韓国の日本ボイコットは、韓国人観光客の激減など日本経済の各分野にその影響が目立ってきた。言うまでもなく、日本ボイコットは文大統領の「日本の輸出管理強化は不当である」という非難に呼応するものであるから、日本としては文大統領の振り上げた拳固が行き場を失うように対処すべきであろう。
日本政府は去る7月に半導体材料3品に関する輸出優遇措置廃止を打ち出したとき、「韓国に不適切な事案があったからだ」と説明したが、それでは抽象的で、文大統領に「理由もなく」と批判される隙を与えた形になった。
では「不適切な事案」とは何か。頑固爺の知る限りでは、次の(A)と(B)である。
(A)韓国から日本に再輸出(返品)されたはずのフッ化水素約40トンを日本が受け取っていないという事案
https://www.youtube.com/watch?v=RitfhWKRETA&t=10s
日本の大手マスコミはこの件を報道していない。しかし、桜井よしこ氏が「週刊新潮」(8月29日発行)に寄稿した「8・15文演説、反日の嘘と歪曲」と題する小論の中で「日本が韓国をホワイト国から外したのは、日本が韓国に輸出してきた大量破壊兵器などに使用可能な戦略物資が大量に行方不明になっている件について、韓国側の説明がこの3年以上ないからである」と述べている。この発言から判断して、桜井氏は彼女独自のルートを通じて、(A)の情報を把握していると思われる。
かりに、桜井氏が言うところの「行方不明になった戦略物資」とは、(A)のフッ化水素40トンとは別件としても、大筋としては同じことである。
(B)韓国政府が発表した過去数年にわたる不正輸出の明細リスト
これは雑誌「正論」9月号に掲載され、このブログでも8月21日に「輸出管理を怠る韓国」の中で論じている。しかし、この(B)は韓国側の輸出における不正であって、日本が韓国を「信頼できない」と判断する一つの材料にはなっても、これを輸出管理優遇措置廃止の主な根拠とするには無理がある。
したがって、日本政府がいうところの「不適切な事案」とは(A)だと推測するが、ほかにも類似の案件があるのではないか。それを具体的に示すことで、文大統領の「理由もなく輸出管理を強化した」という非難に対抗できるはずだ。
文大統領が輸出管理優遇措置の撤廃を不当であると主張するもう一つの根拠は、「自由貿易という大原則に反する」であるが、これについては逐次該当品目の輸出を許可すれば、この措置は自由貿易の大原則とは無関係になるから、日本政府は粛々と輸出申請を許可すればいいだけの話である。
結論として、文大統領が日本を非難する根拠はこれで失われ、日本ボイコットも大義名分がなくなる。だからといって、文大統領と市民団体が簡単に引き下がるとは思えず、次の局面に入るだけの事だろうが、それでも日本政府にはやるべきことをやってもらいたいと願うのみである。