風の回廊

風を感じたら気ままに書こうと思う。

カオスの中で

2011年05月17日 | 政治・時事
福島第一の状態と放射線物質の拡散とその危険性について、ネットを見ると日本中で酷いカオス状態に陥っていることが判ります。ネット人口が、どのくらいなのかよく解かりませんが、きっと良い影響も悪い影響も与えていることは間違いなさそうです。
自分も含めて、自分の反省も込めて、自己批判という意味合いも込めて、予定を変更して取りとめもなく書いてみようと思います。

まず……
◆東電や保安院は、福島第一の現状について、言われているような酷い隠蔽を行っているのか?

メルトダウンを先日東電が認めたことで、「これまで発表してこなかったのは隠蔽だ!」という声がいまだに凄いのですが、3月12日の保安院の記者会見で、当時の審議官、中村氏が、震災直後電源喪失状態が長く続き冷却機能が失われ、水位が下がり空焚き状態のとなり、「燃料棒を構成する炉心が融けている」可能性を示唆しました。後日中村氏は、「世間に不安を与えた」として更迭されたわけですが、このことから震災当日の11日にはメルトダウンが起っていたと推察できるわけです。
さらに14日だったか19日だったか、枝野官房長官も例によってひじょうに慎重な言い廻しで「燃料パレット溶融」に言及しているんですね。
さらに、僕が読んでいる東京新聞では、東電、保安院、政府側からの資料と記者会見から、毎日炉の様子が判りやすく書かれています。
それによれば、1~3号機の長さ約4mの燃料ペレットのうち、30~50%が、水位が満たされることなくずっと露出したままです。
このことは何を言っているかと言えば、30~50%の燃料ペレットが溶融している。溶融すれば必然的に下にさがる。つまりメルトダウンしている可能性が極めて高いことになります。
だから僕は、早い段階で「メルトダウン進行中の可能性がある」書いたわけで、これについては、「隠蔽している」とは思いませんでした。

おそらく「メルトダウン」という解釈が、そうさせたのでしょう。
世界的には、炉心の一部が破損、溶融し下に落ちればメルトダウンです。しかし、日本の多くの人たちは、「炉心が100%溶融し、圧力容器の下に溜まる」のがメルトダウンと認識しているのでしょう。しかしこの場合は「フルメルト」です。
東電はフルメルトをメトルダウンとしたかったことが窺えますが、保安院は世界的な解釈をしたかったことが窺えます。

ではなぜ、正式な発表が遅れたかと言えば、「水位計」が、まともに機能していなかったからで、人がようやく1号機に入れるようになり、そのことが判り、「補正、修復した後の水位計はゼロを指していた。すでに2ヶ月近く経っているのだから、メルトダウンしていないはずがない。フルメルト状態にあるのではないか」そこで、「1号機は、メルトダウンしていると推測される」という発表になったわけです。
ここでも、明確に言えないのは、誰も炉の中を見ることができないからで、当たり前と言えば当たり前です。
スリーマイル島の事故の時は、7~8年経って初めて炉の中の状態が判ったのですから。

人が近づけないほどの、高濃度の放射能状態の中で、頼りになるのは計測器だけですが、その計測器さえ、地震と津波、電源喪失、水素爆発によって正確なのかどうか判らないのだから、「正確な炉の状況を提出せよ」というのがしょせん無理なのです。

つまり、原発そのものがカオスなのだから、せめて、私たちは情報カオスにならないようにしましょう。ヒステリックになったり、過剰に悲観したり、絶望したり。
現場で、命懸けで復旧作業している方たちに申し訳ないですよね。

◆メルトダウンは、この世の終わりなのか?
今日、ツイッターでこんなツイートを見ました。

“『メルトダウン』を『胃の病気』に置き換えると、「胃炎」「胃下垂」「胃潰瘍」など幅の広い疾患の可能性があるのに、そそっかしい人間は最初から「胃癌」と決め付けてかかる”
hologon15 源与一義遠

