ザック、ザック、ザック・・・。数日前に降った雪。動物の足跡もまだついていないバージンスノウが広がる静かな森の中に、アイゼンが大地を踏みしめる音が響く。昨日までのどんよりとした灰色の空とは打って変わって、抜けるような青空。まるで私たちの山行を祝福してくれているようだ。
今日は私のアイゼンデビュー。生まれて初めてアイゼンをつけて歩く。ふかふかの雪の上は気持ちがいい。でも雪が少ないところでは、直接、石や木の根にのってしまうと足首がよろけて捻挫しそうになる。「危ない危ない、気をつけて気をつけて」そう自分に言い聞かせながら歩く。何度か滑って雪の上に倒れる。20センチから30センチの積雪のところは登山道がはっきりしない。でも大丈夫。7人のパーティで、他のメンバーはベテランばかり。
見渡せば遠くに真白き富士。急坂を登るごとに、周りの山々が低くなっていく。この快感。コースタイム4時間の予定の戸倉三山ならぬ戸倉二山だったが、思いがけない雪で6時間の山行になった。それでも恵まれた条件の中でのアイゼンデビュー。先輩方と晴天に感謝、感謝。