『こんちわ、まだ家にいたね翁さん。山菜を探して一回り山を歩いてみたが、オケラだわ。それよりも体が動かなくなって、気力だけでは、もう山歩きは駄目だな、ハハハハ』、『おや、恒治さん、墓地の近くには10年ほど前までコゴミがあったが、いつの間にか絶えちゃって。その奥の竹井さんの山ではワラビが採れたがな。・・・熊騒ぎはどうなったのかな。・・・お互いに転けるようになって、ハハハハ』
『いろいろな人と接していて、男性の場合、やれ稲作は止めた、建具は終わりだ、家業は倅に任せたと言う年齢が概ね77歳、生理的な限界とでも言うのか、ハハハハ』、『なるほどな、俺はウオーキングをしているが、その年頃から気持が萎えて歩く距離が落ちたな。将棋の最年長棋士の加藤一二三(ひふみ)九段が引退をしたのも77歳だよ。老後の曲がり角なのかもな、ハハハハ』
『そう言えば、77歳は喜寿だな、この年になれば欲しいものという概念が薄れてきて、大方が精神的にも満たされているだろうから、達観をしてくるのだろうな』、『どんな時でも平気で生きることは難しいわ、ハハハハ。山菜、山ウドはあったが、ワラビ、ゼンマイ、タラの芽が見当たらない?、温暖化の影響もあるかもな。俺も沢などでセリを探してみるが見当たらないわ。水質の汚濁?かもね』
『いやね新聞に載った「全国学力テスト」、この頃の小中学生はレベルの高い勉強をしていて、俺らには難しいよ。しかし常識が欠如していて、人間形成には教育が役立っていないわ』、『いやね、その子どもは食事をしながら手にはスマホだそうで、物理的に食事を口に運ぶ、味覚が劣化をしてきているそうだな。世代間格差が広がりすぎて、孫たちと意思疎通も出来なくなって、困ったことだ』
あとがき==高齢者間の意識の格差も広がっているとか、老いに向き合う姿勢、生きる強さの意識がね、ガハハハ==放念の翁