ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

すばらしい新世界

2018-12-30 18:17:20 | 日記
オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』





 書店の棚から文庫本を抜き、表紙を見て驚いた。

 真っ白な背景に、縦書きの文字だけが並んでいる。

 BRAVE NEW WORLD
 ALDOUS HUXLEY
 オルダル・ハクスリー(やや大きく)
 すばらしい新世界(一番大きく)
 [新訳版]
 大森望訳
 早川書房

 と、頭揃えで、左右いっぱいに行間を広げて配置されている。

 必要な文字が、これ以上なくシンプルに置かれているだけだが、しっかりと中央のタイトルが一番先に目に飛び込んでくる。

 これはすごい。

 デザインも、この案が採用されたことも。


 SF好きなら、読んでおくべき小説かもしれないが、ぼくはSFにそれほど執着がないので気に留めず生きてきた。

 それが何の偶然か手に取ってしまったのだから、読んだ方がいいだろう。


 これはすごい。

 体裁はSFだが、未来的なしかけはあまり気にならない。

 この小説は、人が生きていくなかで、どうしようもなく感じてしまう孤独について語っている。

 孤独を解消するために、人類がみな均等になってしまえばいいという発想。

 一人の独裁者のエゴを実現するディストピアとは違い、みなが平和で楽しく生きるための方策のひとつとしての未来を描いているのだ。

 デザインは水戸部功氏。(2017)
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ロバート・B・パーカー読本

2018-12-28 17:54:35 | 日記
ロバート・B・パーカー『ロバート・B・パーカー読本』





 ロバート・B・パーカーの文庫本を、100円で売っている古本屋が近所にあった。

 探偵スペンサーに惹かれ、熱心に買って読んでいたけど、あらかた読んでしまうと飽きて、友人にあげるなどして散逸。

 いま手元にあるのは、ガイドブックの『ロバート・B・パーカー読本』だけ。

 この本には短編がひとつ収録されている。

 読んでみると。

 そう、こんな感じ。

 スペンサーものをぎゅっと凝縮したような短編。

 目新しさはないけれど、使い馴れたラケットを手にしたときのような感覚。(テニスも卓球もやらないけれど)


 ロバート・B・パーカーが亡くなって何年か経つ。

 辰巳四郎氏のカバーデザインは、いまでは誰も真似のできないヴィンテージ感が漂い、手放してしまった本を残念に思う。(2015)


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蔵書一代

2018-12-26 21:51:06 | 日記
紀田順一郎『蔵書一代』


 昭和の初期に造られたと思われる、木製の書棚を所有している。

 古道具屋で購入したもので、棚を固定するための楔がアクセントになっていて、壁際にポツンとあるだけで、部屋の印象が引き締まる。

 この本棚が最初に置かれた場所は、きっと和室の畳の上だろう。

 腰高の小さなものなので、四畳半かもしれない。隣には文机が似合う。

 4段すべてに本を詰めても、100冊程度しか収納できない。

 たった100冊。

 けれども、厳選されたわずかな本だけを身の回りに置く生活は、とても豊かで確かなもののように思える。



 紀田順一郎氏は、年齢からくる状況の変化で、3万冊の本を処分したという。



 ぼくにとって、本当に必要な本はどれだろう。

 『蔵書一代』のカバーに描かれた本の絵は、端からぱらぱらと崩れ落ちている。

 地味な色合いは、古くなった本のようだ。

 やがて、本はこうして消えていくのだと、暗示しているのか。

 カバーを取って表紙を見ると、格子状の太い線が目眩を起こさせる。

 本の行く末を考えクラクラする。


 装丁は安藤紫野氏。(2018)
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あるノルウェーの大工の日記

2018-12-24 19:50:06 | 日記
オーレ・トシュテンセン『あるノルウェーの大工の日記』





 海外文学のコーナー、面出しされた、少しだけ小さな本。

 やや薄く色のついたカバー。幅広の白い帯。

 日本語のタイトル文字、ハンドドリルと物差しのイラスト、そしてノルウェー語のタイトルすべてが濃いブルー。

 太くないゴシックで組まれた日本語の、文字と文字の空きが絶妙。

 カバーの紙の、ざわっとした質感の良さ。

 帯を外してみる。

 表紙の一番上にあるノルウェー語のタイトルと、同一円周上で、一番下にノルウェー語での著者名を配置してあるのがわかる。

 そして、真ん中に二人用ノコギリのイラスト。

 センスのいい、大人なデザイン。

 ほかに工具のイラストはないのか探してみると、カバーの表4に折尺、カバーを外すとかなづちが出てきた。


 丁寧に書かれたベテラン大工の仕事の話は、ときに専門的なのに図解がなくて要領を得ない。

 でも、語り口がよく楽しいから、いいよ、先を続けてという気分になる。

 ずっと持っていたい本。

 デザインは水戸部功氏。(2017)









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こないだ

2018-12-22 23:02:49 | 日記
山田稔『こないだ』





 この本にはカバーがない。

 布張りの表紙と帯だけ。

 表紙の一部を四角くへこませ、タイトルと著者名を印刷した紙を貼っている。帯と同じ薄い紙だ。

 緑色の表紙と、ベージュの紙、刷り色は落ち着いた赤。

 上品な和の趣。

 本を開くと、見返しにも帯と同じ紙が使われている。さらに上品。


 山田稔のエッセイ。

 文中に出てくる作家の多くを、ぼくは知らない。

 自分の教養のなさを思い知るとともに、絶版になってしまった作家の本に興味がわく。

 山田稔の友人なのだから間違いない。


 どうして山田稔の本を読むのだろう。

 好きだから、面白いから、上手だから。

 でもそれだけではない。しかしうまく説明ができない。

 よくわからないから、また読む。

 88歳の作家の本、いつまでもよみ続けられますように。


 装丁は森本良成氏。(2018)
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