう病院行こう?」「あんたまでおかしい者扱いして!」
父親から事情を聞くと、「突然、キッチンにあるステンレスのボウルに、自分の裸が映るとかって言い出して……」と言う。
ここ最近の母親は、水道の蛇口など、自分の姿が映るものを見ると「盗撮されている!」と言ってアルミホイルを巻きつけていた。
柳井さんはこれまで見てきた母親の異常行動を思い出し、涙が溢れてきた。
「お母さん、もう病院行こう?」と柳井さんが声をしぼり出すと、
「あんたまで私のことをおかしい者扱いして! ふざけるな! きっと狙われてるのは私だけじゃない! あんたたちもやられるんだ!」
と拒絶。
「私はこのときようやく、母親のことを誰かに相談しようと思いました。これまでは『恥ずかしい』『相談された方も困るだろう』と思い、できないでいたのです」
「母親は統合失調」診断を聞いた後、身重の娘は無事出産した
2015年2月。相談先を悩んだ末に、柳井さんは、勤め先の救護室に常駐する看護師に相談してみることにした。
看護師に母親のことを話すと、「話を聞いただけだから断定はできないけど、統合失調症の症状に似ているね」と言った。看護師に統合失調症について聞くと、柳井さんは、「確かに母の症状に当てはまることばかりだ」と思った。
看護師は、心療内科にかかることを勧め、評判の良い病院を紹介してくれた。
それからというもの、柳井さんは父親と妹とともに母親を説得し始めるが、母親は拒絶。
2017年、柳井さんは第1子を妊娠。気が付けば、母親が異常行動をし始めた2012年から5年、誰かに相談しようと決断した日から2年近くの月日が流れた。
父親と妹は、身重の柳井さんを気遣い、「ストレスになるからお母さんには近づかないほうがいいよ」と言ってくれた。
そして9月。妹が「初孫と一緒にお出かけしたくないの?」「このままじゃ私も心配でお嫁に行けないよ」などと話し、母親の説得に成功。
69歳になった母親を家族全員で心療内科へ連れて行き、問診による認知症の検査を行ったところ、医師は、母親に物忘れ症状はなく、認知症ではないと言う。柳井さんが母親の日頃の異常行動をまとめたメモを医師に渡すと、最終的には統合失調症と診断が下りた。
そして柳井さんは、長女を出産した。
旦木 瑞穂(たんぎ・みずほ)
ライター・グラフィックデザイナー
愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する連載の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。