ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

救い出される

2019-05-27 18:21:40 | 日記
 ジェイムズ・ディッキー『救い出される』




 表紙の写真には、水面とカヌーの櫂。

 武骨なアウトドア小説を思わせる。

 でも読み始めると、中年の男たちの、子どもじみた川下りの計画。

 ちょっした冒険のようだ。

 カヌーを積んだ車で、川の上流を目指すが、川に降りる場所さえなかなか見つからない。

 おまけに車を預ける地元の男が、信用できるのかどうかもわからず、トラブルの予感もする。

 川に乗り出しても、文明の、人の、町の匂いがまとわりついて、とても自然と遊んでいるようではない。

 このちぐはぐな感じが、妙に気になる。

 そして、突然の思わぬ展開。

 緊張感の連続。

 登場人物が入れ替わったように、雰囲気ががらりと変わる。

 なんて小説だろう。


 表紙の写真の背景には、森林のイラスト。

 よく見ると、いくつもの目が描かれている。

 後半、誰かに見られているかもしれないという疑念はずっとあって、その落ち着かない感じを思い出す。

 カバーイラストは柳智之氏。(2017)


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引き潮

2019-05-20 18:28:10 | 日記
ロバート・ルイス・スティーヴンスン&ロイド・オズボーン『引き潮』




 スティーヴンスンと聞けば『宝島』かな? と気づくが、フルネームだとわからない。

 その義理の息子ロイド・オズボーンは、もっと知らない。

 そんな2人の合作があっただなんて、知らないことだらけ。


 カバーのイラストは、少年向け冒険小説の雰囲気。

 クラシカルな感じをまといつつ、どことなく新しいセンスも見える。


 気楽に読むつもりで本を開いたが、この小説は思っていた以上に奥深かった。

 南の島で、ホームレスにまで落ちぶれてしまったイギリス人の男3人。

 ふとしたことから船を盗み、その積荷を売りさばいて一儲けしようと企む。

 しかし航海中、食料が尽き、海図にない島にたどり着く。そこは楽園か、それとも……。

 大雑把に冒険小説っぽく書くとこんな感じだ。

 男たちが食い詰めた原因はさまざまだが、1人は優秀な大学を出た、酒も飲まない真面目な男。

 にもかかわらず、仕事ぶりが悪く堕落していく。

 不器用で世渡りが下手なだけなのだ。

 彼の正義感が、ちょっと異常なほかの2人を、正常な視点で見続ける。

 あとあと、そのことが命運を分ける。

 期待していたものとは違う緊張感。

 全然OK、面白い。

 もう一度『宝島』を読んでみようか。


 装丁は山田英春氏、挿画は影山徹氏。(2019)


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失われた時を求めて 全一冊

2019-05-15 19:13:58 | 日記
マルセル・プルースト『失われた時を求めて 全一冊』





 たった500ページほどにまとめられた『失われた時を求めて』。

 刻まれ、つないだ印象は否めないものの、楽しく読むことはできた。

 オリジナルの長さで読んだことがないので比較はできないが、この本は、手に取った人を歓迎しているような印象を与える。

 短くなっているとはいえ、500ページは長い。

 ほかの本だったら満腹になっているはずなのに、なぜかもっと欲しくなる。

 本来の文章から何が削がれ、雰囲気がどう変化したのか知りたくなる。


 本の姿がいい。

 表紙の、選ばれた色、書体、線、アイコン、すべてが素敵。

 とくに背がよくて、この新潮モダン・クラシックスを何冊も書棚に並べておきたくなる。(2017)





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地理が解き明かす地球の風景

2019-05-13 18:34:24 | 日記
松本穂高『地理が解き明かす地球の風景』





 制作の手伝いをした本が出来上がり、見本をいただいた。


 知ると驚き、慣れ親しんだ街の風景が、まったく違った新しいものに見えてくる。

 地理とは、そんな発見の楽しさに満ちた世界。

 想像できないほど長い地球の歴史、そこに立ち会っている感覚を教えてもくれる。
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最後の読書

2019-05-06 16:48:38 | 日記
津野海太郎『最後の読書』





 どうして本を読むのだろう。いつまで読み続けられるのだろう。

 その答えが得られるわけではないが、ヒントを与えてもらった気分。

 80歳の著者が読んできた本の話。

 単なる読書記録とは違う。

 たとえば、鶴見俊輔が自分のもうろくを記録した『もうろく帖』から始まる話は、年を取ってからの「学ぶ」を手がかりに、幸田文、堀江敏幸、串田孫一の引用へと続いていく。

 本をより深く読むためには、そのための読書の蓄積が必要だ。

 さらに、年齢を重ねることで、経験の豊かさから生まれる感覚も大事だとわかる。

 装丁は平野甲賀氏。(2019)
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