のんびり主婦のPCライフ

黒柴「ころたん」の平凡な暮らしと、
散歩と読書の記録です。

超・殺人事件 / 東野圭吾

2002-04-30 | 読書(~2005.09)
新潮エンターテイメント倶楽部

作家や書評家、編集者など、小説の世界を題材にした8つの短編集
それぞれに意図があって、オチも唸ったり笑ったり・・・ 
「超」がつくのはいかにも時代の流れ?
「超税金対策殺人事件」 「超理系殺人事件」 「超犯人当て小説殺人事件」
「超高齢化社会殺人事件」 「超予告小説殺人事件」 「超長編小説殺人事件」
「魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)」 「超読書機械殺人事件」

「う~ん、なるほど・・・」短編の中でも短い文章なのに、それぞれの問題が上手くまとまっているので、あっという間に読めた一冊。私が特に面白かったのは「超高齢者・・・」「超長編小説・・・」あたりで、おもわず苦笑いしてしまった。(02/04/30)


クリスマスの4人 / 井上夢人

2002-04-25 | 読書(~2005.09)
光文社

1970年のクリスマスの夜、当時20歳だった男女4人はドライブに出かけ、無免許の百合子が人を轢いて相手の男を死なせてしまった。4人は慌てて、その男を山中に運び隠した。その時、男の持っていた200万円を持ち帰るという最悪の状態で・・・ それから10年ごとのクリスマスに4人は再会する。絹枝とジュンは結婚し、塚本は立派な研究者になり、百合子も夢をかなえて仕事をしていた。その4人の前に、10年前に殺したはずの男が現れる。男は確かに死んだはずなのに・・・ 4人はその後もその男の影に悩まされていく。

ちらちらと見える死んだはずの男の影! どんな結末を迎えるのかとどきどきしながら読んだ。10年ごとのクリスマスに同じ格好をして現れるだなんて、ミステリーだわ! と思っていたのだが、ラストに向かうにつれて私はちょっとトーンダウン。違う結果が良かったなぁ~、などと思ったりして・・・(02/04/25)


お喋り鳥の呪縛 / 北川歩実

2002-04-23 | 読書(~2005.09)
徳間書店

フリーライターの倉橋は妹とともにオウムを題材にした「愛を運ぶオウム」というシナリオを書き、新人賞に応募した。ある日、その作品が最終選考には落ちたが、ぜひドラマ化したいとの連絡が入るが、その時には、妹は交通事故で意識不明の状態だった。結局、倉橋がそのドラマ化のシナリオを手がかけることになったが、ストーリーのモデルとなっている会話できるオウム「パル」の研究所のまわりで、次々と殺人事件が起きるようになる。事件の裏にはある研究所に携わる複雑な人間関係と、パルに関わる利権の問題を倉橋が追究していくが・・・

久しぶりの北川作品を大きな期待とともに読んだが、感想としては??? 以前読んだ「猿の証言」がお気に入りの私には、ちょっと物足りない内容だった。いや、「会話できるオウム」「そのオウムを自在に操れる若者」「記憶を失った少女の催眠治療」「少年時代にわいせつ行為で逮捕された少年の記憶の欠落」「新興宗教で命を奪われそうになった子供の記憶の操作」といくつものキーワードがあるのに、どれもが中途半端な感じがしてしまった。それに主役であるはずの「バル」がいつのまにか作品から消えている・・・期待が大きかっただけに、ちょっとガッカリな読了感だった。(02/04/23)


とり残されて / 宮部みゆき

2002-04-18 | 読書(~2005.09)
文藝春秋

不思議な体験を集めた短編集。
◆とり残されて  小学校の保健室に勤務している「わたし」には殺したいほど憎い人間がいた。それは婚約者を交通事故で奪った加害者の女性だ。どんなふうにして、殺そうかと妄想にふけるほど・・・そんなとき、保健室の前に子供の足音が聞こえるようになり、声につられて行ったプールで女性の死体を発見する。その女性は過去にこの学校の教師だった。犯人は「わたし」を導いたその子供なのだろうか?
◆おたすけぶち  10年前に友達とドライブしていた兄が、交通事故死した。友達3人の遺体は発見されたが、兄だけは発見されていなかった。妹は事故のおきた「おたすけ淵」という険しい山道を訪れ冥福を祈ろうとしたが、立ち寄ったみやげ物屋の草木染めのハンカチに兄の名前を発見する。それを作っているのは、「おたすけ淵」のさらに奥の小さい集落だった。
他に「私の死んだ後に」「居合わせた男」「囁く」「いつも二人で」「たった一人」

