烏鷺鳩(うろく)

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東京ミネラルショー 2018 (2018年12月14日~17日)〈2〉

2018-12-18 | 鉱物
東京ミネラルショーの見所の一つに、鉱物や化石の展示がある。毎年第2会場にて、著名なコレクターの素晴らしい標本を展示したり、古生物の化石を展示したりと、これまた楽しみな企画なのである。去年は「カンブリア・モンスター」でおなじみのチェンジャンの化石が展示されていた。
今年は「ワイン産地にジオパーク ボジョレー地区のアンモナイト」と、「ローマ時代の金属鉱山 コソボ共和国 TREPCA MINE」の2大展示である。



ボジョレー・ヌーヴォーで有名なボジョレー地区ではアンモナイトの素晴らしい化石がたくさん見つかるのだそうだ。なぜボジョレー地区がユネスコ世界ジオパークに認定されたのかパンフレットに説明されていたのでご紹介しよう。

この地域に見られる変成岩と火成岩から成る結晶質の基盤岩からは、ヘルシニア造山帯が形成された過程の歴史を、ほぼ全て見てとることができます。ヘルシニア造山帯は、ゴンドワナ超大陸とユーラメリカ超大陸が衝突した後、古生代末期(3億5,000万年から2億9,000万年前)に形成された山脈です。この時期の地質は、高い山々の奥底で起こった地質学的変化の過程を、驚くほど明らかに示しており、ゆえに世界の地質学史においても非常に重要視されています。



ボジョレーの地質における二次堆積物は、約8,000万年に及ぶものとみられています。その岩質と構造はバラエティに富み、これは多種多様な堆積環境が特徴である縁海の地質の歴史と無関係ではありません。

古代三紀(4,500万年から2,500万年前)および新第三紀(1,000万年から500万年前)の間の地体構造運動により、ピレネー山脈とアルプス山脈が形成された際に、基盤岩とその上の堆積層が大規模に崩壊しました。結果、西ボジョレー地域は隆起し、東ボジョレー地域に崩れ落ちた堆積物が流れ込み、東地域の多様性に富む地層を形成したのです。

そして、ボジョレー山脈とジュラ山脈の間にできた大きな窪地からは、古第三紀末期と第四紀(約300万年~)において大規模なアルプス山脈周辺の化繊網が発展し、氷解した山の水がそこに流れ込むと、徐々にソーヌ河一帯の沖積層地帯が形成されました。

多種多様な地質に恵まれたボジョレー地域は、数多くの科学研究の対象となっており、また地質学の基礎研究や応用研究におけるあらゆる主要なテーマとして取り上げられています。


私は、ボジョレー・ヌーヴォーのお祭り騒ぎを「ちょっとなあ」などと思っていたのだが、この展示で、「アンモナイトの埋まる地域で産出したワインなんて素敵じゃないか」と、ほぼ180度見方が変わってしまったのは言うまでもない。かっこつけて、「まだ若いワインをこぞって飲むなんてどうなのよ」なんて言っていたのが、こうも手のひらを返すとは我ながらあきれるばかりである。人間なんて、そんな風に案外簡単なのかもしれない。


一方、「トレプカ鉱山」の長い歴史は興味深く、日本の神岡鉱山にその特徴が似ているというのもなかなか面白い展示であった。この標本は販売もしていたため、写真は控えてしまったのだけど、結構バシャバシャ撮ってる方々がいたから、気に入った標本を写真に撮っておけば良かったと若干後悔している。


展示を見終わり、今回広げられた左手奥の会場へと向かう。
日本産の鉱物を売っているお店で、「かぐや姫水晶」を発見した。大変かわいらしく、美しい形の標本である。
これはアメシストなのだが、球状の母岩を割ると、まるでかぐや姫が生まれたかのように薄紫色の水晶が顔を出すのである。福島県会津地方で産出する。まさか、ここでめぐりあうとは思いもよらず、嬉しい発見であった。


さて、一通り第2会場を堪能した後、再び第1会場へ。
ふらっと立ち寄った化石のお店で「デンドライト」の美しい標本が並んでいた! 始祖鳥が発見された事で有名な化石産地「ゾルンホーフェン」で採れる石である。



