ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

ハリー・オーガスト、15回目の人生

2018-09-30 18:36:04 | 日記
クレア・ノース『ハリー・オーガスト、15回目の人生』





 振り返ってみると、ずっとカバーに描かれたイラストの世界観に支配されたまま、この本を読んできたような気がする。
 それほど、小説の世界とイラストは、ぼくの中でぴったり重なっていた。

 理由もわからず繰り返される人生。
 どんな最期を迎えようとも、決まって同じ赤ん坊として生まれてくる。
 前世の記憶をしっかり持ったまま。
 そうやって800年も生き続けることの疲労感、絶望感。
 世界の終わりが早まっているというメッセージを受け取り、その元凶を探し、対決する長い物語。

 カバーの、遠くを見つめる男の表情が、いつまでも忘れられない。
 彼の人生は、本を閉じた後もまだまだ続くのだと。

 装丁は國枝達也氏、イラストは高橋将貴氏。(2017)


 現在は違う装丁になっている。(2018)
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現代短篇の名手たち

2018-09-29 20:40:02 | 日記
『現代短篇の名手たち』

 ミステリーの全集『現代短篇の名手たち』(ハヤカワ文庫)は、最後の8冊目が出たのが3年前。そろそろ次の本が出るのか、それとも、もう出ないのか。

 馴染みのある作家でないと、短篇集を手にすることは少ない。知らない作家の場合、手始めに長篇の方を読んでみようと思うことが多い。

 このシリーズも、最初に手にした本が、好きな作家のジョー・R・ランズデール。その次が、やはり好きなドナルド・E・ウェストレイク。

 たまたま、シリーズの3冊目と4冊目で、たまたま横に並べてみたら。

 つながる!

 そういうわけで、続く5冊目の、まだ知らない作家マイクル・Z・リューインが気になって、読んでみたら面白い。

 表紙デザインの、ちょっとした仕掛けが購買を誘うこともあるのだ。

 デザインは石川絢士氏。 (2013)





 その後、このシリーズの本は、いまだ出ていない。(2018)
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ミルクから逃げろ!

2018-09-28 22:04:19 | 日記
マーティン・ミラー『ミルクから逃げろ!』




 附録は、楽しい。

 『ミルクから逃げろ!』には、表紙で使っている牛乳瓶のイラストと同じ形の、小さな栞がついている。

 栞だから、附録とはいえず、おまけと呼ぶのもそぐわない。

 でも。

 本から離して、机の上にぽつりと置いてみる。

 なんだ、これは。

 遠くから見ても目を惹くシンプルなデザイン。
 これは立派な附録ではないか。

 本そのものの作りは、新書よりひとまわり大きく、嵩のある紙で25ミリほどの厚さにしてある。手に取ったときの雰囲気がいい。

 ストーリーは、意外にもすっきりまとまっていて、もっと奇抜な話かと身構えたところをスルリとかわす。

 装丁がスラリとしているのは、このためか。

 装丁は内藤裕之氏。(2013)


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日本沈没

2018-09-27 22:29:15 | 日記
小松左京『日本沈没』




 今さら驚くのもどうかと思うが、読んでいなかったし、映画も見ていなかったのだからしかたがない。
 小松左京『日本沈没』には驚いた。

 空想だ、SFだと割り切れなくなる。
 現実とだぶってくる。
 読み進めるうちに、無力感に包まれてしまう。

 カッパ・ノベルスの復刻版の装丁には、そんな暗鬱さがない。
 この小説が最初に出版された1973年には、娯楽作品として読めるだけの空気があったのだろうと想像する。

 それにしても、グラフィックのきれいな本だ。

 デザインは伊藤憲治氏。 (2012)
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満ちみてる生

2018-09-26 19:29:05 | 日記
ジョン・ファンテ『満ちみてる生』




 書店の棚で、背を見せている本を手に取り、表紙を眺めた。
 モノクロの写真一枚。
 すり減った石畳の路地、石造りの家。
 壁の一部をはがして、地面からパイプが家の中に引きこまれている。
 それを子どもが一人、見ている。半ズボンにサンダル。
 ドアの前、一段高くなった石の上に座って。
 顔が奥を向いているので、表情はわからない。

 場所はどこだろう。ヨーロッパだろうか。

 著者略歴を読む。
 そうだ、ジョン・ファンテ、『塵に訊け!』の著者だ。
 すっかり名前を忘れていた上に、表紙の雰囲気が、前回読んだときの印象と結びつかなかった。
 30年も前に亡くなっている作家なので、新しく翻訳が出るとも思っていなかった。
 奥付を見ると、まだ出版されて間もない。
 さらに略歴を読むと、最近ほかにも2冊、彼の本が出ているのがわかった。うっかりしていた。
 
 滑稽な、父との関係。
 臨月の妻も含めた、ドタバタしたやりとり。
 いつも、ひとりだけ悪者のように見られる歯痒さ。
 やがて子どもが産まれ、すべてを許し合えるような、寛大さに満ちたひととき。
 なんだかんだあっても、読後、幸福感に包まれる。

 表4にも写真が入っている。

 アメリカに住むイタリア系移民の話なので、きっとイタリアなのだろう。
 建物と建物の間にロープを渡し、通りの真ん中で洗濯物を干している。
 階段状の路地には、真ん中あたりから奥に向かって、人の姿が大勢見える。
 表紙の男の子は、きっとこの中のどこかにいる。

 写真はみやこうせい氏。(2017)


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