この手のストーリーは説明が非常に書きづらい。要点を書いているつもりでもほんの冒頭部分しか紹介できず、何をどこまで伝えたらいいのか悩むところだ。私がこの短編の中で好きなのは「おたすけぶち」。自分の想像したような展開になるが、ラストは怖い。これはホラーのよう・・・(02/04/18)


オカルト / 田口ランディ

2002-04-15 | 読書(~2005.09)
メディアファクトリー

タイトルは「オカルト」でも怖い話ではなく、感じたままを綴ったような短い話が35も綴られている。短編のようであり、詩のようであり、エッセイのようであり・・・ 超常現象や幽霊ではなく、人が「生」と「死」をいつでも意識し、感じていることが伝わってくる。

田口ランディという人は実に興味深い人だと、あらためて感じさせられる。私は彼女の作品が好きなのか嫌いなのか、自分でもよく分からないところがあるが、避けては通れない人。文章同様、不思議な人だ。(02/04/15)


蒲生邸事件 / 宮部みゆき

2002-04-13 | 読書(~2005.09)
毎日新聞社

孝史は予備校を受験するために、さえないホテルに宿泊していた。その夜、ホテルが火事になり孝史は必死で逃げて誰かに助けられたが、気づいたら場所が変わっていた。そこは陸軍大将蒲生憲之の邸宅、そして時代は昭和11年2月、まさにこれから2・26事件が起ころうとしている矢先だった。孝史を助けたのは「平田」と名乗る時間旅行人、2人はタイムスリップしてきたのだった。孝史はそこで知り合った奉公人のふきに淡い感情を抱ききつつ、その大将の自決に疑問をもち、邸内の人々を観察しながら自分の置かれている立場を自覚していく。元に戻る日、孝史はふきを誘うが彼女には彼女の生き方があった。そして2人は50年後の再会を約束する。

なんとも心温まるストーリーだった。孝史のとまどいと、それに関係なく歴史が動いていく状況が伝わってきて、十分に楽しめた作品だった。2・26事件、歴史に詳しくないので、読みながら勉強させてもらった感じだ。孝史とふきの約束、現代に戻った孝史にはわずか2か月、ふきにとっては50年という長い歳月だが、お互いに忘れられない人として記憶に残っていく。ラストには思わずホロリ・・・ 「時間旅行」とてもステキな言葉だ。(02/04/13)


恐怖に関する四つの短編 / 小池真理子

2002-04-10 | 読書(~2005.09)
実業之日本社

日常に紛れ、迷い込んでしまうかも知れない恐怖を題材にした短編。
◆倒錯の庭  都会から田舎に越してきた女教師は、古い家に住むが、庭の手入れにきた若い庭師と親しくなる。しばらくして彼女が日常で不満に思っていることを口に出すと、それが解決に向かうようになる。物であったり、人であったり・・・
◆罪は罪を呼ぶ  病気の男を助け車で送ってあげようとした夫が、ひき逃げをした。のちに事故を目撃していなかったはずの男から恐喝されるようになり、医師という立場を利用して夫はある計画を実行する。
◆約束  美人作家の熱狂的なファンは、アルバイトの手違いで同姓の女性の電話番号を手に入れた。間違われた女性が10年前に不倫相手と約束したこと。それは「10年後、お互いに一人だったら一緒になろう」その約束が叶えられる直前に、彼女の身に危険が迫る。
◆暗闇に誰かがいる  人気モデルの妹と普通のOLである姉は、知人の別荘に宿泊するが、その夜、妹が怪我をして病院に入院した。病院からの帰り道、車の故障を助けてくれた男性は、とんでもない殺人鬼だった。

小池さんは恋愛小説もいいけれど、こういう短編の怖い話もなかなか良い。この中では「約束」が一番好きだ。人の危うい部分がもたらす悪気のない過ちが、他人の運命を変えてしまうことに対する恐ろしさ、かなり前に発表されたストーリーだが、面白かった。(02/04/10)