まるで風景画のような、繊細な景色が見える。これは、植物の化石とよく間違えられるのだが、マンガンなどが鉱物の隙間に染みこむことで生まれる模様なのだ。


たくさんのブースが並んでいるので、ただ見ているだけでも楽しい。
くんくんと鼻をきかせてお店の奥の方へと入っていくと、



写真左下の極小三葉虫を発見!! ルーペで見てみると、数字の「8」の形と、その体の凹凸までがはっきりと見て取れる。カンブリア紀中期の三葉虫である。すこしきらりと光るのはパイライトであろうか。


“Braun Lapidary”はアメリカ・ユタ州から家族でいらっしゃっている。おじいちゃんとお父さんと、2人の兄弟、お母さんらしき人がいらっしゃっていた。
このお店、去年も面白い石がたくさん見つかったので、楽しみにしていたのだ。以前このブログでもご紹介した「ピカソ・マーブル」がその一つである。今年もたくさんの石や化石を取りそろえてらっしゃる。

お兄さんと思わしき青年に、とあるルース・ケースを見せてもらう。これを目にした瞬間、吸い込まれてしまった。
「恐竜の骨のルース(裸石)」である。
茶色や、緑、鮮やかな赤や、淡い青まで、色とりどりのカボションがぎっしりつまった箱だった。
青年が慎重に箱の蓋を留めていたピンをはずす。そしてそっと手渡してくれた。
恐竜の化石なのだが、瑪瑙化して大変美しい様相を呈しているのである。
じっと見つめていた。
ただ、やはりこれだけ美しいカボションは値段が張る。お父さんとおじいさんにお詫びして、一旦箱をお返しする。
「気にせずまた見に来て。今度来るときはいっぱい買ってね」
と、おだやかな笑顔でジョークを言ってくれた。
「多分私、また戻ってきます」
といって、一旦ブースを離れた。

第1会場をぐるぐる周りながらも、やっぱりあの「恐竜の骨のルース」が忘れられない。半周してから、やっぱりBraun Lapidaryへと戻ってきた。
「やっぱり戻って来ちゃった」
というと、優しい笑顔でルースケースを手渡してくれた。
お父さんが説明をしてくれる。
「恐竜の骨は、コレクションに規制がかけられてるんだ。これはおそらく1960年代に発掘された物で、私の友人が磨いた物なんだ。10年位前に亡くなったのだけど」
これほど美しい物はもう市場に出回ることはないから、どんどん値段も上がっていくのだとも教えてくれた。
たくさんのルースを慎重に手に取りながら、じっくりと選んだ。
深い赤と色々な色がまじっている、楕円形のルースに決めた。おじいさんが、
「いいのを選んだね」
と言ってくれた。
「わたし、アクセサリーを作るので、これで素敵なのを作ります!」
と言うと、
「きっと『カンバセーション・ピース』になるよ!絶対『これ、何の石?』から始まって盛り上がるから」
と、お父さんが言ってくれた。貴重な品を分けてもらって、なんだかとっても嬉しかった。


楽しみの一つだった「ジオード・クラッキング」は、今年もタイミングが悪くて参加できず。その代わりと言ってはなんだが、ちょっと大きめ、ずっしりとした石に惹かれる。
「ボルダーオパール」の原石だ。母岩の縞模様と、オパール部分の爽やかな色合いがとっても興味深い。


最後に一つ、と買い求めたのは、「サンダーベイ・アメシスト」。カナダで採れるアメシストだが、先の方が赤い。「レッド・キャップ・アメシスト」と呼ばれたりもするらしい。さらには「オーラライト23」というパワーストーン系の名前も付いている。23の鉱物を含む、神秘の石だということだ。


今回も、たっぷり6時間ほど歩き回って、色々な石を見た!
気がつくと足が棒である。
こちらが、「東京ミネラルショー2018」の漁獲である。



ディスプレイ用品もちょこっと買えて、大満足の収穫であった。
ミネラルショーでは、たくさんの国からも業者さんがやってくるので、国内では見ることない珍しい石も見かけることができた。なにより、お店の方とのお話が楽しかった。話しかけてみると、意外な物語が返ってきたりして。そうしたお話も石を見る度思い出すことだろう。


というわけで、「鉱物好きの年の締めくくり」、とも言うべき一大フェスティバルは終了した。また来年、皆さんにお会いできるといいな、と思うのだ。

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