読書メモ
タイトル:歌われなかった海賊へ
作者:逢坂冬馬
出版社:早川書房
第二次世界大戦末期のドイツ。ナチの体制に疑問を持った若者4人が、体制を打ち倒すというような高邁な思想のためではなく、ただ自分たちの好きなように生きたいという理由で反体制的な行動をとるようになる。国策で禁じられている徒歩旅行を実行していく中で、その若者たちは山の奥に設置された強制収容所を発見する。そして、ある計画を実行するのだが、一般の人々は、そこに収容所があることを知りつつも冷淡な態度をとる。普通の善良な市民たちがである。この辺の人々の心情が手に取るように描けていると思う。
作品は現代から始まるのだが、一気に1944年にジャンプ。このプロットの構成がなかなか興味深い。そして扱っている問題は、今の時代にも通じるものだ。民族、ジェンダー、LGBTQ等をどう乗り越えていくのか。
逢坂冬馬のデビュー作「同志少女よ、敵を撃て」は、ページを繰る手ももどかしいほど衝撃的な作品であった。その冬馬の作品ということで手に取ってみた。やはり、一気に読んでしまった。おかげで翌日は寝不足~~
「歌われなかった海賊へ、歌わなかった住人より」