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頑固爺の言いたい放題

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日韓関係を悪化させた日本の謝罪

2020-01-13 16:19:29 | メモ帳

日本人の特質の一つは、争いが起きると簡単に謝罪すること。謝罪して下手(したて)に出れば、相手も態度を和らげ、互いに過去を水に流して争いは治まる。しかし、外交の世界では、謝罪は悪行を認めたことになり、謝罪する側の立場を悪くすることが多い。

そのいい例が2015年の慰安婦合意である。裏で米国の要請があったとはいえ、謝罪とともに十億円払ったことで、韓国人および国際社会に「日本軍が女性を拉致して性奴隷にしたのは、やはり本当だったんだ」と認識させる結果を招いた。

さて、Wikipedia の「日本の戦争謝罪発言一覧」を見ると、1972年の田中角栄首相を始めとして、ほとんどの歴代首相は戦争に対する謝罪の言を述べていることがわかる。そして、1970年代の謝罪が相手国を特定していなかったのは適切だと評価する。

しかし、宮澤喜一首相以降は、謝罪の対象を韓国に特定していることが多い。例えば、1992117日、宮澤喜一は韓国を念頭にして次のように発言している。(以下、役職・敬称略)

我が国と貴国との関係で忘れてはならないのは、数千年にわたる交流のなかで、歴史上の一時期に,我が国が加害者であり、貴国がその被害者だったという事実であります。私は、この間、朝鮮半島の方々が我が国の行為により耐え難い苦しみと悲しみを体験されたことについて、ここに改めて、心からの反省の意とお詫びの気持ちを表明いたします。最近、いわゆる従軍慰安婦の問題が取り上げられていますが,私は、このようなことは実に心の痛むことであり,誠に申し訳なく思っております。

下線の部分に注目されたい。宮澤は、日本を加害者とし全面的に日本に非があったと認めているわけだが、彼は本当にそう信じていたのだろうか。

宮澤は1919年(大正8年)の生まれで、1942年(昭和17年)に東京帝大法学部政治学科を卒業し大蔵省に入省した。言うまでもなく、戦前の教育を受けた世代である。昭和10年代の日本は軍部独裁で、以前にこのブログに書いたように、「鬼畜米英」「八紘一宇」「内鮮一体」などのスローガンを掲げ、勝利を信じて人心が統一されていた。

終戦後、GHQによるWar Guilt Information ProgramWGIP)によって日本人は贖罪意識を植え付けられた。GHQは7年で解散したが、WGIPの思想で書かれた歴史教科書は、「日本は戦争を引き起こした悪い国です」と教えているし、朝日新聞・毎日新聞などの左派系新聞もWGIPの思想を受け継いでいるから、戦後世代の多くが贖罪意識を抱いている。

しかし、戦前の教育を受けた宮澤が、WGIPで洗脳されたとは思えないし、朝鮮併合時の経緯とその後の良心的統治については十分な知識があったはずである。したがって、宮澤が“日本は加害者で、朝鮮人に耐え難い苦しみを与えた”と、本気で思っていたとは考えにくい。

ではなぜ宮澤は上記の謝罪をしたのか。私は冒頭に述べた日本人特有の「謝れば丸く収まる」という習性によって、自分の主義主張を横に置いて、韓国との融和を優先したのではないかと想像する。ことによると、韓国政府の意向を汲んだ可能性もあるが、今となっては調べることはできない。そして、宮澤以降の歴代首相たちは、前例を踏襲しただけではないだろうか。

戦後の教育を受けた首相はどうか。民主党政権の菅直人を例にとる。菅は1946年(昭和21年)生まれ、東京工業大学理学部に学び、学生運動に熱中した。戦後のWGIP教育を受けた菅の謝罪の内容は、宮澤謝罪とほぼ同じである。WGIP教育と「謝罪すれば丸く収まる」意識がどのように組み合わさったのかは、本人でないとわからない。

では、安倍晋三はどうか。安倍は1954年(昭和29年)生まれだから、WGIP教育を受けた世代である。しかも、中曽根康弘、橋本龍太郎、小渕恵三、小泉純一郎などの「宮澤式」謝罪を知っているはずだから、同じような謝罪を述べても不思議ではない。しかし、その謝罪は2015年の慰安婦合意で終わり、その後は強硬路線に転じた。

日本的習性であれ、WGIP思想であれ、謝罪したことには変わりはない。しかし、謝罪は決して日韓の外交関係を好転させることはなく、むしろ悪化させただけである。一方、韓国は日本悪者論を拡大再生産しており、その虚像は膨らむばかりだ。朝日新聞は「日本は何度でも謝罪すべきだ」と主張するが、謝罪したら嘘の部分まで謝罪することになることが分かっているのか。謝罪が決して日韓関係を好転させなかったことが分かっているのか。

問題点は、韓国人が膨らませた虚像を正しいと信じていることである。この状況は「反日種族主義」のような自律的修正運動で、徐々に修正されるだろうが、時間がかかる。当分、日本は静観するしかないだろう。