通常、マンションの管理組合は法人税を納めることはないから、税理士とは縁がない。ところが、私が住んでいるマンションでは、一階にある店舗の区分は管理組合の所有であり、そこに発生する家賃収入に対し法人税を申告する必要があるので、税理士のお世話になっている。蛇足だが、数年前そこで営業していた業者が倒産し、当該区分が競売に付されたので、好ましからざる業者が入居するのを防ぐために組合が取得したものである。
さて、数年前、私は家賃入金開始とともに新設された店舗会計の前期の収支報告書を調べていて、経費の過大計上―法人税の過少申告―に気付いた。その詳細は、部外者には興味ないことだろうと推測し、最後の(注)に記述する。興味ある方はご覧になっていただきたい。
その経費の過大計上とは、会計に関する原理・原則とか専門知識には無関係の、単なる勘違いによるもので、明らかに税理士のミステークである。私はそのミステークの詳細をメモ書きにして組合理事長と管理会社に渡したが、黙殺された。税理士がチョンボするなど考えられないことであり、関係者はモーロク爺の妄言と思ったのだろう。無理もないことだが...(笑い)。
翌年6月に配布された前期の収支報告書を見ると、やはり同じミステークが繰り返されている。私は総会の席上でこのミステークを指摘し、管理会社に税理士と相談するよう求めた。これで修正されるだろうと思いきや、今年(2017年)の通常総会に配布された前期の収支報告書でも同じことになっている!
そこで、総会の席上、このミステークを再度指摘して、管理会社の担当者に税理士と相談したかどうか質問したところ、税理士には確認済だという。税理士に相談したのが本当ならば、税理士は自分がミスをするなどとは夢にも思わず、収支報告書の再点検をしなかったのではないか。
それはともかくとして、、出席者全員が私の主張を信用していない様子だ。数字に不慣れな組合員はともかく、管理会社の担当者ならすぐ分かると思ったがが、そうではないらしい。これを放置して、もし税務署が脱税に気付いたらえらいことになる。そこで、私が税理士に書面で事態を説明することになった。
税理士宛て書面を作成するに当たり、店舗会計が発足して以来の収支報告書をすべて精査したところ、それまでに発見していたミステーク以外にも、修繕費に関する計上漏れがあることに気付いた(これで管理費の過剰計上はかなり相殺される)。端的に言って、店舗会計は支離滅裂状態になっているのだ。
自分がチョンボしたなどとは思ってもいない税理士をどう納得させるか。私の書状は釈迦に説法のようなものだから、税理士のプライドを傷つけることになるが、やむを得ない。慎重に言葉を選びつつ文面を作成し、文末にミステークに対するコメントを電話で聞かせてくれるよう求めた。もちろん、書面のコピーは理事長と管理会社に送付した。
書状投函後1週間経過しても電話がないので税理士事務所に電話すると、女性が「担当者は外出中です」という。電話をくれるようメッセージを残したが、翌日の夕刻になっても電話がない。そこで再度電話し女性の取次を経て、電話口に出た男性に自己紹介と用件を伝えてからの会話を再現する。
「担当者は外出中です」
「では電話をくれるようお伝えください」
「いや、電話はしません。お話する相手は組合の理事長です」
なにこれ?! 話している相手はN税理士(彼の名誉のために、実名は伏せる)本人らしい。ことによって、彼はミステークを認めないつもりなのか。
「わかりました。理事長にそう伝えます。しかし、場合によっては私が税務署に相談しますけど、よろしいですね」
「どうぞ」
ということで、会話は数十秒で終了した。
N税理士のセリフの言外の意味は「余計なことをしやがって、このヤロー」だろうか。だが、彼の言うべきセリフは「お説の通り当方のミステークです。お蔭様で恥をこれ以上繰り返さずに済みます。有難うございました。さっそく、しかるべく処理します」ではなかったか。
さて、店舗会計を過去4-5年に遡って修正すると、法人税の修正申告が必要になるのはもちろんだが、連動している管理費会計など全ての帳簿を修正しなくてはならない。収支報告書の修正は組合の総会で承認を得るのが筋だが、それではN税理士を選任した管理会社はもちろんのこと、誤りに気付かなかった組合執行部も、メンツ丸潰れになる。N税理士はとんでもない罪作りをしたものだ。
所感: うっかりミスを修正するのに何年もかかるとは、難儀なことだ(笑い)。、
終
(注)店舗会計の主たる経費項目は、〈固定資産税〉、〈減価償却費〉及び〈店舗区分が負担すべき管理費と修繕費〉で、ミステークが発生したのはこの内の「店舗区分が負担すべき管理費」である。
管理費の各項目から、植栽費・町内会費・小口修繕費など、店舗に無関係の経費を差し引いた残額を対象として、店舗区分の負担率を掛けて店舗会計が負担すべき金額が算出してある。それは理に適っているが、その一方で管理費総額に対して店舗区分の負担率を乗じた金額も経費計上されている。これは余分であり、経費の過大計上すなわち法人税の圧縮になる。
分かりやすい例を挙げよう。 飲み会の幹事が参加者全員一律の会費を前金で徴収する一方、アルコール類を飲めない参加者には料理代金の割り勘金額だけを請求することにした。その結果、その飲めない参加者は均一会費プラス料理代金の割り勘分を支払うことになった。これが誤りであることは明白で、正解はその参加者には前金の一律請求を免除することであるのは言うまでもない。