■ UEFA チャンピオンズリーグ06-07 決勝 |
ACミラン(2-1)リバプール ・前半45分 インザーギ(ACミラン) ・後半37分 インザーギ(ACミラン) ・後半44分 カイト (リバプール) |
■ ベニテス、[4-2-3-1]で挑んだ理由 |
◆ACミラン[4-3-2-1] vs リバプール[4-2-3-1]
試合開始時、リバプールのスタメンを確認していたら一瞬「あれっ?!」って思いました。
ミランはおなじみ[4-3-2-1]いわゆる“クリスマス・ツリー”と呼ばれるフォーメーション。
一方のリバプールは、私がCL16以降のリバプールの全試合を見た限り[4-4-2(フラット)]で戦って来ましたが、この試合は[4-2-3-1](図参照)
先週のプレビューで引用しましたが、アンチェロッティ監督(ACミラン)は、『ジェラードが中央に位置した場合は、中盤の中央でのディフェンスが比較的弱くなる』という趣旨の発言をしていましたが、ベニテス監督(リバプール)は、この試合、[4-2-3-1]の「3の真ん中」として中央で使って来ました。
◆ 弱者の戦術
CLベスト16・8(バルセロナ戦やPSV戦)でのリバプールの守備のメカニズムは完璧でした。そして、この試合でもベニテスは、ミランのシステムを研究して[4-2-3-1]で挑んで来たと思います。ミランの攻撃を担うのは、“ピルロ、セードルフ、カカ” この3人です。この3人の攻撃を封じるベストなフォーメーションが[4-2-3-1]です。
準決勝までの[4-4-2]の場合、“DFラインと中盤の間”をセードルフ、カカに狙われる危険性が高く、この2ラインをコンパクトに保ったとしても今度はポゼッション率でミランに支配される危険性をはらんでいます。つまり、ベニテスは中盤でガチンコ勝負に出たのです。
ある意味、ミランのように自分達のシステム貫き通すのではなく、相手に合わせてフォーメーションを変更するベニテスの采配は弱者の戦術とも言えます。しかし、これにより、試合の流れを掴んだのはリバプールでした。また、試合全体のクオリティを見てもリバプールの方が良かったと思います。但し、“戦い”としては、ミランの方が勝っていた、それがこの試合の結果だったと思います。
◆ リバプールの守備で気になったこと
「ミランがDFラインでボールを回している時のリバプールの守備について」
ちょっとここで、自分の記録用として[4-2-3-1]で挑んで来たリバプールの守備で気になった所があったので・・・。この試合、中盤はほぼ互角の状態。(リズム的にはリバプールの方が良いかな?)
ミランがDFラインでボールを回し、(チェルシーのレスティングボール(Resting Ball)よろしく)ビルドアップをする際、FWカイト(リバプール)がプレッシャーを掛ける。
リバプールの守備の陣形は、[4-4]の2ラインでゾーンで守るシステムが構築されているので自然と守備の陣形が形成されていた。よって、ジェラードは、時折、擬似FWとして前線からプレッシャーを仕掛ける。もしくは、バルセロナ戦のように[4-5]の2ラインとして中盤のゾーンを担う場合もあり。
しかし、後者の場合が、非常に守備としては危険を感じさせた。
ミランのDFライン4人にカイトが1人でプレッシャーを掛けると、両SBはポジションの上下運動を楽に行える。それによりサイドでワンツーを使い突破されたり、DFラインからのフィードが楽に行えていた。
リバプールは、前のプレスを掛ける“決め所”が定まらないので、後方のラインも押し上げる事が出来ない。ジェラードが擬似FWとしてミランのDFラインにプレッシャーを掛け(例えばサイドへ追いやる等)るのか?バルセロナ戦の時のようにある程度後方でロックして[4-5]のラインを形成する等して網に掛けるのか?この辺が若干リバプールの守備としては曖昧だった気がする。つまり、守備システムの切り分け・柔軟性に掛けていたように見えた。皮肉にもジェラードを中盤の真ん中で使った事によりこのような事が発生したのであろうか?重箱の隅を突付くような小さな問題かもしれないが・・・
■ サイドという一つの局面 |
◆ 両チームのサイドの攻防
フォーメーション上の齟齬が存在しない場合、次に重要になるのが、局面ごとの個々の能力の違いです。このことが顕著だったのは、サイドでの攻防でした。
前半、リバプールで有効だったのがペナント(右SH)、そしてその対面ヤンクロフスキ(左SB)がミランで有効だったと思いました。しかし、逆サイドは、リバプールのゼンデン(左SH)も予想通り、ガットゥーソ、オッドが待ち構えるミラン陣内右サイドを突破するだけの力はなかったですね。同様、ミランのオッド(右SB)も何度かクロスを上げてはいましたが、正直、怖さはなかった。以前、何戦かでもオッドのクロスの精度が良くないと感じたことはありましたからね。
リバプールの左サイドの問題点が浮き彫りになった事で、後半のどっかのタイミングでキューエルを投入するだろうな?と思っていました。そして、案の定その通りになりました。しかし、ミランリードで前半が終了するとは思いませんでしたね(苦笑)ただ、試合が動いたことにより後半は面白くなるだろうなという期待はありましたね。
■ ACミラン優勝に導いたもの |
◆ 相手のミスを逃がさない抜け目なさ
この試合、前半45分のピルロのFKをインザーギがコースを変えて先制。
後半、前掛かりになったリバプールの後方の守備で一瞬発生した“間”を感じたカカからインザーギへのスルーパスを決めて試合を決定付けた。
このレベルになるとトラップ一つでもミスが命取りになるということが改めて認識させられた試合でした。その一方で高い次元でプレーする選手の基本的なスキルの正確性、そして、度胸といったものが印象的でした。
◆ こっそり?2点に絡んだカカ