なるほど、上手い比喩だと思いリツイーとしました。

メルトダウンから、さらに厳しい状況への推移として推定できるのは、ひとつには『再臨界』がありますが、これまで僕が調べた原子力の研究家、学者からは、「まず起こらないだろう。ひじょうに起りにくい」との見解が多いです。
今、3号機にホウ酸を入れていますが、ホウ酸注入は『再臨界』を防ぐのに有効な手立てで、これを受けて「3号機再臨界か!」と騒がれているのが問題……。必要な予防策というのが現状らしいです。要注意は、塩素38(CL38)が検出された時は、再臨界が起っている可能性が高いということ。
4月の初めに、「CL38検出」という東電の発表があり、小出さんを含む多くの学者が、『再臨界』の可能性を言いましたが、後に「CL38は検出されなかった」と東電は誤りを認めています。
しかし、これは小出さんのお手付きで、たとえば『CTBT高崎』(軍縮核不拡散促進センター:国際機関)http://www.cpdnp.jp/のデータや筑波の研究機関では、検出されていませんでした。
だからと言って、小出さんの価値が落ちるわけではありません。

(CTBT高崎のデータは、東電発表のデータを検証する意味でとても貴重です。データはオーストリアの本部に送られ数値化されるので、改竄の可能性は極めて少ないです。目的が、核開発の防止、監視ですから。でも検出間違いはあります。それほど核種検出はデリケートなのです)

いちばん怖いのは、水蒸気爆発ですが、今日本にいるからには、覚悟を決めるしかありません。
騒いだところでどうにもなるものではなく、これについて私たちが言及することは、対応策と現場職員への励ましと慰労の気持ちしかありません。


◆高い場所に設置されたモニタリングポストの値を発表するのは、放射線量の検出値を低く見せようという魂胆なのか?

これもどうやら間違った認識のようです。空間放射線量を計測するには
1)高い建物の傍などでは空中からの放射線が遮断され、計測されない
2)測定場所の地質や地表面の降下物、周囲の建物等のコンクリートなどに存在する天然及び人工放射性物質の影響を受ける

このような理由で、空間放射線量測定は、屋上などが適しているわけで、必然的に高い場所となるわけです。
もし生活空間に近い場所の測定結果が欲しければ、土壌測定や路面測定、小出さんが言うように地上1mで測定することを進言しなければなりません。(地上1mで測定という決まりもあるらしい。詳細は解からない)
ただしこの場合、狭い範囲でもばらつきが起る可能性があります。同じアスファルト上でも、吹き溜まりのような場所と、そうでない場所に開きがあるでしょう。アスファルトの隣りに土壌面があるとすれば、その開きは大きいはずです。

東京都のある一日の測定結果ですが、地上18mの屋上で屋上床からの高さ、1.8m、1.5m、1.0m、0.5mで計測した値と、地上1.8m、1.5m 、1.0m 、0.5mの高さで計測した値は、ほとんど変わりません。

まだまだあげればきりがありません。
『ハワイでこの20年間でプルトニウムの最高値、通常の43倍もの量が検出された』
『3号機は、使用済み燃料プールが再臨界し核爆発が起こった!』

こうしたことが、本気で語られているわけですが、『ハワイで~』は、データの悪意ともとれる誤認であり、『3号機は~』は、根拠の薄い言説です。『3号機は~』は、根拠となった核種(ヨウ素135)の検出が、不検出という誤りだったこと。欧州放射能危機委員会クリストファー・バズビー教授による動画解説の一部に誤訳があったことは間違いなく(直接インタビューした日本人在米ジャーナリストが指摘)、キノコ雲状の爆発雲の印象と誤訳が絡みついてしまい、上手く解けないでいる状況です。

いったん思いこんでしまうと、その人の中では、整理された情報として居着いてしまうんですね。自分でできる検証や精査をすることを忘れてしまう。そして拡散する。それを信じてしまう人がいてまた拡散してしまう。カオスの状況は深まる……

もちろん、今僕が書いたことも間違いかもしれません。それほど福島第一の状況はカオスで、確実なところは判っていないのです。


武井繁明

【朗報‼】
23日参院、行政監視委員会での参考人として、小出裕章さん(京大原子炉実験所助教)、後藤政志さん(原子炉格納容器設計者)、石橋克彦さん(地震学者)、孫正義さん(ソフトバンク社長)が登場します。
マイミクのタケセンさんからの確かな情報です。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1723486577&owner_id=548859

タケセンさんは、私たちが知りえない情報を持っているので、そういう意味でも日記から目が離せません。この決定についても、決定以前から示唆していました。





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