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空想科学ロケット旅行

Let's Go Swanky Street, Singing The Kids Are Alright!

大塚英志「冬の教室」

2008-01-27 22:28:39 | Reading
内容(「BOOK」データベースより)
降りしきる雪、音の消えた世界。ぼくたちの教室から見えるのは、ただ白―どこまでも続く白色のつらなりだった。新たな氷河期によって、世界が冬に閉じこめられた時代。そこに彼女はいた。嶝崎人魚、ぼくのクラスメート。彼女は言った、「夏が見たい」と。すこしずつ過去を語りはじめた人魚、その左胸には文字のような傷が痛々しく残っていた。それはかつて彼女を誘拐した、連続少女殺人犯・大江公彦の手による刻印だった…。死が普遍となった街で、ささやきのように語られる、冷たく静かな物語。


★★★☆☆


【ちょっとだけネタばれ】


冬に閉じ込められてしまった街と、穏やかな死に包まれながらひっそりと暮らす人々の描写がとてもよい。ロシア文学、図書館、本を読みながら歩く人々…と、長くいつまでも続く冬をやり過ごすためのモチーフとしての本のイメージも秀逸。鶴田謙二のイラストもイメージにあっていてとてもよい。


ただストーリーの核心に触れる部分で大正時代の云々という話が出てきて急に興ざめしてしまった。この作者ならではであるのだが、それまでの透明なイメージが急に曇ってしまったような、現実との地続きになってしまったような。

それほどSFっぽいわけではないが、もっともっとそのテイストを薄くして、主人公のふたりの心の動きにフォーカスしてほしかった、というのは贅沢か。

後半のほうで徐々に明かされていく秘密に伴い、人魚のイメージが銀河鉄道999のメーテルとダブってきた。そういやメーテルもロシア風の帽子とコートだしなあ。