11月27日、行政院直轄の5都市で、市長および議会の選挙が行われます。(関係過去記事)
台湾政治において大きな影響力を持つ直轄市長ポストをめぐり、与党・国民党と野党・民進党の熱き戦いが既に始まっています。
前回は、一足早く5都市の市長公認を決定した国民党について、市長候補者をご紹介しました。
今回はその第二弾、民進党の候補者についてご紹介いたします。
国民党から遅れること約二週間、5月25日、公認候補者発表が行われた
スローガンは「5都市に全力 団結し再び立ち上がれ」
現職の陳菊・高雄市長
パンチパーマ(?)とアンパンマンのような真ん丸い顔が特徴の陳菊・市長。この6月10日で満60歳になります。
台湾でも放送されている日本のアニメ「あたしンち」の「母」に似ていると言われていて、その分かりやすい特徴を強調したオリジナルのキャラクターグッズが人気です。
その昔、民主化運動によって投獄された経験を持つ陳・女史は、ジャケットやスカーフなどにいつでも必ず、民進党のシンボルカラーである緑色を取り入れています。
現行の直轄市の現役市長という有利な立場を生かして、現職の楊秋興・高雄県長とのすさまじい公認争いを制しました。(関係過去記事)
民進党の地盤である高雄で、抜群の知名度を生かして国民党の女性候補者と「女の戦い」に臨みます。
台南市長候補の頼清徳・立法委員
もしかすると日本の方が彼を目にするのは初めてかもしれません。 台南市選出の立法委員、中堅の代表的存在ですが、こう見えても(?)50歳。
陳水扁・前総統の出身地として知られる台南は民進党が非常に強い地域として知られています。が、逆に言えば、台南にはそれだけ党内のライバルが多いという事にも。
頼氏は米ハーバード大で学んだエリートで、冷静かつ理知的な物言いで次世代リーダーとして注目を集めています。
今回、党内予備選で、現役の台南市長・台南県長を破り公認を獲得しましたが、土着系の人物を好む年配の支持者などからは「軟弱」と見られる事もあり、今後の戦いでどれだけパワーを発揮できるかが見所でしょう。
台中市長候補の蘇嘉全・秘書長
国民党の実力者、現職の胡志強・台中市長が相手とあって台中市長候補はなかなかの難産でしたが、民意調査などで蘇嘉全・秘書長(53)に決定。
秘書長を務めた短い間に発揮した統率力や有権者からの人気が決め手となりました。
蘇氏は落下傘で厳しい勝負が予想されますが、南部・屏東県の県長を務めた経験があり、県政運営には定評があります。
この日は「黒道(ヤクザ)ばかりが有名だった屏東を、黒マグロの里に生まれ変わらせた実績を、台中でも発揮したい」と意気込み。
屏東は今では台湾一の黒マグロ漁港として知られ、また本人の見た目(?)も手伝って市民からは「黒マグロ」のニックネームで親しまれています。
台中市では最近、暴力団絡みの治安悪化が問題となっており、その昔「黒道」一掃に力を発揮した蘇嘉全氏は攻勢を強めています。
台北市長候補の蘇貞昌・元行政院長
日本の方にもおなじみ、光った頭とよく通るダミ声が特徴、「電火球(電球)」のニックネームで知られる蘇貞昌・元行政院長(62)は、首都・台北市に挑みます。
台北県(新北市として直轄市に昇格)では、同県県長出身の蘇貞昌氏の人気が根強く、当初は再度新北市長に、との呼び声が高かったのですが、蘇氏はあえて、国民党の強い台北市への出馬を選びました。
厳しい戦いと見られていますが、「総統への階段」と言われる台北市長選挙で惜敗すれば総統候補、というのは民進党の定石。
蘇氏が新北市に出てくれれば、高雄・台南と合わせて5都市のうち3都市は取れる可能性が高かったため、党内からは恨み節も出ましたが、蘇氏は「安全パイを狙うより勝負に出るべき」と気勢を上げ、次回総統選のための行動ではないと主張。
いずれにしても、台北市は注目選挙区です。
新北市長候補の蔡英文・主席
さて、5月中旬が過ぎてもなかなか5都市市長公認候補が決まらなかった民進党ですが、最後に出てきた爆弾がこちら。
日本でも大きく報じられましたね、蔡英文・主席(53)は、新北市(現台北県)の市長選挙に出馬する事になりました。
本人は当初、主席業務に専念したいとして固辞していたと伝えられていますが、蘇貞昌氏が台北市への参戦を宣言してしまい、新北では蔡・女史以外に当選見込みのある候補がいなくなってしまいました。
党内からの強い勧めもあり、最終的に、5月23日の主席選挙で9割以上の得票率で再選された事を機に、「より責任ある立場を引き受けけねばならない」と出馬を表明。
学者出身のテクノクラートから党主席になった蔡英文・女史は、党歴も浅く、選挙経験はありません。
民主化運動や体制外活動というバックグラウンドを持つこれまでの民進党の政治家とは異なる蔡英文・主席のイメージは「新しい民進党」の武器でもあったのですが、党内には「選挙の洗礼を受けねばならない」との声も強く、とうとう新しいチャレンジの時が来たようです。
無理やり仕向けられたのでは、との憶測も消えませんが、とにかく「小英(蔡英文・主席のニックネーム、英ちゃん、というような意味)」の初めての戦いに、大注目が集まっています。
発表会の最後はやっぱりこれで締める
5人の候補が手をつないでスローガンを連呼
日本の「万歳三唱」とか「337拍子」みたいな感じなのかな?
与野党の候補が全て出揃い、台湾は本格的な選挙モードに突入しています。
直轄5都市の人口は、台湾の全人口の約6割、全有権者の半数以上を占める大選挙。
時には賑やかすぎる気もする台湾の選挙ですが、これが台湾の原動力でもあるのです。
あと半年、与野党双方がどういう戦いを見せてくれるのか、楽しみです。(華)
6/7の「数字の台湾」では、民進党の立候補者について詳しくご紹介しています。
顔を覚えたら、次はぜひ声を聞いてみてください!
↓6/7の日付からどうぞ!
なんとなく賢くて可愛らしい感じがする名前です。
アメリカの中間選挙で野党共和党が勢力を回復し、日本も日本で年明けに大きな政治的変化が起こりそうな雰囲気が日増しに強まってきていますが、台湾についても同様の気配が感じられ、興味深いところです。