さて、何人かでレストランに行ったとしよう。
で、あなたがワインリストから、セレクトして頼んだとします。
ソムリエは、当然、あなたにグラスを渡しホストテストを頼みます。
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この場合、テイスティングなんて儀式だから、味も何も分からずとも、
「よろしんじゃないですか」などのたまわりながら、おもむろに頷く。
ふつうは、こうですよね。
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ところが、一度こんなことがありました。
打ち上げで10人ほどでレストランに行きました。
中にワイン通のカメラマンがおりまして、彼がワインリストを手に
あれこれ、ぶつくさ言いながら乾杯のワインをオーダー。
ホストテイストは、当然、彼。
「これは、おかしい。別のを持ってきてくれ」。毅然と申し渡す。
これにはソムリエ(だったと思う。あるいは単なるボーイさんか)も、
我々もびっくり。一瞬にしてシーンとなった。
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レストランばかりじゃない。
友達の家でも、我が家のかみさんにも
「これは、おかしい。別のワインを持ってきてくれ」なんて、
キャンセルしたことも、言ったこともない。
あれが最初で最後の、まさに "ショーゲキ" の出会いだった。
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ところが、これって結構あることらしい。
ワインクーラーに入れておいても一年が限度という話を聞いた。
地下室に保存するのが一番とか。
保存状態によっては、一流どこのお店といえども安心できない。
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でも、気が弱く、決して通じゃない私は、
どんなにヘタっているワインでも、OK出しちゃうなぁ。
「キミ、これはダメだね。別の持ってきてくれんか。」など、
いちど、高級レストランで言ってみたいものだ。ムリだろうなぁ。
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あの時のあの打ち上げ、
どんな料理を食べ、どんな話をしたか、どんなことがあったか、
まるで覚えていない。
「これは、おかしい。別のを持ってきてくれ」のシーンだけ残っている。
そして、なにか後味が悪かった気持ちだけが、へんにザラついている。
そう言えば、なぜか、そのカメラマンとも一回きりの仕事だった。
なぜか、あれから、そのレストランにも足を運んでいない。
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あのひとことが、すべてをぶちこわしちゃったのだろうか。
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