鯖トラの歯を磨いた。 . . . 本文を読む
鯖トラがするすると奥の方へ入って、ふくらはぎを枕に落ち着いてしまうと、腕枕が空くから、雉トラは思うままに腕枕をひとり占めしてくねくねと甘えていい気になる。
それがその日は先に雉トラが腕枕に落ち着いた。
後で来た鯖トラが奥へと潜り込もうと、雉トラの後ろだか前だかで落ち着こうと、どっちだっていいからさっさと潜り込んでおいでとばかりに、もぎゅもぎゅと抱きかかえるその腕の中で、雉トラがばしばしばしばし . . . 本文を読む
電話の向こうには婦人。
道を聞きたいことと、落し物が届いていないかについてを話しました。
落し物の届なら電話でできるからでしょう、それと整理されていない電話の内容で、
落し物の届けですか?
落としたか、どこかに置いてきたのか、分からないのです。私ではなく、ここまでご婦人を案内してきたものですから。
ちょっと歩いて帰るには遠いと思うのですが、帰る道に迷われたそうで、でも遠くから出てきたのではない . . . 本文を読む
フリースのジップアップの上着を着ていた。
その胸に鯖トラはやってきてうずくまった。
寒い日で、そうしていると互いに暖かいのだけど、ふわふわの猫を背はなんだか私より寒そうに見えた。
ジッパーを降ろすのは、鯖トラにとってとても煩わしい動作で、もじもじとお尻を動かして後ろ足を踏みかえていた。開いた前を鯖トラの背を覆うように閉じようとすると、ひどく苛立ってかぷかぷと右へ左へと私の拳を噛んだ。
それでも、そ . . . 本文を読む
ひじかけ椅子に座ると鯖トラがやってきて椅子の隙間にあがりこんでくる。
電車の椅子の隙間にお尻をねじこむおばさんみたいに・・・
あたしは、ちょっとゆずる。
ちょっとずつゆずって、こちらのおしりが半分浮いたようになって居心地が悪くなる。そこで猫の割り込んだほうへと体を丸めて、小さすぎるベッドに丸くなるように、猫を抱くように姿勢を変えた。
二の腕に頭をもたせかけてくつろいでしまった鯖トラの頭が、な . . . 本文を読む