ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

ブレイクの隣人

2019-07-29 18:10:08 | 日記
トレイシー・シュヴァリエ『ブレイクの隣人』




 表紙から背にかけて絵が広がっている。

 その上で白く抜かれた日本語のタイトル文字が、最初は少しつかみにくい。

 縦に組まれ、表紙の左右両脇に分かれて「ブレイクの」と「隣人」が入っているのだが、絵の一部のように感じられる。

 そのタイトル文字に挟まれて、中央に横組みでオリジナルのタイトル「BURNING BRIGHT」と著者・翻訳者名が入っている。

 ちょうど緞帳の絵の上にのった著者・翻訳者名が、一番先に目に飛び込んでくる。

 よく見ると、サーカスの絵だ。

 クレジットから、作中登場する実在したサーカス団だとわかる。

 1800年代に描かれた古い絵。

 カバーを広げてみると、折り返した袖にまで、観客席の絵が続いている。

 そうしてやがて、一番大きいタイトル文字の存在に気づく。

 
 1792年から1793年にかけてのロンドン。

 田舎から引っ越してきた椅子職人の家族と、関わる人たちの物語。

 猥雑な匂いがプンプン漂ってくる街で、いい人、嫌な奴、様々な人の生き様が描かれている。

 はじめは変人に見えたウィリアム・ブレイクが、少年と少女を優しく導いて彼らの成長を助ける。

 彼の詩が、この時代に密着している。


 大胆で繊細な物語は、丁寧に作り込まれた表紙や、その他の部分の細やかさと同調している。

 装丁は柳川貴代氏。(2019)




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宝島

2019-07-22 18:14:32 | 日記
ロバート・L・スティーヴンソン『宝島』




 スティーヴンソンの『宝島』を久しぶりに読もうと思った。

 書店で探すと、新潮文庫、光文社古典新訳文庫、岩波文庫などから出ている。

 冒頭を読むと、翻訳の微妙な違いがわかる。

 しかし、決め手となったのは、カバーの良さ。

 冒険心を刺激された新潮文庫を購入した。


 波しぶきを上げて進む帆船と、古いコンパスのイラスト。

 ほぼ中央に赤い帯が引かれ、英語のタイトルが白抜きで入っている。

 子どもが好きな、昔々の冒険譚の世界。


 主な語り手は少年(のちに大人になり、少年時代を振り返っている)なので、大人に降りかかる災難が、頭の上を通り過ぎていくこともある。

 それゆえ、物語の中をすいすいと進んでいくようだ。

 
 海賊が埋めた宝を探しにいく物語。

 途中から、反乱を起こした乗組員たちとの戦いが話の中心になっていく。

 そのボスである元海賊、一本足の船乗りは、ときに好感を抱いてしまうほど人心掌握に優れた人物。

 しかし、抜け目なく、不意に残虐な面を見せたりと、複雑な面白さを持っている。

 この小説、子どもだけに読ませておいてはもったいない。(2019)


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ラヴェル

2019-07-11 18:33:37 | 日記
ジャン・エシュノーズ『ラヴェル』




 作曲家ラヴェルをモデルにした、ノンフィクションのような小説。

 事実を基に、丁寧に晩年の姿を描いている。

 帯に『まるで音楽みたいな小説』とあるが、残念なことに音感の良くないぼくには、音の調べは聞こえてこない。

 でも、ラヴェルの姿、場面の情景は、驚くほど鮮明に現れる。

 それは、文の多くが現在形で書かれているからだろう。

 

 『彼は階段を駆け上がる。……見えない。……しようとする。……止まっているだけだ。……包んでいる。』



 最新のVRを使ったように、ラヴェルとの距離が近い。


 有名人であり、いつも周りに人がいるのに、どうしてか寂しさがまとわりついている。

 実際にこんな雰囲気の人だったのか、それとも作者が意図して作り上げたのか。


 カバーの素っ気なさは、とても地味な物語をイメージさせる。

 薄い本なのに、難しい曲が掲載された楽譜のようで開くのをためらう。

 でも読んでみると、わりと簡単で、思いのほか深みがあって、繰り返して読みたくなる。

 曲の練習をするかのように、少しずつ理解を深めていけるのだ。(2019)



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ブコウスキーの酔いどれ紀行

2019-07-05 18:30:42 | 日記
チャールズ・ブコウスキー『ブコウスキーの酔いどれ紀行』




 ちくま文庫のブコウスキー、3冊の中の1冊。

 このカバーにも、サヌキナオヤ氏のイラストが入っている。

 でも、3冊ともデザインがちょっと違う。

 イラストの周囲に配置されたタイトル、著者名の位置が異なっている。

 些細なことだが、これが統一された単調さを免れていて、ブコウスキーの反骨心を表しているかのようでもある。


 フランス、ドイツの紀行文。

 朗読会に呼ばれ、テレビ出演をする。ドイツでは、自分の生まれた家を訪れ、叔父と再会する。

 同行したカメラマンのモノクロ写真が多数入っていて、書かれた文章が本当だとわかる。

 ここには、おそらく素のブコウスキーがいる。

 創作に登場するブコウスキーの分身と、かなり似ていて、いつも飲んだくれている。

 嫌いな人間とは喧嘩をする。しかし、好きな人に対しては、「大好き」と言えてしまう素直さがある。

 小説の中で垣間見えていた繊細さが、ここでも時折顔を出す。

 恐い顔をしたブコウスキーを、少し好きになる。


 デザインは加藤賢策氏。(2019)


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