群青の夜の羽毛布 / 山本文緒

2002-04-05 | 読書(~2005.09)
幻冬舎

教師である厳格な母親、病弱なので家事手伝いをしている長女さとる、自由奔放で今どきの若者である次女みつるは坂を登った一戸建てに3人で暮らしていた。父親はいない。さとるに鉄男という恋人ができた。だが、門限10時を異常なまでに気にし、食事中にひとことも言葉を発しない家庭の雰囲気に、鉄男は違和感を感じていく。母親は絶対的な存在であり、さとるは怯え、みつるは絶えず反発していた。鉄男はさとるを愛しているからこそ、その家を出ることを勧めるが・・・

厳しい母親と姉妹という関係は、世の中には多々あるだろうが、この家庭は厳しい。何が厳しいかといえば、こんな家庭になってしまった経緯の救いようのないこと。どこでボタンをかけ違えたのか、どこで分かれ道を誤ったのか・・・ ラストに明らかになるその答えにゾクリとさせられてしまった。ホラーよりもミステリーよりも、ジワジワとした恐ろしさがある。(02/04/05)


火群の館 / 春口裕子

2002-04-04 | 読書(~2005.09)
新潮社

大学時代からの友人である明日香と真弓は丘の上のマンションで共同生活を始めた。明日香は司法試験を目指し勉強に明け暮れ、さっぱりした性格の真弓と楽しい生活が始まる筈だった。ところが入居してすぐに明日香は部屋の異常に気づく。そして、同じ階の住民にもどことなく違和感を感じていた。しばらくすると、大学時代に仲の良かった友人で特に真弓と親しかった浩太郎が突然失踪してしまい、その後、真弓が風呂場で変死した。そして、マンションの部屋で次々と不気味な現象を体験するようになった明日香と恋人の秀の身にも危険は迫っていく。その一連の事件の裏に隠されていたのは、以前その場所で起きたマンション火災だった。
第2回ホラーサスペンス大賞・特別賞受賞作。

部屋にまつわる異常現象というのはホラーでは定番ではあるが、やはりとても気味が悪いもの・・・髪の毛、蛆虫、鏡、どれをとってもゾクリとする。一人暮らしなどしていたら、ふと思い出して怖くなってしまうかもしれない。人間は自分の何気ない行動が、他人にとっては大きな迷惑をかけていて、それが取り返しのつかないようなことになり得ることを意識していない。明日香たちも、そして私も・・・ そんなところに隠された恐怖がある。(02/04/04)


夜陰譚 / 菅 浩江

2002-04-02 | 読書(~2005.09)
光文社

「闇の美学」「女の狂気」を題材にしたというホラー短編集。
◆夜陰譚  容姿が醜く変身願望の強い女性が、不思議な路地に入り込んでしまった。そこで見た世界は、電柱に傷をつけることから、自分を変身させていく幾人もの人の姿だった。
◆つぐない  ドメスティックバイオレンスを取材するライターの典恵は、心に傷を持つ津和子の協力を得た。取材はうまく進んでいったのだが、次第に彼女の常識を外れた行動に悩まされいく。
◆贈り物  誕生日に彼からもらった「人魚のうろこ」。彼女は部屋でうろこから人魚の声が聞こえることに気づく。
◆白い手  同僚の香津実のきれいな手にひかれたやり手の敦子。香津美は仕事はできないが人を和ませる魅力があったのでコンビを組んだが、だんだんと能力を見せはじめていく。
◆雪音  部下に厳しく、いつもとげとげしていた女社長は、雪の日にある女性に出会ってから、自分でも思ってもいなことを口走るようになる。
その他、「蟷螂の月」「和服継承」「桜湯道成寺」「美人の湯」

どれも怖い話、過激な描写ではないのだけに、じわりじわりと押し寄せてくる狂気が、なんとも恐ろしい。この短編集、主人公は女性だ。女性ならではの容姿に関わる意識や、着物を題材にしたはかなさや色気がうまく絡んでいて、それが絶妙なスパイスになっているかも。幻想や情念という形のないもの、それが読み手の想像力をさらに引き出していく。(02/04/02)