「バスジャック事件に隠された現代社会とメディアを鋭く浮き彫りにする渾身のドキュメンタリー」がこの映画のキャッチ。
この映画は生涯忘れ得ない映画となった。
2002年6月12日ブラジルのリオデジャネイロで起こったバスジャック事件。路線バスに乗り込み乗客を人質に取って立てこもる。ハイジャックされたバスはマスコミ・テレビカメラに取り囲まれTVの前の観客はその一部始終を目の当たりにすることなるが…。(詳しいストーリーは
こちら。)
監督はこの事件を単なるバスジャック事件としてではなく、ブラジルが抱える貧困・政治腐敗など社会全体の問題として捉えている。
ここのブログでも書かれているが、犯人の親戚・友人、警察、人質となった人々等、とにかく彼らのインタビューがふんだんに織り込まれいる。しかしこの映画はどの立場にも偏っておらず、それがより一層この問題を深刻で、もはや解決不可能なものにしているように感じた。
飽和する刑務所、腐敗した警察。「もう何をやっても無駄」、そんな空気が辺り一面に充満しきっている。皆ストリートチルドレンの存在など無いものにしたいと思っている。目を瞑って見ないフリをしたい。「彼らをいっそ街からきれいさっぱり消してしまいたい。」『浄化』、そんな考えを持つ人も少なくないと映画では言っていた。そうでなければ己の身が危険にさらされるのだ。教会の外で起きた警察によるストリートチルドレンの虐殺。人の命がこんなにも軽く扱われるものなのかと胸が痛くなる。絶望的としか言いようがない。
この映画を見終わった後、何かしたくても出来ない自分にやりきれなくなった。こういう事実が世の中に存在するということを知った自分は知らなかった自分に比べて少しでも偉いのか。知ることがこの世の中の役に立つとでもいうのか。
今日ほど日本という国に住んでいる自分が幸福だと感じたことは無かった。