ミランの2ゴールは、元を辿れば自分達(リバプール)のミスにより相手にチャンスを与えてしまった、その結果のような気がします。そして、そのミスをゴールへと結び付けたのは、他ならぬACミランの心臓として活躍したカカです。
2点目 後半、リバプールは、キューエル、クラウチを投入して攻撃的な[4-1-3-2]にしてきました。ミランの2点目のシーンですが、一瞬“変な間”がありました。時間帯も時間帯だったので、疲労などによりリバプールの守備もルーズな点がありました。最後、インザーギがDFラインの裏を取った場面ですが、正直、リバプールのCBアッガーが無理矢理オフサイドを取りに行った感がしました(苦笑)この辺は、ちょっとCL決勝にはふさわしくないプレーだと思いました。あれは、インザーギを追っても良いかな?って思いましたし。そもそもカカをあんだけフリーにさせたらダメですよ。(右動画)
リバプールも決してチャンスがなかった訳ではありませんでした。ジェラードがGKと1対1になったシーン。ペナントが2度ほどミランDFのボールをカットして攻撃へ転じたりと・・・
■ 進化し続けるフットボール |
特に、中盤での攻防が激しかったこの試合、相手の攻撃の芽を摘む・・・つまり、守から攻の切替え時(トランジション時)を狙って激しいプレーが多く見られました。
つまり、ボールを持った選手は、じっくり“考え判断する時間”を与えられませんでした。こういう試合展開の中でも、中盤より前の選手よりは、多少“考え判断する時間”が与えられる選手がGKとDFです。この重要性は、昨日今日始まったことではないのですけど、この試合では、それが顕著に見ることが出来た試合だったと思います。
特に、ACミランのネスタ、マルディーニのプレーはそれを象徴していました。
日本代表オシム監督が以前からDFに様々な要求をしていましたが、その一つにこのDFラインからの展開力ってのもあったような気がします。どんどんビルドアップの際の起点の“重要性”がフットボールの進化と共に変化してきたと言えると思います。
正直、ACミランが優勝するなんて誰も考えていませんでした。我々のような一サッカーファンに限らず、プロのサッカー関係者ですらね。ただ、決勝戦にありがちな膠着した試合ではなく、非常にエキサイティングな試合だったと思いました。
他にも色々とポイントがあったと思いましたが、きりがないので、これにて。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。
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日本なら、柳沢やhideを1topにするみたいなものですかね・笑
ミランからは凄みさえ感じ取れました。ここ何年間、ずっとベスト8以上に入っている経験というのは、想像する非常に大きいのかもしれません。
チームプレスの起点カイトとジェラードのツートップに
展開力のアロンソと裁けて守れるマスチェラーノ
オーバーラップが持ち味のリーセ・フィナン
フィジカルより突破力のあるキュウェル・ペナント。
攻撃的布陣なので攻勢でないと活きないのだから良いでしょう。
バランス的にはクラウチ・アルベロアで攻めるか
ベラミー・シッソコでカウンターもあったのでしょうが。
あっぱれでした。
CKも頭でつないでの得点。チームワークと精神力は見せてくれました。
しかも決めたのはカイト。ポストもサイドもヘディングもできる万能FWですが、ベニテスにとってトルシェの鈴木、オシムの巻みたいな選手なんでしょうね。
ミランは先制したおかげで4-3-2-1から4-4-1-1のカウターに専念でき、
カラーゼ・パンカロと穴を埋めて、疲れたFWも変えました。
失点しても動じない落ち着いたボールコントロ-ル、
臨機応変な布陣変更や前線の流動性とそのカバー。
最後に完成されたチームにしていったところが大人のチームだと思います。
左から崩されると思ってアルベロア入れたのに、カラーゼにされてオッドの方から崩されたのは皮肉ですね。キューエルが守れずカイトが追いかけてます。
弱者の戦術ですか。
逆に言えば相手に合わせてしまうと、個の力で勝てないと崩せないんですよね。
ミランはトーナメントのめぐり合わせと、カカーの出来と主力の復帰のタイミングがよかったです。バイエルンに勝ったベスト4の時点でチェルシー次第でいけるかもしれないと思いました。
これでコメントを終わります。
お邪魔しました。
こんばんは、はじめまして。コメント遅くなりすいません。
ご指摘の点については、別に記事を書いている途中ですので、あとでまた読みに来て下さい。必ず、UP出来ますので・・・ただ、3回くらいは書き直しながら、試行錯誤中ですけど(苦笑)
こんばんは、連名で失礼します。御三方のコメントの返事として、新たな記事を現在書いています。多分、0時前にはUP出来ると思います。それでコメントのお返事とさせていただきます。
こんばんは。
もう一度、試合を見直しましたが、後半は、おっしゃる通りミランは大人のサッカーです。無理をしないでの追加点・・・
リバプール(ベニテス)はやはり攻勢で行きたかったのでしょうかね~?CSKA352さんが前のエントリーのコメントに書いてくれていたカウンターというプランはなかったのでしょうかね?でも、カウンター狙いじゃなかったからこそ面白い試合になったような気もします。
カイトのゴールが決勝点になってリバプールが勝利していたら、ドラマティックだったんでしょうけど、相手がリアリストでしたね(苦笑)
動画ですが、とりあえずyoutubeは、gooブログが対応を開始したので入れてみました。
これらの作業によりレスが遅れてしましました。すいませんでした。ただ、今後は図解と併用していくつもりです。